長年人気の職業であり続けているアナウンサー。倍率も高く、実際に入社試験に合格して活躍している人がどのように面接を乗り越えたのかは気になるところ。今回JJでは、2022年の春にフジテレビに入社したばかりの松﨑涼佳アナウンサーに就活の話を聞きました。キツいときを乗り越えたエピソードは必見です。
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コロナ禍がきっかけで真剣に考え始めた就職活動
–まずアナウンサーを志したきっかけを教えてください
大学の部活動の先輩でアナウンサーに内定された方がいて、その人に「アナウンサーも受けてみたら?」と言われたのがきっかけです。インターンシップにも申し込みましたし、「合ってなければ面接で落ちるから、騙されたと思って受けてみたら」と、勧められるままにアナウンススクールも受けました。たしかにそれまで就職について深く考えていなかったので、自分の方向性を確かめられるかも、と思って受験しましたが、運良くアナウンススクールに合格することができて、そのときに本格的にアナウンサーになりたい、と思うようになりました。
–就職活動を意識し始めたのはいつごろでしたか?
3年生の初め頃でしょうか…? 実際に就職活動を終えたばかりの4年生の先輩にいろいろなアドバイスをもらえるうちに始めよう、と思ったのを覚えています。それまで私の大学生活は部活動一色だったのですが、コロナ禍によって活動がままならなくなり、日常が一変した時期でもありました。突然やることがなくなってしまい、限られた大学生活を無駄にしないためにもなにか新しいことを始めなきゃ、という焦りもあったように思います。
-もともとアナウンサーのお仕事に興味はあったのですか?
大学で体育会競争部に所属していたので、駅伝の際には各局のアナウンサーの方が取材にいらっしゃったり、生で仕事に触れる機会がありました。それもあって、漠然とした憧れというよりは、もう少し身近なものとして考えていたような気がします。
自分のギャップを表現したES
-実際に就職活動が始まってからはどういった面をアピールしていたのですか?
すい肩書きがありました。そこはフル活用しようと。まずは自分のキャッチフレーズとして「早稲田のナイチンゲール」というものを作り、ナイチンゲールというワードから想像できる「献身力」と、体育会ならではの「元気さ」を伝えられるようなエピソードを用意しました。
ただ、その話だけでは乗り切れないだろうとも思っていたので、体育会のイメージを裏切ることのできるネタも考えました。例えば、小学4年生で知って以来興味を持っている『源氏物語』の英国版を読み、その感想や日本語原作との比較をノートに書いていたことを話したり。分かりやすい特徴はアピールしつつ、自分の持っているいろいろな側面を伝えられるように心がけました。
–ES(エントリーシート)の写真や書いた内容について教えてください
ESの写真は当時テレビ局に内定していた先輩や、アナウンサー就活をしていた先輩から立ち方や服装など、写真映りのアドバイスをいただき試行錯誤しながら撮影しました。ESの写真は避けて通れないお題なので、自分がどういう風にカメラに映るのかについて研究してみるのもいいと思います。
内容に関しては、自己PRや最初の質問項目ではキャッチーな肩書きとその説明の文章を書いてキャラづけをしていました。ただ、それだけでは深掘りができないなと思ったので、どんな人かという軸は残しつつも、ギャップのある面も書いて多角的に見せられるようにしていました。
いち早くやるべきは客観的に自分を理解すること
–ちなみに、面接で意識していたことはありますか?
自分の中でルーティンを持つことです。ほとんどの面接で、最初に自己PRを求められると思います。私は毎回同じ自己PRを話すことで、その日の調子や緊張度合いを確かめていました。繰り返し面接の場で話していると、話すことには慣れてくるので、面接官の方の反応にも気が回るようになり、その手応えによって面接終盤で話すことも変化させるようにしていました。同じことを同じタイミングで話すことができるのは自己PRだけだと思うので、そこでその日のコンディションを確かめるのはオススメです。
-就職活動中に苦労したこと、もっとやっておけばよかったなと思うことはありますか?
