【福井県坂井市】三国湊ビジョン「単なる絵だけに 終わらせない」

坂井市役所
PR TIMES

まちづくり会議で中間報告 UDCSの宗野みなみさんに聴く 

来春に最終ビジョンを策定へ


共有する将来像はまだ仮だが、「暮らしとひらめきが奏でる川湊」に。それを三国湊に落とし込んだイメージ図

 福井県坂井市の旧市街地「三国湊」の将来ビジョンづくりに取り組む市は7月5日、同市の市商工会三国支所で、「第2回三国湊まちづくり会議」を開いた。1月からの会議やワークショップ、住民らの個別ヒアリングなどを経て、事務局から中間報告が行われ、住民が共有したい将来像として「暮らしとひらめき奏でる川湊(仮)」が提示された。事務局では、ビジョンを「ただ描いただけ」に終わらせないために、「ちゃんと現実的に実行に移せるような実行体制づくりも模索したい」としている。


三国湊の新たなビジョン策定に向け、中間報告がおこなれた「第2回三国湊まちづくり会

宗野チーフディレクター 「住民らのワークショップでの議論を踏まえイメージ」


UDCSの広報紙を手に、中間報告の重点ポイントについて説明する宗野チーフディレクター=福井県坂井市三国町のUDCS事務局

 坂井市三国湊エリアではここ数年、人口減や高齢化が進んでまちの機能が低下する一方で、2024年の北陸新幹線福井開業によって、空き家を古民家ホテルに改築するなど民間が中心となった経済活動も活発化するなど、取り巻く環境が大きく変わってきた。三国湊まちづくり会議は、こうした変化に、新たな将来像(三国湊未来ビジョン)が必要とのニーズに対応し、市などが策定に向け議論する場として設けた。今年1月末の「まちづくり会議」をキックオフとし、その後2月と4月に住民を中心にワークショップを開催、ビジョンの方向性や考え方について議論してきた。
 中間報告は、来春、2026年度末でのビジョン策定に向けて、三国湊に事務局を置く一般社団法人「アーバンデザインセンター坂井(UDCS)」がまとめ、この日参加した住民やまちづくり団体、市役所関係者ら約50人に説明した。中間報告で紹介された将来像のキャッチフレーズ「暮らしとひらめき奏でる川湊(仮)」について、どのような経過で、このフレーズとなったのか、ビジョンに盛り込まれる材料や要素、その実行体制をどうするのか、会場で発表を行ったUDCSの宗野みなみ・チーフディレクターに主なポイントを聞いた。

「川湊のキャッチフレーズは、3つキーワードを拠り所に…」

―中間報告は、前段で“住民ら全員で共有したいこと”をうたい、「三国湊の将来像」「三国湊全体で取り組むテーマ」「エリアの個性を活かしたビジョン」の3部構成となかなかボリュームのある内容になっています。どうやら、将来像として示したキャッチフレーズ「暮らしとひらめき奏でる川湊」が全容を表わしているようです。このフレーズはどのように、できあがったのか?
宗野 あくまでも現時点ではまだ仮称ですが、これまで2月と4月で2回のワークショップ(それぞれ約30人参加)で出てきた将来像や三国湊の課題、こんなまちになってほしい…などの意見を集約しています。加えて昨年8月からはUDCS職員と市職員が手分けし、賑わいづくりに貢献しているまちのプレーヤーや、各種団体のリーダーら50人ほどにヒアリングしており、その中身も加味して、考えたフレーズです。
 資料にあるように、このフレーズの拠り所となるキーワードが3つあって、1つ目の「何気なく見える暮らしの豊かさ」とは、地元民には普通に思える…例えば、新鮮でおいしい海鮮など多彩な食材、海に沈むきれいな夕陽をよく見ることができるなど、暮らしの中で何気ない豊かさのこと。2番目の「やってみたい!を応援できるまちへ」は、最近、若い世代のまちづくりの参加も増えているように、三国湊を応援したい、という人は受け入れ、応援しようというムードをまち全体でつくっていこうという意味。3番目の「三国らしさのはじまり川湊」は、まちの発展を歴史的にみても、三国湊の繁栄の基盤は川湊にあることはみなさんの共通認識だと思うので、ストレートに「川湊」という言い方をしてみました。
 これら3つのキーワードの要素を含め、みんなの思い描く三国湊の姿を一つの絵に落とし込んだのが、これ(1ページ掲載の鳥観図)ですが、住民も含め三国湊の多くの人に共有してもらい、このビジョンに描かれた将来像を目標に進んでいくことが大事だと思っています。また、よく言われるのは、ビジョンだけつくって、「はいそれで終わり」というケースがまちづくりの場合、よくあるのですが、今回はきちんと、どう実現に繋げていくのか、というところまでビジョンに位置づけたいと考えています。

「計画実現へ 5つの目標をタテ軸に、空間・仕組みづくりをヨコ軸に」

―それを実現するために、「三国湊全体で取り組むテーマ」の中で、5つの重点目標を掲げていますね。町並み、空き家活用、居場所、暮らし・発信…など、これはそのビジョンを実現するための“手法”ですか?
宗野 手法というか、私たちは目標と戦略と設定しています。これも、ワークショップなどでの課題出しをベースに抽出したら、これらのテーマになった感じ。ただ、目標だけでは実際に何をするのか分かりづらいので、それを実現するために、5つの重点目標のタテ軸に、さらに「空間づくり戦略」と「仕組みづくり戦略」という2つのヨコ軸も考えてみました。

