定型文だけのそっけないやり取りになりがちなビジネスメールですが、さりげなく自分らしさを織り込むことで、メールだけでも好印象を残すことができます。
ありきたりのものから、人柄を感じさせる文面に進化させませんか。
今日から始められる、メール表現の言い換え例をご紹介します。
(1)打合せ日時の連絡メール
【Before】ミーティングは10日13時です。よろしくお願いします。
【After】10日13時からのミーティングにて、お目にかかれるのを心待ちにしております。
業務連絡のメールは、淡々とした機械的な文面になりがちです。
伝えるべき情報は正確に伝えつつ、前後に心のこもった表現を添えることができると、温かい印象が生まれます。
例えば、ミーティングや面談・施術などの日時を知らせるときには、当日を楽しみにしているという気持ちを込めてはいかがでしょうか。
例文のほか、「少し先ですが、待ち遠しい気分です」「久々にお会いできて嬉しく存じます」なども使えます。
(2)やりとりが一段落したときのメール
【Before】今後とも、よろしくお願いいたします。
【After】今後とも、よろしくお願いいたします。季節の変わり目ですので、ご自愛ください。
ビジネスメールの締めくくりは、「よろしくお願いいたします」と一辺倒になりがちです。
何回かやり取りを続けて、それが一段落ついたときなどは、さりげなくプラスアルファの一言を。
「朝夕寒い日もありますので、お風邪など召されませんように」「お忙しいでしょうが、あまりご無理はなさいませんように」などと、相手の体調を気遣う言葉を添えることで、温かい印象を残せます。
(3)お礼のメール
【Before】先日は貴重なお話をありがとうございました。
【After】先日は貴重なお話をありがとうございました。特に、行動スピードの重要性が印象に残りました。
お礼もワンパターンな表現になりがちです。「ありがとうございます」「御礼申し上げます」「感謝いたしております」など、言い方にバリエーションを持たせたいところです。
併せて、お礼に具体性を持たせることも心がけましょう。決まり文句で漠然とお礼を言っているだけでは、形式的に感じられます。
特にどの点が役に立ったのか、とりわけ助かったのはどの部分か、などの具体性を示すことで、実感のこもったお礼になります。
(4)お断りのメール
【Before】サイトにもある通り、返金はできません。
【After】サイトでもお知らせしている通り、返金はいたしかねますが、次回以降お使いいただけるクーポンをお送りします。
断るときには、できるだけ角が立たないよう気を遣います。
「できません!」と強く拒絶する言い方でなく、「いたしかねます」「ご期待に添いかねます」などの「~かねます」という表現を使うようにしましょう。
また、単に断って終わりではなく、「代わりに~」「ぜひ次回は~」などと、今後につながるフォローの一言を添えるようにしたいですね。
(5)受領連絡のメール
【Before】(後でまとめて連絡すればいいと考え、何も送らない)
【After】取り急ぎ、受領のご連絡まで。
相手からのメールにはできるだけ早く返信すべきです。
ただし、上司に判断を仰いだり、資料を精査したりするのに時間がかかる場合も……。そういう場合には、一度、メールを受け取って概要は確認した、という点だけでも知らせることによって、相手を安心させることができます。
そこで用いるのが「取り急ぎ」という語です。「大変急いで」という意味で、「とりあえず」「いったん」よりもきちんとした印象を与える語なので、ビジネスメールで便利な言葉です。
特に気を遣う相手への連絡には、文末を省略せずに、 「取り急ぎ、日程の候補のみお送りいたします」 「取り急ぎ、受領のご報告にて失礼いたします」 という形で送るようにしましょう。
メールは、表情や声のトーンで補うこともできませんし、記録が残るものです。
ミスのないよう慎重に書くのはもちろんですが、自分の人柄や想いが伝わるよう表現を工夫してみましょう。
文/吉田裕子
国語講師。塾やカルチャースクールなどで講師を務めるほか、『テストの花道 ニューベンゼミ』(NHK Eテレ)に国語の専門家として出演するなど、メディアでも活躍中。東京大学教養学部卒。
画像/shutterstock(Aaron Amat、taa22、 violetblue、 number-one) 参考文献/吉田裕子著『たった一言で印象が変わる大人の日本語100』(ちくま新書)