ビジネスシーンでは、カタカナ用語がよく使われます。
耳にしてはいるものの、意味をきちんと知らないままという単語もあるのではないでしょうか? 言葉は意味や使い方を正確に押さえてこそ、知性につながるものです。
そこで今回は、5つのカタカナ表現をご紹介します。ただ、覚えたからといってカタカナ語を乱発しすぎてしまうと、かえってイタい人になってしまうのでご注意を!
(1)「ニッチ」
【意味】隙間(すきま)、適所
【例文】「あのベンチャーは、大手の狙わないニッチな市場で成功した」
人があまり手をつけていない、隙間の産業・市場のことを指します。
需要は一応あるものの、規模が小さめで採算がとりにくいと言われたり、もしくは、単純に盲点になっていたり……。
そんな、ちょっとマニアックな領域のことを「ニッチ」といいます。
そうした領域を見つけ、工夫して商売をすることで、ライバルも少なく、成果を上げることができた企業もあるようです。
(2)「クロージング」
【意味】締めくくり、契約締結
【例文】「顧客とよいコミュニケーションが取れていても、クロージングできなければ、営業上は意味がない」
購入の最終段階(契約書類の記入など)のことで、営業・広告を担当する人がよく使う言葉です。
いくら相手が「買おうかな」という前向きな反応を示していても、最後の最後で破談になることはよくあるものです。
そんな、最後のツメの段階を「クロージング」といいます。先輩から「クロージングが要だからね」と言われた経験がある人は多いのではないでしょうか。
(3)「コンプライアンス」
【意味】法令遵守(じゅんしゅ)
【例文】「不祥事は企業にとって命取りだから、コンプライアンスの徹底が不可欠だ」
ビジネスを進める上で、きちんと法律を守ることを指します。
「そんなのは当たり前だ」と思ったかもしれませんが、例えば、労働基準法で認められている以上の残業をさせられているとか、残業代を支払ってもらえないとか、そうしたトラブルはあちこちで起きています。
だからこそ、コンプライアンスをしっかり意識する必要があるのです。
関連して、カタカナ語をもう一つ。近年「ポリティカル・コレクトネス」(ポリコレ)の重要性が高まっています。
公正・公平を重んじ、差別のない方向性を目指す姿勢をいいます。「保母」を「保育士」、「看護婦」を「看護師」に変えたのは、この「ポリティカル・コレクトネス」の発想だと言えます。
(4)「コンセンサス」
【意味】複数の人による合意
【例文】「町おこしは、地域住民のコンセンサスがないと難しい」
集団全体の納得感が生まれていることを意味します。単にある一人の賛成を指す場合には使いません。
「国民全体のコンセンサス」などと使うこともあります。
仕事で「それって、コンセンサスは取れてる?」と聞かれたら、「組織内にちゃんと根回しをしているかどうか」を尋ねる質問といってよいでしょう。
(5)「アイドルタイム」
【意味】仕事のない、ヒマな時間
【例文】「某カラオケ店は、アイドルタイムを有効活用するため、貸し会議室事業を始めたそうだ」
歌って踊るアイドルは「idol」。「アイドルタイム」のアイドルは「idle」という綴りで、車のアイドリング・ストップなどに使われている単語です。
「仕事がない」「働いていない」という意味のことで、ファミレスでいえば、ランチタイムの混雑が一段落してお客さんの少なくなる時間のことです。ちなみに、アイドルタイムの反対語は「ピークタイム」です。
なんとなくの意味はわかっているつもりでも、正しく理解できていなかった表現はありませんでしたか?
こうしたビジネス用語は、知ったかぶりをせず、つまずくたびに検索するクセをつけましょう!
文/吉田裕子
国語講師。塾やカルチャースクールなどで講師を務める他、『テストの花道 ニューベンゼミ』(NHK Eテレ)に国語の専門家として出演するなど、メディアでも活躍中。東京大学教養学部卒。
画像/PIXTA(ピクスタ)(xiangtao、EKAKI、Ushico、saki)