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松戸市立栗ケ沢中学校弓道部男子・佐藤汰樹さんが全国中学生弓道大会男子個人で優勝!
松戸市立栗ケ沢中学校(以下、「栗ケ沢中」)弓道部男子・佐藤汰樹(たいき)さんは、2024年7月に行われた千葉県中学生弓道大会で優勝し、全国大会出場を決めました。その後8月17日に明治神宮中央道場で開催された「第21回全国中学生弓道大会」個人男子の部で優勝、技能優秀賞も受賞しダブル入賞を果たしました。今回は見事全国大会優勝を成し遂げた佐藤さんをはじめ、団体男子の部で佐藤さんとともに戦った伊藤千隼(ちはや)さん、令和6年度全日本少年少女武道(弓道)錬成大会で優秀な成績を収めた団体女子の永田瑞恭(みく)さんにお話を伺いました。
※松戸市ニュースレター(2024年3月12日)
※本資料内の情報は、2024年10月29日 現在のものです。
左から、伊藤さん、佐藤さん、永田さん、指導員の奥田先生
弓道に出会ったきっかけ
「全国大会で予選通過することが先生への恩返しになると思いました」と弓を引く姿とは違い、柔和な雰囲気で控えめに話す、栗ケ沢中学校3年生の佐藤汰樹さん。弓道を始めたきっかけを聞くと、「兄を見て、僕も弓道をやりたいと思った」と教えてくれました。「道着姿がかっこよくて、大会で弓を射る姿もかっこいい、と思って、僕も栗中に入ったら弓道をやるって小学5年生の頃から決めていました」。2人の兄がいる佐藤さん。三兄弟みんな、栗ケ沢中で弓道を始めました。
偶然にも、伊藤さん・永田さんも弓道を始めたきっかけは家族だったそうで、「両親も栗ケ沢中の弓道部出身で、母が父のひとつ先輩で、松戸市立松戸高等学校で再び出会って……。“弓道一家”という感じで僕も弓道を始めました(伊藤さん)」永田さんは「私の姉も栗ケ沢中で弓道をやっていて、その姿がかっこいいなって思って、私も弓道部に入りました」と、親兄弟にわたり弓道人生を歩む、といった“弓道のつながり”に驚きました。
そんな2人の兄を追って弓道の道を歩き始めた佐藤さんが、今年の夏、個人で全国優勝し、団体では伊藤さんとともに5位入賞を果たしました。
怖さを乗り越えて全国優勝
弓道の楽しさ・魅力について「練習した成果がしっかり的中数に出るところです」と話す一方、「気持ちや心の在り方で、日によって的中率や射形が変わってしまうところ」が弓道の厳しさとも言う佐藤さんは、千葉県大会で優勝し全国大会へと進みましたが、全国大会前の練習では思うように射が決まらず、怖かったそうです。
そんな中迎えた全国大会予選、佐藤さんは5中で決勝へと駒を進めます(予選は1人4射を2回行い、合計5中以上の的中者が決勝進出)。決勝戦は継続的中数で順位が決まります。1射外したら脱落という厳しい戦いに、どれほどの緊張だったか佐藤さんに聞くと「予選通過直後に、奥田先生から『いつも通りの射ができていない。少し引きが足りない』とアドバイスをもらえて、自信を持って挑めました。1本目外さなければいいと思っていました」と答えてくれました。大会中は自分の射を外側から見ることができないため、先生からの的確なアドバイスで落ち着いていつも通りの射ができたことが優勝につながり、優勝したときの想いを素直に「嬉しかったです」とはにかみながら答える姿が印象的でした。
射法八節(しゃほうはっせつ)という心技を磨く
佐藤さんをはじめ、全国大会出場常連校として知られる栗ケ沢中を平成10年から指導してきたのが、奥田繁樹(しげき)さんです。奥田先生は松戸市スポーツ協会に所属し、松戸市弓道連盟の推薦で栗ケ沢中に外部指導員として派遣され、週1回、土曜日の午前中に指導しています。栗ケ沢中学校の前には、松戸市立第三中学校(※現在は廃部)、第六中学校でも指導歴のあるベテランの指導員です。
奥田先生は、栗ケ沢中弓道部の強みを、“真面目さ”という言葉で例えます。「弓道は“真面目さ”がないと上達しません。弓を続けられるということは、真面目な人たちが残っていく。ここでいう真面目とは、決められた作法や動作を、一つひとつ、飛ばさないでコツコツとこなしていくという“心構え”です。弓を射った後も気持ちが続いていく。そういう一連の動作ひとつも手を抜けない、丁寧さ、真面目さが弓道では求められます(奥田先生)」。
また、「興奮し過ぎてもだめですし、落ち着き過ぎても、冷静過ぎてもだめなんですね。少ーし軽い興奮状態、ワクワクが続くような心でいることが、一番いい結果が出ます」と、メンタル面の他のスポーツと違いも教えてくれました。
