コラム

「ご教授」「ご教示」どっちが正しい?語彙力クイズ5つ

日本語には似た表現が多くあります。

「なおざり」(=すべきことに取り組まない)と「おざなり」(=その場しのぎの対処をする)のどちらが合っているのか、悩んだ経験がある人も多いのでは。

今回は二択形式で、ふさわしい表現を選ぶ問題を用意しました。クイズで語彙力をアップ!

 

(1)「ご教授」「ご教示」どちらが正解?

A:何時頃うかがえば良いか、ご教授ください。

B:何時頃うかがえば良いか、ご教示ください。

 

教授は、大学教授という言葉があるように、専門的な知識を授業などの形式で教え授けること。

単に情報を提示したり、質問に答えたりするぐらいで、「ご教授」を用いるのは大げさです。 そういう簡単なシチュエーションで用いるのは、「ご教示」や「お知らせ」でしょう。

「お示しいただき」のような動詞でも構いません。

 

正解:B(「教授」は、授業のようなイメージ。簡単な情報伝達なら「教示」)

(2)「生き方」「生き様」どちらが正解?

A:先輩の生き方に憧れます。

B:先輩の生き様に憧れます。

 

「生き様」は基本的には、「死に様」の連想から言われるようになった言葉だと見られます。

また、「様(ざま)を見ろ」「ざまぁ見やがれ」の「様(ざま)」を連想する人もいます。

そうしたネガティブなイメージの伴う語なので、目上の人に対して「生き様」と表現するのは避けたほうが無難です。

「みっともない生き様をさらしていますが」などと、自分の人生を評して言う分には問題ありません。

 

正解:A(「生き様」は、見下した、ネガティブな言い方であると感じる人も)

(3)「世間ずれ」の意味、どちらが正解?

A:テレビにもネットにも触れない彼は、すっかり世間ずれしている。

B:若い頃から芸能界でもまれてきた彼は、世間ずれした手強い奴だ。

 

「世間ずれ」の「ずれ」は、世間の人の感覚からはずれてしまっていることではありません。

「擦(す)れる」から来ています。「すれっからし」(=ひどい目に遭った結果、ずる賢い性格になった人)や「あばずれ」と同じ語源です。

世間に擦れる、つまり、社会の裏事情や人間の醜い部分などにさんざん触れて、慣れてしまうこと、また、そうした中で世渡りの知恵を身に付けて、悪賢くなる様子を意味します。

 

正解:B(「世間ずれ」は、世間からズレているのではなく、世間に擦れている)

(4)目上の人には、どちらが正解?

A:今日はお礼の席なので、私に持たせてください。

B:今日はお礼の席なので、私に奢らせてください。

 

「奢る」はもともと、人よりも良い状態にあることを得意気に思う、自慢する、という動詞です。

同じ「おごる」に「驕る」という漢字変換もあります。ですから、「奢る」は、調子に乗っているという否定的な意味合いを根幹に持つ言葉なのです。

お金があることを自慢するかのように他人に飲食物を提供する、というニュアンスから、今の「奢る」という用法も生まれています。

自分が目上にご馳走する際には、使わない方が安心です。

 

正解:A(「奢る」は、調子に乗った印象を与えかねない)

(5)「役不足」の意味、どちらが正解?

A:あれだけの実力者にそのポストは役不足では。

B:会長など、私には役不足で恐れ多くて、お受けするわけには……。

 

舞台や映画では、演技力や役柄のイメージに合うかどうかで配役が決まるのが一般的ですが、俳優・女優としての格が決定要因になることもあります。

例えば、チョイ役に、大御所中の大御所をキャスティングするのはためらわれますね。

こうした状況が「役不足」。その人の技量や器に対し、与えられている役が軽すぎるという意味です。

謙遜の意味だと誤解して使っている人がいますが、むしろ、傲慢な発言になってしまうのです。謙遜するなら、「私は力不足で……」でしょう。

 

正解:A(「役不足」とは、人に対して役「が」不足だという意味)

 

あえて凝った表現を使ったのに、間違っていたら赤っ恥です。言葉を使うときは正確に!

 

文/吉田裕子 
国語講師。塾やカルチャースクールなどで講師を務めるほか、『テストの花道 ニューベンゼミ』(NHK Eテレ)に国語の専門家として出演するなど、メディアでも活躍中。東京大学教養学部卒。

画像/shutterstock(metamorworks、naka-stockphoto) 参考文献/吉田裕子著『大人の常識として身に付けておきたい 語彙力上達BOOK』(総合法令出版)

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