コラム

「ご利用してください」は実は誤り!? やりがちな間違い敬語5つ

「敬語がおかしいと注意をされた」「尊敬語・謙譲語・丁寧語などの違いがよく分からない」という人はいませんか?

実は、敬語を間違うポイントはだいたい決まっています。尊敬語と謙譲語の混同、敬語の重ね過ぎなど、よくある誤りの例をクイズ形式で学びましょう。

以下に挙げる例文はそれぞれ、誤りがあります。どこが間違っていて、どう直したらいいか、指摘してみてください。

 

(1)どうぞご自由にいただいてください

正解:どうぞご自由に召し上がってください

相手や目上の人など、敬うべき人物の動作には「尊敬語」を使います。

「食べる」であれば、尊敬語は「召し上がる」「お食べになる」のはずです。それを謙譲語「いただく」にしているところが誤りです。

自分がご飯を食べるときに「いただきます」と挨拶しますよね? 謙譲語は、自分や自分の家族など、身内側の動作に使うものなので、頭に入れておきましょう。

(2)順番に拝見していただけますか

正解:順番にご覧いただけますか(ご覧になっていただけますか)

「拝見する」も「見る」の謙譲語であり、自分が何かを見るときに使う言葉です。

目上の相手を主語にする場合は尊敬語の「ご覧になる」を使いましょう。

なお、「拝見されてください」のように言う人もいますが、たとえ尊敬語の助動詞「~れる」を付けたとしても、相手の動作に「拝見する」を使うのは誤りです。

(3)ご利用してください

正解:ご利用になってください

「いただく」「拝見する」のような特別な敬語動詞がない場合、「お(ご)〜する(いたす)」という形で謙譲語に直します。「お渡しする」を「お渡しいたします」のように直すわけです。

今回の「ご利用してください」は「ご利用する」という謙譲語の形になっています。

この例文は尊敬語を使うべき文脈ですので、「ご利用になってください」「ご利用ください」のように改めなくてはなりません。

(4)弊社の山田部長がそうおっしゃっております

正解:弊社の山田がそう申しております

組織外の人と話すときには、社長であろうが何であろうが、自社の人間を敬ってはいけません。「おっしゃる」のような尊敬語を用いずに、自分の動作同様、謙譲語を用いて表現します。

呼び方にも注意しましょう。「山田部長」「山田さん」の「部長」「さん」は敬称です。それらは付けずに、「山田」と呼び捨てすべきです。もし役職を説明する必要があるときには、「部長の山田がそう申しております」という順序にすればOKです。

(5)お話になられましたか?

正解:お話しになりましたか?(話されましたか?)

尊敬語を重ねることを二重敬語といいます。身分社会ではない現代では、原則として二重敬語は用いません。

上の例文の「お話しになられる」では、「お~になる」「~れる」と、尊敬語の表現が二つ重なっていますので、過剰な敬語です。「お話しになる」「話される」のどちらか一つにしぼる必要があります。

会話では丁重に話そうとするあまり、つい二重敬語になってしまう場面もあるかと思います。しかし、書き言葉や前もって原稿を用意できる場面では、二重敬語の間違いをおかさないようにしたいものです。

 

誤った使い方の「どこが」「なぜ」おかしいのか、「どう」直すべきか、を自分で説明できるようになれば、もう間違わないはず。敬語を正確に身に付けて、信頼される社会人を目指しましょう。

 

文/吉田裕子 
国語講師。塾やカルチャースクールなどで講師を務める他、『テストの花道 ニューベンゼミ』(NHK Eテレ)に国語の専門家として出演するなど、メディアでも活躍中。東京大学教養学部卒。

画像/PIXTA(ピクスタ)(Fast&Slow、Mills、YUJI、xiangtao、Ushico、taka) 参考文献/吉田裕子『たった一言で印象が変わる大人の日本語100』(ちくま新書)

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