映画化作品に「ここは退屈迎えに来て」(主演・橋本愛さん)や「アズミ・ハルコは行方不明」(主演・蒼井優さん)などがある人気作家、山内マリコさん。
ファッション好き・雑誌好きな山内さんが2018年から2019年にかけてJJで連載していたエッセイが、「The Young Women’s Handbook~女の子、どう生きる?」として一冊の本にまとめられました。連載時にも多くの読者から反響があったこの本には、20代の女性へおねえさんとしての山内さんが伝えたいことが詰まっています。
今回のインタビューでは、「20代はSNSとどう付き合う?」について伺いました。
山内マリコ
1980年生まれ。2012年「ここは退屈迎えに来て」でデビュー。主な著作に「選んだ孤独はよい孤独」(河出書房新社)、『山内マリコの美術館は一人で行く派展』(講談社)、「あたしたちよくやってる」(幻冬舎)など。「あのこは貴族」(集英社文庫)の映画化を控えている。ファッションにも造詣が深く、他エッセイに「買い物とわたし」(文春文庫)などがある。
「20代の頃は“変わっている”と言われるのが嬉しかった」
―「The Young Women’s Handbook~女の子、どう生きる?」では、山内さんが20代の頃に感じていたモヤモヤや葛藤が、かなり赤裸々に書かれています。“20代の頃は雑誌の中の同世代の人気者を半分アンチの気持ちで追いかけていた”という山内さんに、もし2020年に20代だったらどうSNSと付き合っていたか、伺いたいです。
『このところ、芸能人の子がインスタライブをよくやってますよね。そこに「かわいい!」などの称賛コメントをつけている人たちのリアクションを見ると、最近の若い子は同世代の人気者に対してすごく無邪気で、昔のわたしみたいにひねくれてないのかな? と思ったりしました。一方で、もしかすると、コメントやリアクション自体に、誰かに見られている意識が働いているのかもしれないなと。大人はSNSを匿名でやってる人が多くて、そのぶん汚い本性丸出しで困ったものですが(笑)、逆に実名でやってる若い子は、SNSでも常に、人の視線に縛られてたりするんじゃないかな。
インスタ映えでいろんな流行が生まれたけど、自分のインスタも素敵にしておかなきゃっていう焦りが、モチベーションにもなってますよね。もし自分が今20代で、インスタの画面がどういう感じかで、どういう人間かを査定されてしまう世界にいるなら……第一線からは降りてる気がします。第一線というのは、インスタ映え案件をズラリとそろえた、キラッキラのインスタを目指す人たちの戦場みたいなところ。そこを目指した競い合いは、わたしにとってはストレスでしかないな。
若い頃は、「変わってるね」って言われるのがうれしかったんです。年をとると、変わってると人から言われることに臆病になるけど、当時は褒め言葉だと思ってたし、今でもわたしは褒め言葉としてつかってます。だから例えば、「インスタやってないなんて変わってる」って言われても、密かに喜んでいた気もするんです。「変わってる」って人に言われることを恐れなくていいのは、若い子の特権。なので、もしSNSで消耗してるなら、すすんで変わってる道をとってもいいんじゃないかな。自分の本当に大事な部分を守ることが最優先だと思う。』
「自分で自分を肯定して、思いきり大事にして、守ってあげて」
―もしそれでも、インスタをしたい場合はどうしたらいいでしょうか。
『ネガティブな義務感ではなく、ポジティブな気持ちでインスタやりたいと思うなら、自分の好きなものでフィードを埋めまくるのがいちばん! もともとインスタって、そういうのびのびしたツールでしたよね。みんなにとってのキラキラを並べて、正解不正解に怯えるのではなくて、もっと個人的な、自分にとってのキラキラを追求する場だった。
自分に正直に、本当に好きなものだけを集める。そうやって積み重ねたフィードは、その人の本当の存在証明になるし、個性を作っていく場所になりえますよね。人の目や評価を気にした偽りのフィード作りが虚しいと思うなら、鍵アカでも裏アカでもいいから、思う存分、自分を出せる場所を確保する。そこで自分に正直に、本当に好きなもの、好きな写真だけを集めたら、おのずと素敵なフィードができあがっている気がします。それで自信が出て、誰かに見てもらいたいと思えるようになったら、公開すればいい。誰かのためじゃなくて、ほかでもない自分のために、自分の「好き」を集めるのが大事。』
―「The Young Women’s Handbook」の中でも、“偏愛って素晴らしい!”というパートがありました。
『偏愛って、主語が「わたし」なんですよね。わたしが一方的に愛しているもの。インスタをそういうもので埋めれば、自分がどういう人なのか可視化されて、楽しくなりそうですよね。20代ってまだまだ、自分のアイデンティティがよくわからないし、将来なにをしたいのかわからなくて当然だと思うんです。まずは自分が好きなものを見つけることが、その手がかりになるんじゃないかな。どんなくだらないものでも、意味のないこだわりでも、好きと思えるものを知ることが、自分を知ることにつながる。
反対に、主語が「他者」になると、苦しくなりますよね。誰かに好かれるとか、愛されるって、自分が受け身なので。そこをあんまり目指しすぎると、自分がなくなってしまう。20代の女性はルッキズムにさらされているし、メンタルのバランスも崩しやすい。若さって、無敵でもあるけど、重荷でもあるから。わたしが若い時は、すぐ現実に当たり負けして、とにかく疲れてました。20代はキラキラしてて当然、人生のいちばんいい時期、みたいなプレッシャーもあったし、自分への期待が空回りして、きつかったな。
今から思えば20代は、実社会の水に体を馴らしている段階。だからこそ、誰かに承認されることを待ってキリキリするより、自分で自分を肯定して、思いきり大事にして、守ってあげる。20代はそのやり方を学ぶ時間ってことで、充分なんじゃないかな。SNSは毒にも薬にもなるけど、もし毒になってるなら、思い切って断つなり、距離をとっていい。無理せず、自分を甘やかしていいと思います。』
―年上の女性が“私みたいにキラキラした大人になりたかったら、こうすべき”という本はよくあるけれど、山内さんのように優しく妹を認めるようなエッセイはこれまでなかったかなと思います。なんとなくモヤモヤするJJ世代に、ぜひ読んでほしい一冊です。
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5月27日に発売になった山内マリコさんの新著「The Young Women’s Handbook~女の子、どう生きる?」。装丁デザインも山内さんのこだわりが詰まった、インテリアとしても可愛い一冊です。
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