6月29日の東京ドーム公演をもって解散する女性6人組アーティスト「BiSH」。解散を目前に”WACKの副社長”ともいわれるセントチヒロ・チッチが、人生で大切にしていることを明かしてくれた。
BiSHの活動が始まったころのチッチは、いわゆる”優等生”だった。
「私自身が中学生くらいからずっと女性のアイドルが好きな”オタク”で、AKBさんの劇場や握手会にも行っていました。私が好きだったメンバーの小野恵令奈さん(2014年に引退)はキラキラしていて可愛くて、でも素直に生きてて、すごく”女の子”って感じ。だから、最初はそういう子になりたかったんです。”正統派”が好きだったし、褒められたかったんでしょうね(笑)。
好かれたいし、嫌われたくない。WACKに入った当初は、渡辺(淳之介/WACK代表)さんにも好かれたいという気持ちが強くて。だから大人から言われたとおりにやっていたし、『お客さんから求められるものに応えないと』という焦りもすごくありました。アイドルは昔から好きでなりたい存在だったので、『こうしたい、こう見られたい、こうならなきゃ』という気持ちがめちゃくちゃ強くて……頭が固かったです、とっても。
『可愛い』って言われることを当たり前にできるのがアイドルではなくて、”アイドルらしいこと”が苦手なアイドルもいます。BiSHもどちらかというと『そんなの恥ずかしいよ』という子が多くて、じゃあそういう部分は私がやります、という感じでした」
まわりの大人たちも、そんなチッチを頼りにしていた。
「大人に言われたことをちゃんとやんなきゃと思ってたのはグループで私だけだったから、『チッチがやってくれるでしょ』っていう雰囲気でした。普通は、やれと言われたことやるのが当たり前だと思っちゃうじゃないですか? でも、いま考えるとそれが間違っていたんです。
『本当はそんなことないんじゃないの?』って教えてくれたていたのは、ほかでもないBiSHのメンバーたちでした。でも私は、それに気づけていなかったんです。とはいえ、大人に言われたことをやらない選択肢が正解かもわからないですけどね(笑)。
今は、言われたことをあえて外すことがあります。昔は1つか2つしかなかった選択肢が広がって、言われたことに対しても“提案する頭”になったので、『それは例えばこうじゃないですか?』と考えるようになりました。そうやって考え続けることを止めないと、自分の中で決めています」
日々、どんなことを考えていますか?
「いまインタビューでどうしゃべらなきゃいけないかな、収録で次に話す番が回ってくるからこう言わなきゃ、このライブはこうやらなきゃダメになっちゃうな、あの人はこう思ってるかな、自分はどうやって生きていかなきゃいけないかな……とか。目の前の日常にある、当たり前に考えなきゃいけないことをずっと考えています。
私は普通にしていると考えるのをやめちゃうから、考えることを意識的にしていて。忘れっぽいからマネージャーさんに言われないとすぐ忘れちゃうので(笑)、次に言われたときすぐ出てくるように、覚えているうちに”考えておく”ようにしています」
考え続けるようになったのは、苦い思い出があるから。
「昔メンバー全員で受けたインタビューで、質問をされたときに会話が止まってしまって。BiSHは曲を作ってもらっているのに、ある曲に対して『どう思いますか?』と聞かれて誰も答えられなくて、すごく悲しいなと思ったんです。それで『私がちょっとでも楽曲やBiSHについて考えておいたら…』と反省して考えるようになりました。
忘れっぽいんですけど、昔から記憶力だけはあるんですよ。人の顔や名前、前に考えていたことを思い出すのは得意で、ちゃんと脳を動かしておいたら、必要なときに突然パッと出てきます。ときどき『これ違うやつだった…!』って間違えるときもありますけど(笑)、出てきたことはできるだけしゃべってみるようにしています」
BiSHにソロに演技にバラエティ…チッチ流「パンク回避術」キーマンは”飲み友達”
2021年末に解散を発表して以降、12カ月連続のシングルリリースに3タイトルの全国ツアーなど、多忙を極めるBiSH。そんなさなか、2022年8月にはチッチが「CENT(セント)」としてソロアーティスト活動を本格始動させることが発表された。