4年生の先輩がいらっしゃるうちに! と就活をスタートしたものの、人に頼ることがあまり得意ではなかったので、一人で考え込んでしまうことが多々ありました。フジテレビの面接も、受けるたびに「落ちた…」と思って駅のトイレで号泣。周りの人に頼ったり、悔しさや難しさを共有できていたら、もう少し楽に就職活動を送れたかもしれません。一方で、そういう悔しさをできる限り次に活かそうと、そのときの気持ちや反省点はすべてノートに書き出していました。それがあったからこそ、面接のたびに少しずつでも成長できたような気がします。
もっと早くやっておけばよかったと思うのは、「自分を客観的に知る」ことです。面接の対策をするうえで、自分一人ではなかなか客観的に自分を見つめることはできないと思います。なので、人から見た自分の印象や評価を早い段階で知っておけたら良かったな、と振り返って感じています。
–ご自身のなかで、フジテレビに入社できた理由はなんだと考えていますか?
受かった理由を客観的に判断するのは難しいのですが、先ほども話したように「体育会の学生トレーナー出身の元気な人」というキャッチーな部分と、実は英国版『源氏物語』を読み込む意外な一面。そんなふうに自分を立体的に表現できたことかなと思います。
–フジテレビにはどういった方が多いのでしょうか?
個性豊かな方が多いと思います。もし就活生のなかにフジテレビらしい人がいるとしたら、「自分はこういうキャラだ」と自分で気づけて、なおかつそれをアピールできる人かもしれません。
怒涛の日々だけど時間が足りないくらいの充実感
–ご自身で“ここがアナウンサーらしい”と思うところはありますか?
経験したことがないモノやコトでも、それをやってみたら自分がどんな反応をするのか、自分にはどこまでできるのか? そう考えて挑戦してみるのが好きなところです。振り返ってみると、アナウンサー就活を始めたのも、それが未知の体験だったから、という理由もあるような気がします。
-実際にアナウンサーになられて約半年、いかがですか?
思ったようにできなかったり難しいことの方が多いですが、苦労することは覚悟のうえで目指してきた場所なので、この大変さも楽しんで、自分がそれをどうやってクリアしていくのかを見てみたいなと思っています。
–入社してから印象に残っているお仕事はありますか?
7月から週末のスポーツニュース番組「S-PARK」でフィールドキャスターを担当しているのですが、最初のロケやスタジオは足が震えるほど緊張していました。いま録画を見返しても、顔がすごくこわばっているなと思います(笑)。さらに、インタビューでは小学生からベテランの専門家の先生まで、いろんなスペシャリストの方にお会いできるというのも新しい経験で印象に残っています。毎日ものすごく濃い経験をしているなという実感があって、怒涛の日々ですが時間が足りないくらい充実しています。
–今後の目標ややりたいことがあれば教えてください
今は「新人だから」と大目に見てもらっている部分もあると思います。なのでまずは、松﨑なら大丈夫、と任せていただけるようなアナウンサーになることが大きな目標のひとつです。私は就職活動のとき「自分以外のものを輝かせたい」という思いを持っていました。アナウンサーという仕事は、言葉を通してアスリートや出演者を輝かせることができるところが魅力。ゆくゆくは、言葉だけでなく文章でも取材対象を輝かせることができたらな…と思っています。挑戦できる機会があれば、ぜひやってみたい仕事のひとつです。
–最後に、アナウンサーを目指している就活生の皆さんにメッセージをお願いします!
就職活動を始めると、自分よりも魅力的に見える人がいたり、個性が強い人に出会って自信をなくしたりすることもあると思います。ただ、そんなときこそ、自分の中の魅力を探してみると正解が見つかるかもしれません。自分で自分の機嫌を取れる人が最終的には勝てるはず。頑張ってください!
新人アナウンサーとして活躍する松﨑アナウンサーの就活のお話、いかがでしたか? これからアナウンサー試験を受験する人に参考になったのではないでしょうか。次回は岸本理沙アナウンサーにお話を伺いします。
写真/沼尾翔平 ヘアメイク/小松胡桃<ROI> 取材/中村有希 編集/岩谷 大