『こっち向いてよ向井くん』(日本テレビ)公式サイトより
さあ、2023年夏ドラマが出揃いました! 「初回見逃しちゃった」「一応録画はしてるけど観ようかどうか迷っている」という人に朗報です。新しいクールが始まると1日中テレビの前に張りついているドラマオタクの2人、コラムニスト小林久乃と元JJ編集長イマイズミが「絶対見るべき!」とか「ちょっとイマイチだった…」という判定をしました。TVerやサブスクでも追っかけ視聴できるから、今からでも間に合いますよ!
発表!この夏絶対見るべきドラマランキング
元JJ編集長イマイズミ(以下イマ):いよいよ7月期ドラマも中盤に突入しましたねー。
小林久乃(以下小林):この時期はホント寝る暇ないのに、地上波に加えて『離婚しようよ』とか『御手洗家、炎上する』とかNetflixオリジナルの良質なドラマもたくさんあって死にそうです(笑)。
イマ:私も『悪霊』『刑事ロク 最後の心理戦』『D.P.-脱走兵追跡官-2』と話題の韓国ドラマが目白押しで熱中症じゃないのに倒れそう。
小林:では、共倒れになる前に早速お互いのベスト5を発表しましょうか!
【小林久乃が選ぶ2023夏ドラマBEST5】
①こっち向いてよ向井くん(日本テレビ系列)
②ばらかもん(フジテレビ系列)
③真夏のシンデレラ(フジテレビ系列)
④最高の教師 1年後、私は生徒に■された(日本テレビ系列)
⑤トリリオンゲーム(TBS系列)
【イマイズミが選ぶ2023夏ドラマBEST5】
①こっち向いてよ向井くん
②最高の教師 1年後、私は生徒に■された
③ハヤブサ消防団(テレビ朝日系列)
④VIVANT(TBS系列)
⑤真夏のシンデレラ
満足度No.1は振られ続ける令和の寅さん『こっち向いてよ向井くん』
イマ:おお、『こっち向いてよ向井くん』がともに1位ですね!
小林:このドラマ、本当に物語として良くできていて、ちゃんと男女両方の気持ちがわかるよう、最後に答え合わせしてくれるのよね。
イマ:男子目線のA面だけ見ると「なんで? 向井くんかわいそう!」ってなるけど、女子目線のB面で「なるほど、そりゃイヤだわ」ってなる(笑)。
小林:毎回勘違いして振られるって、まさに令和の寅さん。赤楚くんが本当にモテない人に見えてくるから不思議。
イマ:しかし、実際あのルックスでモテないとかありますかね?
小林:逆にルックスがいいと、幼いころから周りが何でもやってくれるから、ボーッとして気遣いができない大人になりがちですよ。なまじ顔がいいぶん、ガッカリ度も高いっていうか。
イマ:これ、最後まで振られ続けるんですかね?
小林:ラスボス的に元カノ美和子(生田絵梨花)が絡んでくると思うから、そこは見どころですね。
イマ:あと、助演の波瑠がいい味だしていますよね。
小林:そもそも主演クラスなのに、脇役らしい輝きかたをしているのはさすが! 平行軸で進む環田(市原隼人)との絡みもストーリーに奥行きを出している。
イマ:原作漫画もまだ連載中だからドラマなりの結末が楽しみですね。
トンデモ展開が目白押しのトレンディードラマが令和の世に爆誕
イマ:そして、ともにランキング入りしたのは『真夏のシンデレラ』ですね。これは「トレンディードラマ、令和に降臨!」って感じで、毎秒ツッコミながら見ています(笑)。
小林:トレンディードラマが流行っていた頃って、スマホもSNSもなくて、ファッションも音楽も遊ぶ場所も全部ドラマから発信されていた。ドラマで主役が着ていた服とかすぐ売り切れたし、とにかくみんな月9に夢中だったもん。
イマ:懐かしい! それにしてもストーリーがハチャメチャすぎません? 第1話でライフセーバーの宗佑(水上恒司)が海に落ちた理沙(仁村紗和)を助けるんですけど、泳ぎながら人工呼吸していて「んなバカな!」って声が出た(笑)。
小林:夏海(森七菜)も散々な目にあってる。匠(神尾楓珠)に振り回されまくっているし、家族はポンコツで迷惑かけまくりだし…。あと、時間の流れもおかしくて、夕方で日が陰ってきたなと思ったら、次のシーンでは太陽がさんさんと照ってたり(笑)。でもね、昔のトレンディドラマってそんな感じだったよね?
イマ:そうですね。話の辻褄なんか合ってないし、まさかの偶然が重なりすぎるし。
小林:それが楽しいの! 劇伴も当時のドラマっぽくて、チープな感じがちょうどいい。
イマ:脚本家の市東さやかさんは92年生まれだから、トレンディドラマ全盛期は知らないはずなのに、われわれ世代のツボを正確に突いてきます(笑)。
小林:X(旧Twitter)でリアタイ視聴のコメント見るのも面白い。みんな文句言いながらも結局楽しんでいるよね。
イマ:これからこの8人がどうなっていくか生ぬるく見守りましょう。
小林:この後、健人(間宮祥太朗)の元カノ出てくるはず!
イマ:そんなキャストいましたっけ?