「BiSHは、プロデュースしてもらった”セントチヒロ・チッチ”として生きる場所。CENTは、私が好きなものを好きなように表現する場所です。今まで私が生きてきたルーツにあるいろんなもの、カルチャーや人とのつながりを、これからの人生で表現していきたい。だから音楽性も『私がやりたい表現をしたらこうなるよ』というもので、BiSHとは全然違うんです。
私も『CENTは本当に丸々、自分だな』と思っていますし、いっぱい好きを詰め込んで、私が表現したいことをみんなに届けたい。だからCENTを見たときに読み取ってくれる、”BiSHのチッチ”との違いを聞くのが楽しみです」
さらに、2022年6月公開のメンバー6人が6本の短編でそれぞれ主役を務めたオムニバス映画『BiSH presents PCR is PAiPAi CHiNCHiN ROCK’N’ROLL』の『どこから来て、どこへ帰るの』(行定勲監督/撮影自体は数年前)で役者にも挑戦。
「初めてのことばかりだったので全部が挑戦だったけど、新しいことをやらせてもらえて、すごく楽しかったです。自分じゃない誰かを表現すること自体も初めてでしたが、私が演じた『チヨ』という女の子は行定さんが私に寄り添って作ってくれた役で。自然体のままどう表現していくかが逆に難しかったんですけど、どれくらい自然にお芝居できるかを大事に、すごく考えながら頑張りました。
相手役の中島(歩)さんが面白くて優しくて、お芝居についてもじっくりお話しできて、すごく実りある時間を過ごせました。カットがかかったら、作品の恋人同士から完全に素の中島さんとセントチヒロ・チッチに戻るんです。短編でしたし、初めてで緊張していましたし、中島さんが演じ手として圧倒的に先輩だったので役に感情移入しすぎることもありませんでした。
私だけじゃなくて、たぶんメンバーみんな映画を通して学ぶことがあったと思います。たとえば表情ひとつとってみても、演技のおかげでライブでの感情の入れ方が少しは磨けたんじゃないかな、と思うときがあります」
BiSHの超多忙なスケジュール加え、ソロの音楽活動、役者、MCを務める『スパイストラベラー』(フジテレビNEXT)をはじめテレビ番組への単独出演――考え続ける頭をパンクさせないための秘訣は?
「私はとにかく友達が好きだから、友達と直接会って話します。同世代や年下でも、逆にすごく年上の友達でも、ディスカッションを通じていろんな言葉や考え方をもらえるのが嬉しくて。だからお酒も好きなんですけど、人と話せば、自分の中で1個だった考え方が2個にも3個にも分裂して選択肢が増えます。思ってもみなかった考え方に気づかせてもらえることも、すごく多くて。
それから、迷ったら自分で悩まずに、友達やメンバーに相談すると決めています。頭が固くて緩い選択肢がなかなか見つけられないって自覚しているから、いろんな人に聞くようにしているんです」
大切な友人からもらった、人生の”金言”がある。
「もう何年も前ですが、70代のお友達に『自分のイエスを見つけなさい』って言われたことがあって。その方はBiSHのことも知ってくださっているし音楽業界の大先輩なんですけど、下北沢で出会った飲み友達です。あるとき、こう言ってくれました。
『すごくいいグループだね。でもいつかは終わりが来るかもしれないから、それまでに自分のイエスを見つけて、それに向かって2本足で歩きなさい』
その言葉を自分の中でずっと大事にしていて、私はそれ以来ずっと『イエスを見つけなきゃ』と思って生きています」
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※6月11日(日)23:59まで
profile/セントチヒロ・チッチ(せんとちひろ・ちっち)
Twitter:@Chittiii_BiSH
Instagram:@cc_chittiii_bish
写真・Takuya Iioka
ヘアメーク・Chigira[RIM]
ロケーション協力/Studio Clara[ADDICT_CASE]
※「月刊WACK」は6月11日(日)23:59まで公式サイトで予約受付中