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高校生894名のアンケートと若者9名のインタビュー実施
リザプロ株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役:孫辰洋)が運営する教育メディア未来図は、早稲田大学デモクラシー創造研究所(東京都新宿区)および一般社団法人未来政経研究所(東京都品川区)と共同で実施した「若者の価値観変容に関する調査」を実施し、その分析レポートを公開します。
今回の調査は、2025年10月から12月に実施し高校生894名を対象としたアンケート調査(定量調査)と、19歳~24歳の若者9名を対象としたインタビュー調査(定性調査)を組み合わせた混合研究法によるもので、Z世代・α世代の価値観の変容を実証的に明らかにした研究成果です。

■調査の背景
社会全体として「物質的豊かさ(GDP)」から「精神的豊かさ(GDW)」を求める声が増え、ウェルビーイングが重視される時代を迎えています。働き方に目を向けると、日本特有の「新卒一括採用」「年功序列」「終身雇用」から、「ジョブ型採用」「実力主義」「転職ありきの就職」に変化しています。
また、AI・デジタル技術の革新によって社会はますます便利になる一方、様々な情報や価値観に日々接することで、「誰かが導き出した正解を探す」のではなく、一人一人が自ら考え、選択することが求められる時代となっています。
こうした社会変化の中で、若者の間では「ワークライフバランス」から「ライフインワーク」(生活の一部としての仕事)への移行が進み、「安定と堅実」「コスパ・タイパ」を重視しつつも、自分の仕事や存在が社会の役に立っているという「貢献感」と、自分が確実に成長しているという「成長実感」を求める傾向が強まっています。
しかし、こうした若者の価値観変容はこれまで感覚的・印象的に語られることが多く、定量・定性の両面から実証的に検証した研究は限られていました。今回の調査は、この空白を埋めるべく、早稲田大学デモクラシー創造研究所、未来政経研究所、リザプロ株式会社の3者が共同で取り組んだものです。
■調査の概要

3つのリサーチクエスチョン
本調査では、以下の3つのリサーチクエスチョン(RQ)を設定し、定性・定量の両面から検証を行いました。
– RQ1:若者は、安定、出世、物質的豊かさなどの外発的な価値観よりも、自己成長、内面的充足といった内発的な価値観を重視しているのか
– RQ2:若者は、生理的欲求・社会的欲求より、承認欲求や自己実現欲求を重視し、マズローの欲求ピラミッド(※)は逆転しているのか
– RQ3:若者は、自己超越(利他的動機×内発的動機)の欲求(※)を持っているのか

※マズローの欲求ピラミッド
マズローの欲求ピラミッド(欲求5段階説)は、心理学者アブラハム・マズローが「人間は自己実現に向かって絶えず成長する」と仮定し、人間の欲求を5つの階層に分類した理論。下位の欲求が満たされると、次の上位の欲求を求めるようになるとされている。
※自己超越欲求
心理学者アブラハム・マズローが提唱した欲求段階説の最上位(第6段階)に位置する、自分のエゴを超えて他者や社会、宇宙など大きな存在に貢献したいという利他的な欲求。
■調査結果の概要
今回の調査の結果、マズローの欲求ピラミッドは逆転しており、自己実現欲求(利己的×内発的)が強く見られる一方、自己超越欲求(利他的×内発的)にまで至っているとは言い難い結果となりました。以下に主要な知見を報告します。
RQ1に対する調査結果
アンケート調査(定量調査)の結果:
一方、アンケート調査では、生活のための「所得」や「雇用の安定」など外発的な価値観が最重要視されており、それらを前提として「自己成長」や「ビジョンや夢の実現」が重視される傾向が見られました。定量的には、外発的な価値観よりも内発的な価値観を重視しているとは言い切れない結果となっています。
インタビュー調査(定性調査)の結果:
9人中6人が、入学難易度(偏差値)や就職の強さといった「外発的動機」ではなく、学びの内容や将来キャリアとの接合、新たな出会い・可能性等の「内発的動機」によって大学進学を決定していました。「内発的動機」が育つためには、主体的に考えたり話したりできる環境や場を用意することが有効であることも明らかとなりました。
RQ2に対する調査結果
マズローの欲求階層は逆転していることが明らかに:
アンケート調査の結果、「生理的欲求」「安全の欲求」「社会的欲求」はすでに満たされている一方、「承認欲求」「自己実現欲求」「自己超越欲求」を今後満たしたいと考えていることが判明しました。約30%の高校生が「自己実現欲求」を今後最も満たしたいと回答し、約20%が「自己超越欲求」を選択しています。マズローの欲求階層は逆転しており、より高次の欲求から満たしたいと志向していることが明らかになりました。
RQ3に対する調査結果
自己実現欲求は強いが、自己超越欲求には至っていない:
インタビュー調査では、将来のキャリアにおいて社会課題の解決や世の中を変えたいといった「利他的動機」ではなく、個人が「楽しい」と感じられるか、ワークライフバランス等の「利己的動機」が重視されていました。アンケート調査でも、キャリア形成において「所得」や「雇用の安定」といった利己的×外発的動機と、「成長」「ビジョンや夢の実現」といった利己的×内発的動機が重視されており、自己超越欲求を持っているとは言い難い結果となりました。
■調査結果から見えた特徴的な傾向(レポートより抜粋)
男女差に関する知見
● 生理的欲求から自己超越欲求のすべての欲求階層において、女性の方が男性よりも「満たされている」と回答している割合が高い
● 男性よりも女性の方が高次の欲求(自己実現欲求・自己超越欲求)をより優先的に満たしたいと考える傾向がある
● 大学進学において、男性は「就職の強さ」を重視する一方、女性は「学びの内容」や「大学の雰囲気やカラー」を重視している
● 将来のキャリアにおいて、女性の方が「ビジョンや夢を実現する」「人や社会の役に立つ、感謝される」といった自己実現・自己超越を重視する傾向が見られる
【分析詳細】




