「知らず知らずのうちに失礼な敬語を使っていた!」ということは、社会人として避けたいですよね。
あなたが当たり前だと思って使っている敬語は、本当に正しいですか?
今回は、よく耳にする間違った敬語をご紹介いたします。
(1)注文した物が揃ったかの確認「ご注文の品はお揃いになりましたでしょうか」
ファストフード店やファミリーレストランなどでよく耳にするフレーズですね。丁寧な言葉遣いをしようという気持ちは伝わってきますが、実は間違った表現です。
来店人数を確認する際の「皆さまお揃いですか」は、主語が「皆さま」のため、尊敬語「お~なる」の表現は正解です。しかし、例文の場合は、お客様に向かって「品」(主語)を高める言い方になっており、不適切な表現と言われています。
「ご注文の品は以上でよろしいでしょうか」「ご注文の品は以上でございますが、追加のご注文はよろしいですか」などの表現が適切です。
(2)お客様に向かって「あちらの窓口でお伺いください」
伺うは「聞く」の謙譲語。謙譲語は自分の動作に使うのが基本です。
お客様が主語ですので、尊敬語を用いて「あちらの窓口でお尋ねください」とご案内しましょう。
謙譲語を使ってしまうと、お客様よりも窓口の方を立ててしまうことになり、失礼な表現となります。
主語が誰なのかを考えるとわかりやすいですね。
(3)資料をお持ちでないお客様に対して「受付で資料をいただいてください」
いただくは「もらう」の謙譲語ですので、自分が「受付で資料をいただきました」というときに使います。
(2)と同様に、相手の動作に謙譲語を使うことは相手を低める表現となります。
「受付で資料をお受け取りください」と伝えるのがよいでしょう。
(4)お客様に向かって「こちらにお座りください」
「お座りください」は敬語としては間違いではありませんが、ペットをしつけるときの「お座り!」を連想させるため、違和感をもつ方も……。
「腰をかける」という意味合いの「おかけください」というフレーズがベターです。
接客では「もしよろしければ、どうぞこちらにおかけくださいませ」と、クッション言葉を使うと文全体が柔らかくなり、好印象ですね。
(5)上司からランチに誘われたとき「私もご一緒します」
「ご一緒します」は、「一緒に行く」の謙譲語ではなく、丁寧語です。
また、「ご一緒する」は“あなたと対等”というような印象を与えてしまうため、上司に使う表現として不適切と言われています。
このような場面では、自分の行為をへりくだることで相手を高める表現の謙譲語を使いましょう。「私もご一緒させていただきます」がよいですね。
相手に失礼のないように、正しい言葉遣いはとても重要です。
ただ、正しい言葉遣いであっても、そこに心が無ければ冷たく聞こえてしまうもの。
敬語は言葉そのものだけではなく、言葉を発したときの表情や声のトーンからも敬意の気持ちが伝わります。
伝えたい相手に合わせて敬語を上手に取り入れ、お客様や上司、先輩とよりよい人間関係を築いていきましょうね。
文/西谷依里子 画像/PIXTA(Fast&Slow 、maroke、kou、ふじよ、metamorworks) 参考文献/文化審議会答申『敬語の指針』