vol.1 栗山廉さん
バレエダンサーやフィギュアスケーターなど、アスリートの中でも特に「王子様」と評されるイケメンたち。“王子様っぽさ”の理由は何なのでしょうか。それぞれの魅力をそれぞれの見所から紐解いていきます。
PROFILE
くりやま・れん/バレエダンサー(Kバレエ カンパニー所属)。1993年生まれ。北海道出身。2014年の入団以来、2年ごとにファースト・アーティスト、ソリスト、ファースト・ソリストと昇格。バレエ団きっての長身とエレガントなライン美を生かし、『白鳥の湖』『シンデレラ』『くるみ割り人形』などの王子役を射止める。クラシックバレエにとどまらないダイナミックなパフォーマンスで魅せるKバレエ カンパニーのダンサー5人で結成されたユニット「Ballet Gents」のメンバー。リフレッシュ法は温泉と8時間睡眠! 公式Instagram @ren_kuriyama
英国・ロイヤルバレエ団で日本人初のプリンシパルであり世界的に有名なバレエダンサー、熊川哲也さん率いる「Kバレエ カンパニー」。熊川さんのエスプリを引き継ぐ男性ダンサーたちの中でも、特に美しく長い手脚、しなやかでエレガントなシルエットが見るものを惹きつけるのが栗山廉さん。
タイトなバレエタイツにきらびやかな刺繍が施されたパフスリーブのバレエ衣裳も難なく着こなし、まさにその姿は“王子様”。お姉さんが習っていた影響で10歳の時になんとなく習い始めたバレエ。高校生になってベルギー・アントワープ、さらにスイス・ローザンヌへとバレエ留学し、帰国後にKバレエ カンパニーのオーディションを受けて入団。
「身長185㎝は男性ダンサーの中でも長身なほうですね。そのラインを生かした踊りが自分の持ち味だと思っています。王子様系に見られがちなんですが、自分ではダイナミックな踊りのほうが得意なつもりなので、役の幅をより広げていくことが今の課題です。たとえば“王子”も作品によって個性が変わるので、そういう演技面、また女性ダンサーとのパートナリングも極めていきたいです」
栗山さんの踊りが炸裂する『白鳥の湖』第3幕の“グラン パ・ド・ドゥ”
「憧れのダンサーは、パリ・オペラ座バレエ団のエトワール、マチュー・ガニオさん。彼の『ラ・シルフィード』がバレエにのめり込むきっかけになりました。エレガントですがテクニシャンでもありコンテンポラリーも踊れて、何よりも“役を支配する”存在感がある。王子様と言ったら栗山、と言ってもらえるような、そんな圧倒的なダンサーを目指しています」
ⒸK-BALLET COMPANY
怪我をしない体づくりなど基礎の大切さを痛感しているという謙虚さを持ち、バレエのことを熱く語る姿とのギャップも魅力のひとつで、真面目な人柄が踊りにも表れています。3月22日から始まる『白鳥の湖』では、王子であるジークフリード役を踊る予定。Kバレエ カンパニー版『白鳥の湖』の魅力はやはり豪華な舞台装飾と衣裳、優雅ながらもテクニカルな踊りの迫力。
「バレエの教科書のような作品で、140年以上前から多くのダンサーが踊り追求してきた偉大な作品。ジークフリードは王子らしい気品はありながら、成人の誕生日にまだまだ自由でいたいのに、母親に政略結婚を勧められて人生に迷っている一人の青年です。それでいて前向きで好奇心旺盛。王子らしい所作、繊細な内面の表現のバランスが難しいのですが、こだわって踊りたいと考えています。3幕のソロでは今回、熊川ディレクターが僕のために振付を再考してくださったパートもあるんです。自分の踊りの魅力を最大限に出せると思うので、ぜひ注目してほしいです!」。
ダイナミックでいてエレガント、テクニックの迫力、そしてラインの美しさにうっとりしてしまいます。
「視覚からも聴覚からも、世の中におけるすべての美しさが詰まった総合芸術がバレエ。言葉では表現せず体と音楽で表現するので国や時代を問わず魅了してきた唯一無二の芸術です。劇場に一歩足を踏み入れた瞬間に、非現実的な心が洗われるような、美しい世界観を体感できます。ハードルが高いと思わずに、イベントにいくような感覚で観に来てもらえるとうれしいです」
栗山さんの姿を見られるのは……Daiwa House PRESENTS 熊川哲也 Kバレエ カンパニー Spring 2023『白鳥の湖』Bunkamuraオーチャードホール(2023年3月22日~26日)
世界中のバレエ団が上演してきたグランド・バレエの代表とも言える古典名作。チャイコフスキーの美しい旋律、豪華な舞台装飾や衣裳、テクニカルでありながらエレガントな振付けと、バレエのあらゆる魅力が詰まった作品は、バレエを観たことがない方にもおすすめ。栗山さんは3月23日14:00、25日12:00にジークフリード役で出演予定。詳細はKバレエ カンパニー公式ホームページ www.k-ballet.co.jp でご確認ください。
©Yumiko Inoue
取材・文/味澤彩子