年齢に関する知見
● 15~18歳でキャリア観の基本構造は大きく変わらず、年齢に関係なく「お金」や「安定」を前提としつつ「成長」や「夢・ビジョンの実現」を重視している
● 年齢が上がるにつれて「入学難易度」や「ネームバリュー」といった外発的な動機を重視する割合が増え、逆に「大学の雰囲気・カラー」や「学びの内容」などの内発的な動機が重視されなくなっている
● いずれの年齢でも「自己実現欲求」「自己超越欲求」が一貫して高く、高校生は早い段階から「生き方」や「成長」に関わる欲求を重視している
【分析詳細】



親の学歴に関する知見
● 親の学歴が高いほど、子どもが内発的動機を重視する傾向が見られるが、「お金」「安定」「自己成長」といった利己的動機は学歴に関係なく重視されている
● 親の学歴が高いほど、子どもが大学進学の際に「学びの内容」を重視し、親の学歴が低いほど「学費・奨学金」「アクセス」「入試制度」などの制度的条件が重視される
● 特に母親の学歴の方が、子どもの欲求構造との相関が強い
【分析詳細】



インタビューから見えた若者の進路選択の実態
インタビュー調査では、偏差値や大学のネームバリューよりも「自分がやりたいことができるか」「新しい可能性や出会いがあるか」「自分が研究したい分野の授業が充実しているか」など、内発的な動機から進路を決定する若者の姿が鮮明になりました。
例えば、偏差値やネームバリューよりも「外資系CAを目指したい」という明確な目標からAPUを選んだ学生、高校時代から指導を受けていた教授がいることを理由に横浜市立大学を選んだ学生など、一人一人が自分なりの軸で大学を選択しています。
また、将来のキャリアにおいては「楽しく働けること」「選択肢がある状態でいること」「ライフワークバランスが取れていること」など、利己的ではあるが内発的な動機が一貫して重視されていました。
■考察と提言
若者に自己超越が「ない」のではなく、自覚されていない
本調査の考察として最も重要な点は、若者に自己超越欲求が「ない」のではなく、自己実現欲求と自己超越欲求が接合されていないということです。自己超越は欲求として自然に生じるものではなく、行為と意味づけの往復によって自覚されるものであることが示唆されました。
インタビュー調査では、「気づいたら社会的課題から逆算して考えていた」という自然発生型の学びが確認されました。例えば、地域の衰退について仲間と議論する学生、貧困・教育格差の問題について有識者に自らアポイントをとる学生、医療を使って社会をよくしたいという動機で課外活動を実施する学生など、「楽しさや興味の延長が、結果的に利他的行動につながっている」事例がありました。

若者が自己超越を自覚するために必要な3つのアプローチ
1. 自己実現と社会的意義が両立する行為を経験すること
「楽しい・面白い」という内発的動機から始まった行為が、結果として社会と接続したときに自己超越が芽生えます。「正解のある社会貢献」ではなく、「自分の問いが社会とつながる経験」の場を大学進学前の学生に用意することが重要です。
2. 行為の社会的意味を事後的に言語化すること
若者は「社会のためにやっている」という自己認識を事後的に獲得する傾向があります。意味づけがなされない経験は利他的動機に転化しにくいことから、振り返りや言語化の機会を設けることが鍵となります。
3. 意味づけを翻訳してくれる他者との関係を持つこと
若者に必要なのは「評価者」ではなく「意味の翻訳者」です。例えば課外活動の実践の場で「それって、こういう社会的意味があるよね」と言語化してくれる存在が、自己超越の自覚を促します。
■レポートの入手方法
本分析レポートの全文は、以下のボタンよりダウンロードいただけます。
■代表者コメント
早稲田大学デモクラシー創造研究所 招聘研究員 島田光喜
「本調査は、早大デモクラシー創造研究所が蓄積してきた若者の価値観研究を、実証分析によって検証したものです。若者は変わったのではなく、社会が変わる中で合理的に適応している、これが今回の重要な示唆です。価値観の変容は断絶ではなく再編であり、その構造を可視化した点に本研究の意義があります。印象論に代わるデータに基づく世代理解を提示することで、政策形成や企業の若者戦略に資する基礎資料となることを期待しています。我々は今後もこのような形で知見の社会還元を進めて参ります。」
未来図 代表 孫辰洋
「今回の研究・調査・分析は、私たち未来図が日々の教育現場で肌で感じてきた若者の変化を、学術的に裏付ける非常に重要な取り組みです。偏差値や知名度ではなく、自分が本当に学びたいこと、自分の価値観に合った進路を選ぼうとする若者が増えていることを、データとインタビューの両面から確認できたことは大きな成果です。
また、若者の中に『自己超越』の芽は確かにあるものの、それが自覚されていないという発見は、私たち教育に関わる者にとって多くの示唆に富むものです。若者の内発的な動機を引き出し、それを社会的な意義と接続させる教育の実現に向けて、今後もこうした研究と実践を両輪で進めてまいります。」
■共同研究機関
● 早稲田大学デモクラシー創造研究所
(お問い合わせ先:https://waseda-idi.jp/)
● 一般社団法人未来政経研究所
(お問い合わせ先:https://miraipe.wixsite.com/my-site)
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