弓の世界には「射即人生」「射即生活」「射は立禅」という言葉があり、弓道には射法八節という一連の動作があるそうです。「射術の基本となる射法八節は弓道を修練する際の基準で、その法則である射法を十分に理解することが求められます。『八節』とあるように、足踏み→胴造り→弓構え→打起し→引分け→会→離れ→残心という8つの動作が流れるようにつながることで成立します。この射法八節がしっかりできれば、的中につながります(奥田先生)」。
奥田先生は普段からこの基本を徹底的に教えているそうです。この心技の鍛錬が実を結び、今年7月20日に日本武道館で行われた基本錬成を主眼とする「全日本少年少女武道(弓道)錬成大会」では、永田さん含む女子団体(他チームメンバー:薄井穂香(ほのか)さん・高木知世(ちせ)さん・眞塩穂和(ましおほわ)さん)で優秀賞(上位2チーム)・技能優秀賞(最も弓道の技能が優れた2チーム)の2つを受賞しました。
また、奥田先生とともに指導にあたっている小川コーチは、一人一人の射に寄り添うような丁寧な指導をしています。永田さんは、日々の心構えの根底には「努力しても結果は返ってこないかもしれないけど、努力しなければ絶対結果は返ってこない」という小川コーチの言葉がある、と教えてくれました。部員たちの様子を敏感に察知して前向きになる声掛けをする小川コーチ。日々高いモチベーションで練習に取り組めているのは、小川コーチの存在も大きいことがうかがえました。
弓道の魅力とみんなが経験する“壁”
今回、全国大会男子個人で優勝した佐藤さんは、水曜以外はすべて学校内や松戸市運動公園の弓道場で練習し、オフの水曜日も筋トレを欠かさないと言います。こうして毎日心身の修練を重ねる部員たち。伊藤さん・永田さんにも弓道の魅力と厳しさを聞いてみると、永田さんは「魅力は、運動ができなくても弓道はできるところですね。たとえば、走るのに自信がなくても弓道は練習できるし、大会にも出られるところ」と教えてくれましたが、実は奥田先生が弓道を始めたきっかけも、走るのが苦手で弓道をやってみたことだったようです(笑)。
伊藤さんからは、次から次へと楽しさや魅力が溢れてきました。「弓道は心技や道具など、さまざまな“手の内”があるところが魅力ですね。先人が考えた技や考え方を、弓を引きながら学べるところが好きで、奥が深いです。毎日、毎回、弓を射るたびに発見があります。あと、年齢を重ねても、弓道は続けられるのがいいです。奥田先生の弓を引く姿をみて、その美しさにびっくりします!それから、人それぞれに“射”のスタイルがあるのもおもしろいです」。奥田先生への尊敬も感じられるこのコメントに、奥田先生も顔をほころばせていました。
また、その一方で弓道の世界で誰もが経験する“壁”があるそうです。「的に当てたいという気持ちが先走ると、張っている気持ちよりも放したい気持ちが先に出てしまって、不十分だとわかっていても放してしまうという難しさですね。弓道の世界ではみんなが経験します(奥田先生)」。これを弓道界では「早気(はやけ)」と言うそうで、2人もそこが難しいところと話します。特に永田さんは“早気”がクセになってしまい、思い悩んだと言います。ですが、そこも含めて弓道の楽しいところだとも思う、と穏やかな表情を見せます。そんなそれぞれが感じる“厳しさ”も、「修練と経験を重ねて乗り越えるしかないと思っています」と佐藤さんは自身を鼓舞するように話してくれました。
いくつになっても弓道は続けていきたい
最後に、皆さんに今後の弓道人生の目標を聞いてみました。
佐藤さん:いくつになっても弓道を続けていきたいです。今は弓道1級ですが、これから審査を受けて初段、二段と段を上げていきたい。あと、2人の兄と一緒に弓道場に立ってみたいですね。
伊藤さん:僕は弓道以外に、絵を描くことが好きで、弓道も絵描きも夢中になると時間を忘れるほど。だから弓道と絵描きを両立させたいです。
永田さん:高校の部活で弓道を続けるかどうかはわかりませんが、一生、弓道を楽しんでいきたいと思います。弓道で得た礼儀や作法、思いやり、やさしさをずっと持ち続けていきたいなと思います。
弓道を愛する人たちの“心技の伝承力”
弓道の楽しいところを聞いた際、「栗中弓道部の人たちは、みんなやさしいところが好きです」と佐藤さんから満面の笑みで答えが返ってきたのが納得できるほど、このインタビュー中もずっと和やかな雰囲気が続き、仲の良さがうかがえました。
卒業生やOBとのつながりも脈々とあり、学校内の弓道場で現役生・卒業生・OB・OGみんなで練習する時間も毎週あるぐらい、栗ケ沢中には弓道を愛する人たちの“心技の伝承力”がその強さを維持する源であるとも感じました。
13年連続で全国大会に出場し続けている松戸市立栗ケ沢中学校弓道部、そして来年から高校生になる3人の今後のさらなる飛躍に注目です。
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