
『想い出にかわるまで』(TBS)TVerホームページより
新クールのドラマが始まる前に、主演俳優の過去作がTVerで配信されるのがすっかり定番に。ドラマ好きにとっては嬉しい“復習タイム”です。そこで今回は、ドラマオタクのコラムニスト小林久乃と元JJ編集長イマイズミが、「今こそ観てほしい!」と太鼓判を押す名作ドラマをピックアップ。懐かしい名作から、あらためて観ると新しい発見がある作品まで、チェックしておきたい10本を選びました。
【コラムニスト小林が選んだ5作品】
『想い出にかわるまで』(1999年/TBS系)
『ダブル・キッチン』(1993年/TBS系)
『モンテ・クリスト伯 -華麗なる復讐-』(2018年/フジテレビ系)
『中学聖日記』(2018年/TBS系)
『年下の男』(2003年/TBS系)
【元JJ編集長イマイズミが選んだ5作品】
『特命係長 只野仁』(2003年/テレビ朝日系)
『結婚できない男』(2006年/フジテレビ系)
『架空OL日記』(2017年/読売テレビ)
『ストロベリーナイト』(2012年/フジテレビ系)
『M愛すべき人がいて』(2020年/テレビ朝日系)
内館牧子脚本の大ヒット作品とコンプラ違反の深夜ドラマに注目!
元JJ編集長イマイズミ(以下、イマ):最近、新クールが始まる1カ月くらい前から、主演俳優の過去作品がTVerで配信されるようになっていて、気づくとそっちばかり観てしまいます。
コラムニスト小林久乃(以下、小林):DVDを持っていれば別ですが、なかなか観る機会のない名作が無料で観られるのはありがたいですよね。本当にいい時代になりました。
イマ:今回は3月配信の作品からそれぞれ5本ずつ選びましたが、小林さんは『想い出にかわるまで』を挙げていますね。
小林:エリート商社マン・高原直也(石田純一)と婚約して幸せの絶頂にいた沢村るり子(今井美樹)が、ちょっとしたすれ違いで結婚を延期している間に、妹の久美子(松下由樹)に恋人を奪われてしまう、という衝撃的なストーリーです。
イマ:姉妹で一人の男を取り合うドロドロ系って、今なら深夜ドラマの定番ですが、それをゴールデン・プライム帯でやっていたのがすごいですよね。
小林:脚本の内館牧子はこの作品で一気にブレイクしましたし、松下由樹にとっても出世作。当時は“悪女”としてかなりバッシングも受けていたそうです。
イマ:それだけ説得力のある演技だったということですよね。主題歌がダイアナ・ロスの「IF WE HOLD ON TOGETHER」だったのも印象的でした(DVDでは日本人歌手に差し替え)。そういえば’90年代って、洋楽ヒット曲を主題歌にするケースが多かったですよね。野島伸司作品とか。
小林:時代の空気を感じますね。このドラマ、とにかく毎回ありえない展開の連続で、全然飽きないんです。中学生だった私がドラマにハマるきっかけのひとつでもありました。
イマ:ちなみに、ラストはどうなるんでしたっけ?
小林:直也とるり子がよりを戻しかけるんですが、久美子は直也に泣いてすがり、るり子には「取らないで!」と頭を下げて阻止。最終的にるり子は身を引いて、新しい人生を選ぶという結末です。
イマ:久美子、強すぎる(笑)。
小林:そして、イマイズミさんが挙げたのは『特命係長 只野仁』。これ、お色気シーン満載のまさに“不適切にもほどがある!”なドラマですよね。
イマ:大手広告代理店の窓際係長・只野仁(高橋克典)は冴えないダメ社員。でも実は、会長直属の特命係長として裏でさまざまなトラブルを解決している、という二つの顔を持っていた——というストーリーです。第1話の冒頭からかなり大胆なシーンが出てきますが、いま配信されている“令和コンプライアンスブレイクスルー版”では、「こんぷら」と書かれたハートでしっかり隠されています(笑)。
小林:なぜこのドラマを?
