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東出昌大&三浦貴大 18キロの増量…Winny事件が映画化、撮影裏話を語る

“ネット史上最大の事件”を描いた話題の映画『Winny』が3月10日より全国の映画館で公開されています。今作でW主演を飾ったのが、俳優・東出昌大さんと三浦貴大さんです。東出さんは、革新的なファイル共有ソフト「Winny」の開発者である金子勇を演じ、三浦さんは、逮捕された金子の弁護を引き受けた弁護士・壇俊光を演じました。事実に基づく作品であるため、2人は徹底的な調査と準備をして役を作り上げていったそうです。

(写真左から)

東出昌大 1988年2月1日生まれ 埼玉県出身 2012年に映画『桐島、部活やめるってよ』で俳優デビューし、同作で毎日映画コンクールなど、数々の新人賞を受賞する。NHK連続テレビ小説の『あまちゃん』や『ごちそうさん』、大河ドラマ『花燃ゆ』、『コンフィデンスマンJP』シリーズなど、多数の話題作に出演する。

三浦貴大 1985年11月10日生まれ 東京都出身 2010年に映画『RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語』で俳優デビュー。近年の出演作品に映画『流浪の月』『キングダム2 遥かなる大地へ』、NHK連続テレビ小説『エール』やドラマ『エルピス−希望、あるいは災い−』など出演している。

映画『Winny』あらすじ

2002年、天才的プログラマー・⾦⼦勇(東出昌⼤)は、ソフト「Winny」を開発。試⽤版を「2ちゃんねる」に公開しました。「Winny」は、使用者同⼠が直接データのやりとりができるシステムで、瞬く間にシェアを拡大していきます。しかし、その裏で⼤量の映画やゲーム、⾳楽などが違法アップロードされ、ダウンロードする若者も続出。社会問題へと発展していきます。違法コピーした者たちが次々に逮捕されていくなか、開発者の⾦⼦も著作権法違反幇助の容疑をかけられ、2004年に逮捕されてしまいます。

サイバー犯罪に詳しい弁護⼠・壇俊光(三浦貴⼤)は、⾦⼦逮捕の報道を受けて、急遽弁護を引き受けることに。⾦⼦と共に裁判で警察の逮捕の不当性を主張するも、第⼀審では有罪判決を下されてしまいます。

「壇先生の役作りは身振り手振りまで完コピを目指しました」(三浦)

映画『Winny』は実在の人物をモデルにしたストーリーということで、裁判記録や当時の報道、関係者へのインタビューなど、緻密な取材をもとに物語を作り上げています。見た目も、本人に近づけるように東出さんは体重を18キロ増量をおこなったといいます。この作品を作り上げていく過程を2人に対談形式で振り返っていただきました。

三浦 クランクインしたのは、めちゃくちゃ暑い昨年の夏の盛りでしたね。

東出 締め切った体育館が裁判所のセットになっていて、インの1ヶ月前くらいから模擬裁判をやったんですよね。

三浦 役作りについては、壇先生が超元気なので、そのままの先生をお手本にしゃべり方や身振り手振りなどを完コピしようと臨みました。

東出 壇先生が面白い方なんですよね。壇先生と三浦さんと僕の3人で飯を食いに行ったときのことが忘れられないいんです。先生が三浦さんに「明日、地球が滅びるとしたら、壇俊光は最後の晩餐に何を食べると思う?」って質問したんです。

三浦 「寿司ですかね?それとも、すき焼き?」なんて答えてみたら、先生は「いや、違う」ときっぱり。

東出 「明日、地球が滅びるっていうのに飯なんて食ってる場合じゃない。壇俊光は最後まで諦めない男なんだよ!」って言い出してね。「めんどくさい男じゃね〜か!」って思いましたよね(笑)。

三浦 ものすごくフランクに付き合ってくださいましたね(笑)。

 

「三浦さんとは戦友であり、兄弟であり、ときに恋人のようにも見える空気感の芝居をしたかった」(東出)

東出 壇先生は「裁判中に相手を煽ったりすることで有名」と自身でおっしゃるほど、弁護士業界のなかでも好戦的な人物じゃないですか。対して、三浦さんはふだんから穏やかですし、怒らない。どちらかというと平和的な人という印象なんです。だから模擬裁判のときのお芝居を見たときは壇先生が乗り移ったように見えましたね。目線の配り方だったり、発言の仕方だったり、完璧に先生を形態模写されていたので。

三浦 東出さんとお芝居でやりとりをしていると、壇先生と金子さんもこんな感じで話していたのかな、という思いは広がりましたよね。東出さんは演じてみて、金子さんと自分が似ているなと感じた部分はありましたか?

東出 金子さんは逮捕されて大変なのに、どこかのんきに構えているところがあって。そういうところは似てるんじゃないかなと思いますね。壇先生と金子さんのやりとりと言えば、好きな戦闘機のことで喧々諤々議論を交わすシーンは印象的でしたね。お互いマニアックな気質があって、好きなことについてはムキになって語り合う。そこには、誰も割り込めないふたりだけの世界があったんだろうなと思います。実際に、壇先生は金子さんのことを「1歳年上の弟」のような存在とクランクイン前に話していましたし。だから、三浦さんとも、戦友であり、親友であり、兄弟であり、ときには恋人のようにも見える、その空気感は作りたいと思っていましたね。

「先輩たちの芝居が完成されすぎていて『ひそかに1ヶ月くらい稽古してたんじゃないか』と疑いました(笑)」(東出)

今作は、主演のふたりの周りを固める俳優陣も豪華! 吉岡秀隆さん、吹越満さん、渡辺いっけいさん、皆川猿時さん、和田正人さんなど、実力派が勢揃いしており、再現度の高い人物描写だけでなく、掛け合いの緊迫感も見どころになっています。

東出 金子さんと壇先生の親密さは、先ほど話した通りなので、三浦さんともクランクイン前にふたりでご飯を食べたり、お酒を飲んだり、そういう機会を設けていたんですよ。そうして準備をしていたからこそ、僕らは自然なやりとりができたのですが、その点、先輩方はすごいなと思いましたね。

三浦 そうそう。現場に来たときに完成した役をドカンと演じてしまいますからね。警察サイドの渡辺いっけいさんと、弁護士サイドの吹越満さんが相見えるシーンなんて、台本を読んで感じたもの以上の緊迫感がありましたよね。

東出 「段取り(リハーサル)から、コレもうカメラ回せんじゃん!」っていう完成度でしたからね。完成された舞台のお芝居を見ているかのようでした。「先輩たち、じつは撮影前から1ヶ月くらい稽古してたんじゃないか」と疑うほどだったんですよ(笑)

三浦 そういう舞台裏を知ると、ちょっと映画の楽しみ方の幅が広がるかもしれませんね。

映画『Winny』は、逮捕されたソフトウェア開発者と弁護士の間に生まれた友情や、警察・検察との攻防などが描かれた作品なのですが、「メディアの報道の在り方」に対する問いかけも大きなテーマになっています。インタビュー後編では、芸能界の一線で活躍するふたりに、メディアとの関わり方について伺います。

公開情報

映画『Winny』は3月10日より全国ロードショ

監督・脚本:松本優作

出演:東出昌大 三浦貴大、皆川猿時 和田正人 木竜麻生 池田大 金子大地 阿部進之介 渋川清彦 田村泰二郎 渡辺いっけい / 吉田羊 吹越満 吉岡秀隆

 

撮影/木村哲夫 取材・文/小石原悠介

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