公開前から話題の映画『ひらいて』が10月22日(金)に全国ロードショー。公開に先がけ、主演を務めた山田杏奈さんに同作の魅力についてインタビューしてきました。撮影中の裏話から、普段役者として心がけているコミュニケーション方法まで、盛りだくさんでお届けします!
PROFILE
山田杏奈(やまだ あんな)●2001年生まれ、20歳。2011年に開催された「ちゃおガール☆2011オーディション」でグランプリを受賞し、芸能界入り。近年の主な出演作は映画『樹海村』(W主演)、『名も無き世界のエンドロール』、ドラマ『荒ぶる季節の乙女どもよ。』など。新進気鋭の女優として注目を集める。10月公開の主演映画『ひらいて』の他、映画『彼女が好きなものは』が12月に公開を控える。
試写で繋がったものを観て、やっと安心しました
映画『ひらいて』が間もなく公開となりますが、山田さん自身が仕上がった作品を初めて観た時の感想を教えてください。
自分が出演した作品を初めて観る時って、どの作品でも絶対に客観的に観ることができないんです。試写会場に向かうまでの道で、胃が痛くなっちゃうこともありますね。試写を観た後も、自分の中で消化するのに必死。あのシーンはもっとこうできたら良かったなとか、芝居に対する反省点がたくさん出てきて、帰り道一人ため息をつきながら帰る…なんてことがほとんどなんです。
ただ今回の『ひらいて』は繋がったものを見た時に、初めて「私の演技、愛として成立しているな」と感じられたので、観た後すごく安心しました。現場で芝居している時には愛のことが分からなくて、結構ずっと不安だったんです。でも、作品の中で自分がちゃんと愛に見えていたので、まずは一安心みたいな感じです。
自分自身が演じた愛に、不安を感じていたんですね。
本当に分からなかったんですよ、愛っていう人間が。撮影に入る約1年前に、決定稿になる前の台本をいただいたんです。初めて監督にお会いした時に「どうでしたか?」って聞かれたんですけど、私は「愛のことが全然分からないです」って言って。監督は、分からないまま演じていいとおっしゃっていました。でも本当にわからなくて、撮影現場で監督に「愛のこの発言は、愛自身もどうしてこんなことを言うのか分からないでやってますよね」ってお話をしたら、監督が自分の意見を教えてくださった上で「山田さんならどう思いますか?」ってたくさん疑問を投げかけてくれて。そのたびに私は愛について考えて、なんとか撮影を終えることができました。10代ならではのトゲトゲした感じってみんな持っているものだと思うんですけど、愛はそれを表に出す方法が人とかなり違う特殊なタイプ。演じている時は大変でしたよ。ずっと愛について悩んでいました。
時間が経って「愛、面白い!」と思えるように
愛のことが分からないと思いながらも、愛と向き合わなければならない。山田さんは役作りの上で愛をどんな女の子と捉えて、演じられていたのでしょうか。
文章として愛のキャラクターを説明するなら、学校のカーストトップで、友達もいて、今までに彼氏も何人かいた経験があって…怖いものなしのイケてる子になると思うんです。でも、愛自身は自分の居場所はここじゃない、もっともっと自分は上にいる人間だって思い込んでいるんだろうなとは思いました。愛の友達でミカちゃんっていう子がいるんですけど、ミカちゃんと話す時も別に楽しんではないし、どこにいてもスカしているというか。
ただ演じていて感じたのは、強い態度で振る舞ったりしていますけど、愛って学校っていう箱の中で実は一番自分の立ち位置を気にしている。「気にしてませんよ」って涼しい顔をしているけど、本当は周りからの目線を気にして行動しているところが、演じていく中で面白かったです。
決定稿になる前の台本をいただいてからかなりの月日が経っていると思いますが、時間が経ったことで愛に対する見方は変わりましたか?
そんなに変わってないというか、私自身の価値観から見るとそんなに変化はないです。ただ実際に自分が役に入って撮影している時と、初めて試写を観た時に、かなり愛に対する印象が変わりました。演じている時は愛のことが本当に嫌いでしたけど、試写で繋がっているものを見たら「愛、面白いな」って思えるようになって。時間が経って愛から少し離れたからこそ、客観的に見られるようになったのかもしれないです。
ちなみに撮影期間中、楽しみにしていたことはありますか?
食べるのが好きなので、お昼のケータリングが楽しみでした。本当に毎日ケータリングだったんです。温かいものを食べられるのが幸せで、すごくありがたかったです。栃木県の足利市で撮影していたので、足利市の食材を使ってます!みたいなメニューもありました。
現場でのコミュニケーションを大切にしています
山田さんが過去に出会った人の中で、自分の世界観がガラッと変わったと感じた方はいますか?
いないかな…まだ出会ってないかもしれないです。まだ20歳ですし。私自身他の人に話を聞くのがすごく好きで色々な人から話を聞くようにしているんですけど、それを鵜呑みにはしないタイプ。「そういう意見もあるんだ!」「ありがとうございます!」って伝えつつ、そこから一度自分のフィルターを通して、最終的には自分で考えるようにしています。今までの人生でも、自分で考えて自分で決めてきたなって思うことが多いので。ただ価値観とか、今まで出会った一人一人からすごく影響を受けていると思います。周りに尊敬できる方がいっぱいいるのは、とてもありがたいですね。
お芝居のお仕事をする中で、特に感銘を受けた方は?
吉田羊さんです。私が初めてドラマに出演した時の役が吉田さんの娘役だったんです。初めてご一緒させていただいた現場での、吉田さんの振る舞いがすごく素敵で。初めての現場で緊張しすぎていて、何が普通かも分からずドギマギしている私を気にかけてくださって、それがすごく支えになりました。役者さんってもちろんお芝居が素敵なことが大事なんですけど、映像からは見えない現場での振る舞いも大事だなって吉田さんに教えていただきました。とにかく優しかった記憶があって、私も吉田さんのようになりたいなと思います。
周囲の人とコミュニケーションをとる上で何か心がけていることはありますか?
撮影の現場では、自分からたくさんのスタッフさんに話しかけるようにしています。役者陣は話す機会が多いですけど、スタッフさんや技術さんとはなかなか話す機会がなかったりするので。近くにいたら「天気良いですね」みたいな話でもいいから、自分から話しかけるよう頑張ってます。あとは皆さんの名前を早めの段階で覚えるようにもしています。出会ってあまり日が経っていない人に名前で呼びかけられると、なんか嬉しくないですか? あとは、無意識かもしれないですけど、周りは結構見てます。あの人とあの人が仲良いんだなとか、ちょっと今ピリピリしているなとか(笑)。
映画『ひらいて』10月22日(金)全国ロードショー
芥川賞受賞作家・綿矢りさの同名小説を、「この映画を撮るために監督になった」という新進気鋭の若手監督・首藤凜が映画化。成績優秀で人気者の高校3年生・木村愛(山田杏奈)がひそかに思いを寄せているのは、同じクラスの西村たとえ(作間龍斗)。けれど、彼には恋人の新藤美雪(芋生悠)がいた。ふたりの揺るがない絆を知った愛は、美雪に急接近。3人の関係は、思いも寄らない方向へ走り始める…。
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撮影/望月宏樹 ヘアメーク/菅長ふみ(Lila Management) スタイリング/中井彩乃 取材/所 優里 編集/宮島彰子(JJnet編集室)