イマ:こういう振り切った設定のドラマって、いま観ると新鮮だなと思って。1話完結で、只野仁が得意の格闘術と“色気”を武器に難題を解決していく、いわば水戸黄門的な安心感もあって、ストレスなく楽しめるんです。サラリーマン層にヒットして、シーズン4まで続いたうえに、スペシャルドラマが6本、さらに劇場映画、その後はAbemaTVのオリジナルドラマとしても続いた人気シリーズになりました。
小林:当時は、「あの高橋克典がこんな役をやるんだ!」という驚きがありました。体もバキバキだし。
イマ:露出の多い役なので、撮影に向けてかなりストイックに鍛えていたらしいですが、それも見どころのひとつですね。
小林:雑誌『STORY』(光文社)の表紙でおなじみの蛯原友里も出演していますよね。CanCamモデルなのに制服OL役というギャップも印象的でした。
イマ:2000年代の大手広告代理店に制服OLはいませんでしたけど、ああいう派手なヘアメイクの女性はたくさんいましたよね(笑)。
結婚にまつわる名作ドラマをピックアップ
小林:次に私が推したいのは『ダブル・キッチン』。雑誌編集者の都(山口智子)は、一歳年下の花岡忍(高嶋政伸)と大恋愛の末に結婚。忍の両親・啓三(伊東四朗)、真知子(野際陽子)、さらに妹の静(横山めぐみ)、るみ(坂井真紀)と二世帯同居を始めるのだが——見どころは何といっても都と真知子の嫁姑バトルです!
イマ:結婚後も仕事を続ける都と、「妻は家庭を守るもの」という価値観で生きてきた真知子。衝突しないほうが不自然ですよね。家にいる間ずっと、あの割烹着姿の姑にあれこれ指図されたら……正直、しんどい(笑)。
小林:『ずっとあなたが好きだった』(1992年/TBS系)以降、「義母といえば野際陽子」というイメージを確立しましたが、本作の真知子はただの嫌味な姑ではないんですよ。いざという時にはそっと手を差し伸べる優しさがあって、そのバランスが絶妙。あれは野際さんにしかできない役だと思います。
イマ:喧嘩になると、真知子が鼓を打ち、都が玉すだれに当たり散らすのがお約束なんですが、野際さん、ちゃんと鼓のお稽古をして実際に叩いた音を使ったらしいですよ。
小林:真面目! さすが元NHKアナウンサー。このドラマは、今ではあまり見られなくなった嫁姑バトルや大家族の同居生活など、“あの頃の日本”を知る資料的な面白さもあって、改めて観る価値のある1本です。
イマ:私がもう一度観たいと思ったのは『結婚できない男』。桑野信介(阿部寛)は腕利きの建築家で、ルックスも良く、都内の高級マンションで悠々自適な一人暮らしを送る、いわば“超優良物件”。ただし、皮肉屋で偏屈な性格ゆえに女性や結婚に対して距離を置き、40歳になっても独身——という物語です。
小林:いやー、このタイトル、今だと完全にアウトですよね。
イマ:「男は結婚して一人前」みたいな価値観が前提にありますからね。20年前は今以上にその圧が強かった気がします。私も20代後半になると「結婚しないの?」って普通に聞かれていたし、自分も深く考えずに聞いてましたし(笑)。
小林:20代の頃は、このドラマをゲラゲラ笑いながら観ていましたが、続編の『まだ結婚できない男』(2019年)のときは、自分も40代独身になっていて、もう共感しかなかったですね。でも、人に縛られず、好きなときに好きなものを食べて、趣味に没頭できる生活って、かなり幸福度が高いと思いません?
イマ:令和の今だと、そういう生き方も自然に受け入れられていますよね。信介は時代を先取りしていたのかもしれない。
小林:それと、シリアスな役のイメージが強かった阿部寛がコメディに振り切ったのも大きかったですよね。協調性も社交性もなくて、理屈っぽくて面倒くさい男の演技が本当に絶妙で。ハイスペックな人ほどこうなりがちよね、というリアリティがありました。
イマ:ちなみに、阿部寛はこのドラマの放送1年後に結婚して、記者会見で「『結婚できない男』が結婚することになりました」とコメントしています。
小林:信介を演じて、思うところあったんですかね(笑)。
とんでもない設定のドラマはやっぱり面白い!
