特集

すらりとした長身に強靭さが備わって“最強”との呼び声も高い【王子様の推しドコロ】

vol.10 ワディム・ムンタギロフさん

PROFILE

Vadim Muntagirov/1990年生まれ、ロシア・チェリャビンスク出身。両親、姉ともにバレエダンサーというバレエ一家に生まれ、ペルミ・バレエ学校を経て英国ロイヤル・バレエ学校へ。現在は英国ロイヤル・バレエ、プリンシパルとして数々の初日公演の主役を任され、当代きっての“王子様ダンサー”として活躍中。2023年6月には自伝『FROM SMALL STEP TO BIG LEAPS』が発売に。

輝かしい来歴が物語る美しいスタイルと振る舞い

腰が細く脚が長いすらりとスマートな185㎝の長身、しなるように美しい体のライン。爽やかで甘いルックスに、テクニックはありながらも、とことんエレガントなダンスール・ノーブルで観客を魅了し続けるワディム・ムンタギロフさん。スターダンサーが揃う英国ロイヤル・バレエにおいても、王子様を演じたら彼の右に出る者はいない、そう感じさせる舞台を圧倒する華と気品に溢れたダンサーです。

『ドン・キホーテ』より ©Andrei Uspenski

現在、英国ロイヤル・バレエ団にてプリンシパルとして活躍中のワディムさんの生まれはロシアのチェリャビンスク。9歳の時に故郷を離れ、ペルミ・バレエ学校で学ぶように。16歳でローザンヌ国際バレエコンクールにて入賞し、スカラシップを獲得、英国ロイヤル・バレエ学校へ。1年で帰国しようとした彼を、当時の校長が卒業するまで残るように説得した、という逸話があるほど、優秀で目立つ存在だったようです。
その後、2009年の卒業後は、イングリッシュ・ナショナル・バレエ(英国5大バレエ団のひとつ)に「ファースト・アーティスト」として入団。2010年に主演した『白鳥の湖』で注目され、2011年にはプリンシパルに昇格、同年に英国批評家協会の優秀男性パフォーマンス賞を受賞、2013年には『眠れる森の美女』でバレエ界のアカデミー賞と言われるブノワ賞を受賞。20代の初めにして成功を手にいれた彼の次なるステップは、2014年の英国ロイヤル・バレエ(世界3大バレエ団のひとつ)にプリンシパルとしての移籍、入団したことでした。ここでも数々のファーストキャストを任され、2019年には『白鳥の湖』で2度目のブノワ賞、2021年にはダンス・ヨーロッパ誌の優秀ダンサー賞など、数々の名誉ある賞を受賞。日本では、新国立劇場バレエ団の常任ゲスト・アーティストを務めたこともあり、来日頻度も高く、日本を愛してくれているダンサーです。現在は、英国ロイヤル・バレエのプリンシパルでありながらアメリカン・バレエ・シアターやパリ・オペラ座バレエ、マリインスキー・バレエなど世界中のバレエ団で客演する、バレエ界の頂点に君臨しているといっても過言ではないスターダンサーなのです。

『海賊』より ©Andrei Uspenski

何を踊っても自分の踊りにしてしまう並はずれた能力

得意・不得意が観ている側には感じられず、どんな役、どんなプログラムでも自分のものにして、踊り切ってしまうところがワディムさんの踊りの魅力。王子様を踊ればエレガントで優雅な立ち振る舞いはもちろん、その王子ごとの個性までテクニックと表現できっちり踊りわける多才ぶり。ロシア出身ダンサーならではの、しっかりとした基礎があるダンススタイルなので、クラシックだけでなくコンテポラリーでも自在に体を動かし、前衛的なプログラムもしなやかで優雅に舞うのです。長身でがっしりというよりは、すらりとしたスタイルですが、しなやかさの中に強靭さを秘め、そのテクニックでも舞台を圧倒します。以前は爽やかな好青年のイメージが強かったワディムさんも33歳。マスキュリンな魅力も備わり、正統派のダンスール・ノーブルとしての活躍が今後も楽しみなひとりです。

ワディムさんの姿が見られるのは……Ballet Muses -バレエの美神 2023-(11月22日、23日、25日)

イギリス、ロシア、ドイツ、オーストリア、スイス……まさに国境を越えて世界で活躍する、今見るべきスターダンサーが競演を果たす3日限りのガラ公演。ワディムのほかにもバレエの聖地ロシアの最高峰で、クラシックバレエの殿堂といわれるマリインスキー・バレエにて日本人で初めてファーストソリストとなった永久メイ、同じくマリインスキー・バレエ ファースト・ソリストのフィリップ・スチョーピン、ボリショイ・バレエ プリンシパルのアリョーナ・コワリョーワなど、バレエ団として来日が難しいスターダンサーも観ることができる貴重な公演です。ワディムはイングリッシュ・ナショナル・バレエ プリンシパルのナターシャ・マイヤーをパートナーに、【Aプロ】では『ラ・フィーユ・マル・ガルデ』よりパ・ド・ドゥ、【Bプロ】では『海賊』よりパ・ド・ドゥを踊る予定。
【Aプロ】11月22日(東京文化会館 大ホール)、11月25日(NHK大阪ホール)、【Bプロ】11月23日(東京文化会館 大ホール)
詳しくは、https://www.koransha.com/ballet/muses/まで。

取材/味澤彩子

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