国際基準マナー講師の筆者が、日頃さまざまな企業でマナーや話し方の研修をするなかで、最近よく質問されるのが“メール”について。
電話以上にメールが主流になってきた今、接客がメインの企業や部署でさえ、お客様からのメール対応が大事な業務のひとつになっているようです。
そこで今回は、注意したいビジネスメールでの言葉遣いをご説明いたします。
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(1)〇〇さんのお言葉を●●(上司)にお伝えします
正しくは「〇〇さんのお言葉を●●(上司)に申し伝えます」です。
伝える相手は目上の人とはいえ、身内の上司に対しては「お伝えする」と尊敬語ではなく、「申し伝えます」と謙譲語で表現します。
目上の人なのでついうっかり尊敬語を使ってしまいそうになりますが、社外の人にメールを送る場合は、“社内の人=身内”になりますので、尊敬語ではなく謙譲語を使いましょう。
(2)(私が)あとでお電話します
正しくは「後ほど、電話をいたします」。
電話をするのは自分ですので、自分の行動は「お電話する」ではなく、謙譲語で「いたします」と表します。
ただし、相手からの電話に「お電話ありがとうございます」と「お」をつけるのはOK。
「あとで」でももちろん間違いではありませんが、ビジネスシーンでは「後ほど」と伝えるほうがよりベターです。
(3)資料をご持参下さい
正しくは「資料をお持ちください」。
「持参する」は謙譲語なので「私が持参します」と自分の行動に対して使うことはできますが、相手に持ってきて欲しいときには「お持ちください」を使います。
謙譲語の「持参します」に「ご」をつけても尊敬語にはならないので注意しましょう。
(4)どういたしますか?
正しくは「いかがなさいますか?」です。
「いたす」は謙譲語のため、自分の行動に対しては使えますが、相手に「どうするか?」を確認したいときは「いかがなさいますか?」を使います。
ついついうっかり使ってしまわないように覚えておきましょう。
(5)お分かりでしょうか
これは「私の説明でご理解いただけましたでしょうか」が正解です。
「ご理解いただけましたでしょうか」だけでも間違いではありませんが、メールの文章だと、少し偉そうな言い方だと誤解されてしまう可能性も。
相手の理解力や能力などをメールで確認するのは、難しいですよね。
そんなときは「私の説明で」「私の言い方で」とひとことプラスするだけで、“私の説明の仕方に不備があるかもしれないので”というニュアンスを含ませることができます。
メールは後に残るもの。
そして何度でも読み返すことができるのがよい点でもありますが、同時に誤解を与えてしまう可能性も高いものでもあります。
たとえ1通のビジネスメールでも、正しい敬語で美しいメールを送れたらすてきですよね。
敬語は日頃から注意をすることで身についていくもの。
正しい敬語を覚えて、ビジネスパーソンとしてすてきなメールを送れるようにしましょう。
文/大網 理紗 (おおあみ りさ)
リサ・コミュニケーションズ代表。一般社団法人100年先のこどもたちへ代表理事。世界の王室・皇室・政府要人といったVIP接遇とアナウンス業務に従事。その経験を活かし、話し方、マナーの指導にあたる。主な著書に『世界で通じる至高の作法』『人生を変えるエレガントな話し方』等。
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