コラム

プレミアムエブリデイ 小田明志コラム#5

大人になったら放課後のスタートも自分で決めなきゃいけない。

問題は、仕事と生活のバランスなのではなくて、ひとりひとりに理想の働き方のイメージがないというところにあるのだろう。就業者のうち89% が企業に雇用されているサラリーマンである日本では、朝から夜まで働いてお給料をもらうという形が唯一まっとうな働き方のように錯覚しがちだが、本来働き方というのは自由で、その自由と責任のバランスこそ大人の楽しみであり、特権だ。働く会社は1社に決めなくてもいいし、会社で働きながら違う仕事をしたっていいのだ。

もちろん、楽しめない仕事でも、そこそこ働いてそこそこ遊べるならOKという考え方もいいと思うけれど、どの程度のつまらなさなら我慢できるのか、そこそこの仕事とは何円もらえるものなのか、というイメージを具体的に持っている人は少ないし、イメージがないからこそ、つまらない仕事に「そこそこ」の範疇を超えて取り組んで、消耗してしまう。学校だったら、1時間目から6時間目まで我慢して座っておけば放課後が自然と来たけれど、大人になったら放課後のスタートも自分で決めなきゃいけない。終電をチャイム代わりに使っているようでは、小学生となんら変わりがないのだ。

僕は、せっかく大人になったのだから、授業なんて出ないで、本気で遊べる放課後みたいな毎日を過ごしたいと思う。そのためには、やっぱり好きなことを仕事にするか、自分の仕事を好きになるしかないけれど、それは1時間目から6時間目まで我慢して座り続けることより、ずっと大変なことなのかもしれない。


 

おだ・あかし 1991年生まれ、25歳。東京都出身。編集者。高校在学中、17歳の時にカルチャー雑誌『LIKTEN』を創刊。一躍話題を集める。2016年11月には、発行人兼編集長を務める、サッカー選手のでないサッカーマガジン、『OFF THE BALL 02』を発表。Illustration/小田明志

 

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