5つの重点目標とそれを実現するために考えた「空間づくり」、「仕組みづくり」の戦略

 中間報告では、この5つのうち「町並み」についてのみ、例としてイメージを提示しました。例えばひと言で「町並み」と言っても、三国湊でも例えば、昭和のイメージがある三国駅前と昔の面持ちや情緒が漂う出村エリアでは、町並みが全く異なるので、エリアごとでの町並みづくりの方針が必要とうたっていますし、それが「空間づくり」の戦略なら、一方で、古い「町並み」を残すために、三国湊で守るべき建物や空間のモニタニングをして、関係者が気づかないうちに解体されてしまうのを未然に防ごうとか、歴史的な建造物の価値を失わないための補助制度の整備など…それらは「仕組みづくり」の戦略として取り組むという考え方を盛り込んでいます。
 それぞれ5つのテーマで目標と戦略を構想したいので、今後、8月には「町並み」をテーマに、10月は「居場所」について、12月は「空き家活用」のテーマでそれぞれワークショップを開いて、今後、中身を煮詰めていきます。

「個性、特色ある5つのエリアについて、それぞれイメージ図(将来像)も作る」

ーさらに3つ目に、「エリアごとの個性を活かしたビジョン」でもエリア別の将来像に触れていますが、今ほど説明してもらった「5つの重点テーマ」の1つ「町並み」の中でも、エリア別を強調していますが、この意味合いは?
宗野 もちろん両方をリンクさせるつもりです。三国湊とひと口に言っても、いろんな顔を持った街(エリア)が寄せ集まっているので、それぞれ街の個性を活かした方がいい、ということでポイントというか、方針を打ち出しています。大きくは(1)えちぜん鉄道三国駅・駅前通り周辺(2)きたまえ通り・上ハ町通り周辺(3)三國神社周辺(4)二の部周辺(5)出村…5つのエリアで、例えば、今回は一例として、三国駅・駅前通りを「三国らしさが混ざり合うこれからの玄関口」という将来像を提示しました。
 三国湊への導入部というか観光客にとっては玄関口ですが、一方で、中高校生から高齢の大人たちという住民にとっては、たまり場というか自分たちの居場所でもあってほしい、との要望も強い。さらに九頭竜川や龍翔博物館と言った三国湊のシンボルが見渡せる空間でもある。これらを今後、イメージ図に落とし込んでいきたい。ですから、5つのエリアには本当に特色というか、個性があるので、それを十分に活かした将来像を打ち出さないといけない、と考えています。


三国湊の5つのエリアを分け、それぞれの個性や特色を活かしながら将来像を設定していく。

 ―最後に、来年度末のビジョン策定までのざっくりとしたスケジュールを教えてください。
宗野  はい、この中間報告案をたたき台として、8月、10月、12月と計3回の住民ワークショップを開いて、町並み保存のあり方や居場所づくり、交通などについて議論していきます。加えて、まちづくりのプレーヤーの人たちや関係団体の方々のヒアリングを重ねていき、ビジョン策定を煮詰めていきたい。並行して、ビジョンが出来上がったあと、それをどう実現していくかの話し合いも進めていきたい。すでに今も始めていますが、“実行部隊”となる体制づくりや、資金づくりをどうするか、まちづくりファンドのようなものが出来ないか…などもこの9月以降に本格検討していきたいと思っています。最終的なビジョン策定はやはり来年の3月ごろで、理想を言えば、それと同時に新体制が発足できたら…と考えています。

第2回まちづくり会議では、長野県松本市の園田さんがゲスト講演

三の丸エリアの「エリアプラットフォーム」 三国湊の参考事例として注目


長野県松本市で三の丸エリアに、10の界隈にプロジェクトが立ち上がり、行政と連携しながらまちづくりに取り組む園田聡さん
 第2回三国湊まちづくり会議では、将来ビジョンの中間報告に続いて、ゲストレクチャーも行われた。講師は長野県松本市でまちづくりに取り組む民間会社「ハートビートプラン」の園田聡・代表取締役。園田さんは「誰かに語りたくなる暮らし」と題して講演、同社が松本市とともに取り組む「松本市・松本三の丸エリアでのチャレンジ」について解説した。それによると、三の丸エリアには公民連携によるエリアプラットフォームが誕生、10の「界隈(かいわい)」ごとにエリアの特色を生かしたまちづくり活動(プロジェクト)が動き始めており、民間主体のプラットフォームが「企画立案・実行・継続」を担当し、行政の所管課事務局を務め、交通、文化観光、教育などの担当課が「政策連動・規制緩和」で連携していく仕組みが出来上がっている。
 三国湊でのまちづくり活動が、これまで、三国會所などの民間団体、まちづくり推進協議会、商工会など団体が主体となって動くことが多いのに対し、松本市三の丸エリアのプロジェクトを推進している主体は、活動の思いを共有するメンバーが最低でも3人という小さい組織となっている。園田さんは「まちのためにこんな活動をやってみたい、というメンバーが最低限3人集まれば、それは“共益”と捉えていいのではないか。三の丸の場合、既成の団体の方だったり、商店主だったり、建設会社の方だったり、移住してきた方もいる。でも大勢でやろうとすると方向性1つにするのも、なかなか難しい面もある、できるところから、緩い感じの組織でスタートしてみて、最初のうちは僕らも行政との間に入ったりしたが、いざ動き出すとしっかりしている。だれもが『まちのために役に立ちたい』とは考えていて、そういう大きな思いだけ共有できていればいいのではないか」と語り、三国湊の今後のまちづくりにも参考になるような事例となっていた。

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