イマ:小林さんが入れた『モンテ・クリスト伯-華麗なる復讐-』は、ディーン・フジオカが初の連ドラ単独主演を務めた作品ですね。
小林:朝ドラ『あさが来た』(2015年/NHK総合)で五代友厚を演じて大ブレイクした後、なかなかハマり役に恵まれなかった印象でしたが、このドラマでやっとしっくりきました。
イマ:アレクサンドル・デュマの名作『モンテ・クリスト伯』を下敷きにした物語で、無実の罪で投獄された漁師・柴門暖(ディーン・フジオカ)が、脱獄後に身分を変え、投資家として成功。モンテ・クリスト・真海として、自分を陥れた者たちに復讐を遂げていくというストーリーです。
小林:別人になって復讐する設定は、今クールの『リブート』(TBS系)にも通じるものがありますよね。ただ、このドラマのおディーン様は髪型を変えて、ちょっとこざっぱりしたくらい。いや、さすがに気づくでしょ、ってツッコミたくなる(笑)。でも、そういう粗さも気にならないくらい、毎回ストーリーに引き込まれました。
イマ:ディーン・フジオカって、一般人の役よりも、こういう浮世離れした設定のほうがハマりますよね。
小林:そうそう、彼が一番生きるのはこういう“コスプレ感”のある役なんですよ。ちなみに、このドラマでの演技が評価されて、第12回コンフィデンスアワード・ドラマ賞の主演男優賞も受賞しています。
イマ:コスプレといえば、私が推したいのは『架空OL日記』です。バカリズムがブログで銀行OLになりきってつづっていたものをドラマ化した作品で、なんてことないOLの日常を描いています。劇中でバカリズムは女性という設定ですが、女言葉も使わず、外見も変えずに、ただスカートをはいているだけという。
小林:斬新でしたよね。最初はさすがに違和感があったんですけど、気づいたら全然気にならなくなっていて。それよりも、更衣室での女子同士の会話の解像度が高すぎて、そっちに驚きました。
イマ:『ブラッシュアップライフ』(2023年)や『ホットスポット』(2025年/ともに日本テレビ系)でも、女子同士の何げない会話がリアルすぎると話題になりましたが、このドラマがまさに原点ですよね。バカリズム脚本の真骨頂とも言えます。
小林:更衣室とかトイレの会話をどうやってリサーチしてるのか謎ですが、「あるある!」って思うやり取りばかりで、ホントによく観察してるなって思います。
イマ:バカリズムはこの作品で第36回向田邦子賞を受賞していますし、ただのコメディで終わってないところはさすが。脚本を担当する2027年前期の朝ドラ『巡るスワン』も、「どこにでもある日常を過ごす主人公が“何も起こらない日常を守る”という道を見つけるまでのヒューマンコメディ」という内容。バカリ脚本がどう進化するのか、今から楽しみで仕方ないです。
年下男子とのラブストーリーはどの時代も人気です
イマ:小林さんが推した『中学聖日記』、実は観てなかったんですけど、どういう話なんですか?
小林:え、観てないんですか!? 私これ、5回は観てますよ(笑)。婚約者がいながらも、中学3年の男子生徒・黒岩晶(岡田健史)に惹かれていく教師・末永聖(有村架純)。聖は、いったんは想いを断ち切って姿を消すんですが、3年後に再会してしまい——という禁断のラブストーリーです。
イマ:朝ドラ『ひよっこ』(2017年/NHK総合)の直後にこの役を受けるって、有村架純、かなり攻めてますね。
小林:地上波でやるにはなかなか踏み込んだ内容ですし、相手役の岡田健史(現・水上恒司)もこれがドラマ初出演なんですよ。
イマ:(第1話を観ながら)うわ、なにこの初々しさ…! で、このドラマの見どころは?
小林:まあ、私の大好物である“年下男子との恋”なんですけど(笑)、それ以上に、二人が少しずつ心を通わせていく過程の描き方が本当に丁寧なんです。電車で並んで立っているときに、指先だけがそっと触れる…みたいな演出とか、もうキュンとしちゃって。
イマ:スタッフクレジットを見ると、演出は『アンナチュラル』(2017年)、『最愛』(2021年/ともにTBS系)の塚原あゆ子さんですね。
小林:印象に残るシーンやセリフも多くて、単なる年下男子との恋愛ものでは終わらない素敵なドラマなので、ぜひ観てほしいです!
イマ:そして、小林さんがもう一つ挙げているのが『年下の男』って…。どんだけ好きなんですか(笑)。
小林:これも『想い出にかわるまで』と同じく内館牧子脚本。平凡なOL・千華子(稲森いずみ)がスポーツジムで出会った伊崎(高橋克典)に夢中になってプロポーズするんですが、あっさり撃沈。その後なんと、伊崎は千華子の母・花枝(風吹ジュン)と恋に落ちてしまい、母と娘が同じ男を巡ってドロドロの愛憎劇に発展するんです。
イマ:『想い出にかわるまで』は姉妹でしたけど、今度は母娘ですか…。
小林:いやもう、実の母親に好きな男を取られるって、この世で一番キツいパターンですよ。しかも、毎回とんでもない展開が起きる“内館ワールド”をこれでもかというくらい味わえます。
イマ:各話のタイトルも強烈ですね。「サカリのついたメス豚」(第7話)、「嵯峨野で地獄を見た母娘」(第8話)とか…。
小林:第9話にいたっては「殺す…殺す…殺す…殺す…」ですからね(笑)。ちなみに千華子は、寂しさを埋めるように弟の友人・謙吾(賀集利樹)と付き合うんですが、これがまた8歳年下。
イマ:え、そっちも年上女性×年下男子になるんですか。ややこしい!
