コラム

苦労は売ってでもするな 小田明志コラム#3

無意味な苦労を続けることは、自分の時間を捨てることと変わりがない

しかし今日、日本経済の低迷によりこの慣習は崩壊しつつあり、若い時の苦労が報われる保証もなくなってしまった。そして仕事の評価基準も「職場でどれだけうまくやっているか」という曖昧なものから、「どれだけ仕事で成果を残しているか」という、よりシビアなものに変わろうとしている。この変化により、自らの評価を高めるためには、ただ理不尽に耐え続ける「苦労」ではなく、自分のやりたいことや、身に付けたい能力を取得するための「投資」が重視されるようになるだろう。

 

もちろん「投資」にも苦労は付きもので、資格の取得や語学力を高めるための勉強から、事業の立ち上げ経験、特定の事業領域での勤務経験など、長い時間を必要とするものまで、その種類は実に様々だ。大事なのは、その苦労が自分のやりたいこと、実現したいことに基づいているか?ということで、そうだとすれば、それは立派な「投資」なのだと思う。

ただ「苦労」を続ければ給料が上がっていった時代に比べ、仕事で結果を出さなければ評価をされない時代は、会社員にとってたしかにリスクがある。しかし、無意味な「苦労」を続けるというのは、自分の時間を捨てることと変わりがないし、そもそも僕たちには中高年の社員と違い「投資」をしてリターンを得るための時間が十分に残っている。だから、僕は自分の時間を捨てることに鈍感な時代など早く終わってしまえばいいのにと思っているし、自分の「投資」の結果がそのまま自分に返ってくる時代の到来を待ち望んでいる。

「苦労」は売ってでもするな。自分の時間は自分で生きるためにあるのだから。


 

おだ・あかし 

1991年生まれ、25歳。東京都出身。編集者。高校在学中、17歳の時にカルチャー雑誌『LIKTEN』を創刊。一躍話題を集める。2016年11月には、発行人兼編集長を務める、サッカー選手のでないサッカーマガジン、『OFF THEBALL 02』を発表。

Illustration/小田明志

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