vol.16 ウラジーミル・シクリャローフさん
PROFILE
Vladimir Shklyarov/1985年生まれ、サンクトペテルブルグ出身。ワガノワ・バレエ学校を卒業後、マリインスキー・バレエ団に入団。2007年には早くもソリストに昇格、2008年にはファーストソリストに。2009年には名誉あるモスクワ国際バレエ・コンクールで金賞を受賞し、2011年にはまだ20代にもかかわらずプリンシパルに昇格。2020年にはロシア名誉芸術家の称号も。アメリカン・バレエシアター、東京バレエ団などロシア以外での客演も多く、世界中で活躍する現代を代表するダンサー。
国が威信をかけて、バレエという伝統芸術に力をいれているバレエ大国ロシア。そのロシアにおいて2大バレエ団と言われているのがモスクワ「ボリショイ・バレエ団」とサンクトペテルブルグ「マリインスキー・バレエ団」。アンナ・パヴロワ、ヴァーツラフ・ニジンスキー、ジョージ・バランシン、ルドレフ・ヌレエフ、ミハイル・バルシニコフなど数々の伝説級バレエダンサーを輩出し、チャイコフスキーの3大バレエ『眠りの森の美女』『くるみ割り人形』『白鳥の湖』が初演されたバレエの殿堂、マリインスキー・バレエ団において、絶対的王子様として、ファンに愛されているダンサーがウラジーミル・シクリャローフさんです。
『海賊』にて
“絶対王子”の踊りから目が離せない
現在、マリインスキー・バレエ団にてプリンシパルとして活躍中のシクリャローフさんは、ロシア・サンクトペテルブルグの生まれ。バレエをやりたくてもやれなかった母の勧めで6歳からバレエを習い始めたそう。10歳でマリインスキー・バレエ団付属のバレエ学校であるワガノワ・バレエ学校に入学。バレエ学校在籍当時からめきめきと頭角を現し、在学中にワガノワ賞コンクールに入賞。卒業後、優秀な生徒が数人だけ入団を許されるマリインスキー・バレエ団に入団します。
その甘い容姿、調和のとれた体格、優雅でエレガントな踊りから、“絶対王子”“バレエ界の貴公子”と称され、『白鳥の湖』『眠りの森の美女』『くるみ割り人形』『ロミオとジュリエット』などのダンスール・ノーブル役が得意とされていますが、実はテクニックにも優れ、『ドン・キホーテ』『海賊』などのダイナミックな技巧が必要とされる演目にも定評のある希有なダンサーです。
近年では、その自由で純粋な解釈でコンテンポラリー作品も印象的に踊り、2023年7月には「入団20周年記念公演」も開催した、表現力とテクニックの調和がピークとも言える、観る者を捉えて離さないダンサーです。
観るものを納得させる王子様
「彼は王子様に必要なものをすべて持っている」そうインタビューに答えたのは、マリインスキー・バレエ団を代表するバレリーナ、ヴィクトリア・テリョーシキナ氏。ロシア功労芸術家であり数々の有名ダンサーと踊ってきた彼女がそう答えるほど、ウラジミール・シクリャローフさんは、舞台に現れた瞬間から疑うことのない王子様そのもの。
ディズニー映画などで慣れ親しんだあのまぶしいほどに煌めく王子が想像の世界だけのものでなかったんだ!と衝撃を覚えるほどの完璧な“王子様”の佇まい。優雅さが溢れる伸びやかで柔軟性に富んだ踊り、エレガントで気品溢れるアームス(腕の動き)、そして高いジャンプと精確なタイトターン、美しい脚……。
結婚を誓ったのにいとも簡単に騙されて違う人と結婚しようとしたり、婚約者がいるのにひと目ぼれの恋にうつつを抜かしたり、二股をかけたり。どうしようもない役柄の主役男性が多いバレエにおいて(笑)、「こんなに気品が溢れていて、美しかったら仕方がない」と思わせる。そんな説得力のあるルックスと踊りは、まさにバレエのために生まれてきた存在といっても過言ではないのではないでしょうか。
シクリャローフさんの姿が見られるのは・・・・・SuperStargalaスーパースター・ガラ 2024(2024年10月4日~6日)
泣く子も黙るボリショイ・バレエ団のスヴェトラーナ・ザハロワ、パリ・オペラ座バレエ団のドロテ・ジルベール、パリ・オペラ座バレエ団を退団したばかりの踊りを見られこと自体が貴重なミリアム・ウルド=ブラム、そしてウラジミール・シクリャローフ……。まさに、バレエ界のスターが集結した4回限りの贅沢なガラ公演。シクリャローフさんは、『海賊』『マノン』を踊る予定。
10月4日19:00~、5日13:00~、5日18:00~、6日15:00~(東京文化会館 大ホール)。詳しくは、公式ホームページ(https://super-stars-gala.com/)まで。
取材・文/味澤彩子