傑作刑事ドラマと深夜の大バズりドラマはもう一度観たい!
イマ:私が挙げたドラマは『ストロベリーナイト』。直感と行動力を武器に数々の難事件の真相に迫る、ノンキャリアから成り上がった警視庁捜査一課の刑事・姫川玲子(竹内結子)が主人公のシリーズです。
小林:これ、原作は光文社なんですね。
イマ:そうそう、誉田哲也の「姫川玲子シリーズ」が原作なんですよ。スペシャルドラマからスタートして、連続ドラマ、劇場版まで展開しました。トラウマを抱えながらも現場で戦い続ける姫川というキャラクターが圧倒的な存在感でしたし、それを体現した竹内結子も本当に素晴らしかった。男性中心だった刑事ドラマの主役に女性刑事を据えたのも新鮮でしたね。
小林:姫川が持つ真っ赤なエルメスのバッグが印象的でした。
イマ:扱う事件はかなりハードで、猟奇殺人などグロテスクな描写も容赦がない。連ドラ第1話から線路で真っ二つになった遺体が出てくるというインパクトでした。そして、菊田和男(西島秀俊)をはじめ、部下たちとの距離感や信頼関係も丁寧に描かれていて、人間ドラマとしての完成度も高い。
小林:キャストを一新した『ストロベリーナイト・サーガ』(2019年/フジテレビ系)もありましたが、当時のキャストを超えるのはなかなか難しいかもしれませんね。
イマ:そして、私が最後に推したいのは『M 愛すべき人がいて』。これはもう私たち世代なら全員が観ていた「大映ドラマ」そのもの!
小林:浜崎あゆみとavex松浦会長のことを描いた小説がベースになってるんですよね。
イマ:どこからどこまでがホント?っていう考察が吹っ飛ぶくらい、ツッコミどころ満載の演出が話題でした。
小林:中でも、マサ(三浦翔平)の秘書・姫野礼香を演じた田中みな実が強烈でした! 突然、会社にウェディングドレスを着てきたり、マサの部屋に無断侵入した挙句にドラムを叩き出したり、やりたい放題(笑)。
イマ:三浦翔平もよく笑わないで耐えましたよね。当時はコロナ禍のステイホーム期間ということもあって、リアタイ視聴しながらTwitterでツッコむ、みたいな楽しみ方が広がっていました。
小林:他のキャストも、高橋克典(中谷役)、水野美紀(天馬まゆみ役)、高嶋政伸(大浜役)など演技派の濃い俳優が勢ぞろい。結果的に、主役のアユを演じた安斉かれんが全然目立たないという。
イマ:今、どこ行ったんでしょうね…。
小林:さて、今回、私はドロドロ恋愛系と年下男子もの、イマイズミさんは突拍子もない設定のドラマを多く選びました。
イマ:やっぱり、今はなかなかないタイプのドラマを選びがちですよね。TVerで配信終了になってもNetflixやU-NEXTで観られる作品が多いのも、ドラマ好きとしては嬉しい限り。
小林:4月ドラマが始まるまで、しばらく退屈することはなさそうです!
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小林久乃(こばやし・ひさの)コラムニスト、編集者。正々堂々の独身。中学生から地上波ドラマを愛して30年以上、筋金入りのオタク。好きが高じてついには『ベスト・オブ・平成ドラマ!』(青春出版社刊)を上梓した。ラブストーリーが好きで、特に禁断の恋がテーマとなると視聴熱が俄然、盛り上がる。公式HPはhttps://hisano-kobayashi.themedia.jp
元JJ編集長イマイズミ 女性誌『CLASSY.』『JJ』の編集長を歴任。1クールの地上波ドラマを全録画するようになったのは、編集長になった13年ほど前から。「仕事で新しい俳優、タレントさんを覚えるため」というのが理由だったけど、見事に大ハマり。ホームドラマとラブコメ好き。韓国ドラマもやや中毒。

イラスト/lala nitta