小林:完全に私の予想です。昔のトレンディードラマなら、絶対にー、そういう展開になる(笑)。
『3年A組』との絡みに期待!学園ドラマの最新形
イマ:続いては『最高の教師』。これ、1話目から松岡茉優と芦田愛菜の演技合戦に圧倒されました。
小林:1話ずつ生徒の問題をあぶり出していくパターンの学園ドラマだけど、正面突破じゃなくて、外堀から埋めていって解決の道を示していくのが、もはや刑事ドラマみたい。
イマ:昔みたいに、殴り合って泣いて最後めでたしめでたしにはならないのが令和ですよね。SNSもあるし、闇が深くなっていってるんでしょうね。
小林:絵面的にスゴイのは、あのこども店長が芦田愛菜ちゃんをイジメてること(笑)。
イマ:ラスボス加藤清史郎(相良琉偉役)ですね。クライマックスは相良vs.九条(松岡茉優)になるんですかね。
小林:今後の展開で、『3年A組-今から皆さんは、人質です-』(以下『3年A組』略/日本テレビ系列/2019年)とこのドラマが重なってくる気がするんだよね。『ドラゴン桜2』(TBS系列/2021年)でもあったように前作のキャスト登場。
イマ:菅田将暉はすでに主題歌で重なっていますね。
小林:『3年A組』は2019年1月クールのドラマで、卒業生はちょうど就活している大学生くらいだから、たとえばバイト先の先輩とか家庭教師とかで絡んでほしいな。
イマ:『3年A組』のキャストは全員売れっ子になっていますね。永野芽郁、森七菜、福原遥、今田美桜、神尾楓珠、萩原利久…って、あれ? 同じクールのドラマに出てるから無理じゃないですか?(笑)
小林:そこをなんとか!(笑) 今後はこのドラマで『3年A組』とは違う、いま伝えたいメッセージが何なのかを期待したいです。
癒しの『ばらかもん』、主役の成長を愛でる『トリリオンゲーム』、おじさん大渋滞の『ハヤブサ消防団』、予算使いすぎ『VIVANT』
イマ:では、それぞれの推しドラマについて熱く語りましょう。
小林:私は『ばらかもん』を2位にあげたけど、水10のイケメン対決(同時間に『こっち向いてよ向井くん』が放送)はドローです。
イマ:これは都会で傷ついた主人公が田舎で再生するパターンのドラマですね。
小林:私も一応物書きなので、清舟(杉野遥亮)の書けない苦しみとか、作品に対する周囲の評価とか、ホント共感しかない。あと、五島の景色は美しいし、島の人たちのセリフがやたら沁みるんです…。
イマ:小林さん、なんか疲れてませんか?(笑)。でも、島の人たちがあんまり方言使ってないのが気になります。いまBSプレミアで『あまちゃん』(NHK総合/2013年)の再放送やってるんですけど、東北弁バリバリで、やっぱり田舎の話に方言は欠かせないスパイスだなと。
小林:まあ、そこは置いといても、とにかく杉野くんですよ! 『恋です!~ヤンキー君と白状ガール』(日本テレビ系列/2021年)あたりから演技が良くなってきて、『僕の姉ちゃん』(テレビ東京系列/2022年)でさらに良くなって。そうして、やっとつかんだプライムタイムのドラマ主演。我が子の成長を見ているようで本当に嬉しい。
イマ:ストーリー関係ないじゃないですか(笑)。同じく田舎が舞台のドラマで、私が推しているのは『ハヤブサ消防団』です。生瀬勝久、橋本じゅん、岡部たかし、梶原善といったベテランバイプレーヤーたちが躍動しているのを見るのが楽しい。初回の火消しシーンは長回しで撮っているけど、2回でOK出たらしいです。本当に息が合ってる。あ、この人たちはきちんと方言使っていますよ!(笑)
小林:たしかにストーリーは面白いし、やっぱり池井戸潤ってドラマ化しやすいんだろうね。出ている人全員が怪しい。私思うんだけど、編集者の中山田(山本耕史)が犯人じゃない?
イマ:え? 東京に住んでるから無理じゃない?
小林:いやいや、何でも遠隔操作できる時代だから(笑)。
イマ:そういう謎解きはこのドラマの醍醐味ですね。私は入れなかったけど、小林さんの5位は『トリリオンゲーム』ですね。
小林:正直、1話目は「ん?」ってなったけど、2話目くらいから目黒蓮くん(天王寺陽〈ハル〉役)がしっくりしてきた。やっぱりジャニーズさんのタレントって吸収力と伸びしろがスゴいと思う。
イマ:「はい、この振り付け覚えて!」って言われて10分くらいで完璧に踊れちゃう人たちですから。鍛え方が違いますよね。
小林:そうそう。過去にリメイクした『クロサギ』(TBS系列/2022年)の平野紫耀くんも中盤くらいからどんどん良くなっていったのよ。それまで平野くんって演技上手なイメージなかったんだけど、それが覆ったドラマでした。山Pの時より好きかも。
イマ:小林さんはとにかく、イケメンが成長する姿を見るのが好きなんですね(笑)。
小林:『silent』(フジテレビ系列/2022年)の佐倉想と全然違う役も軽々こなしちゃう目黒くんはやっぱり華があるなと。あと主題歌の『Dangerholic』(Snow Man)もドラマにすごく合っている。
イマ:私が4位にあげたのは『VIVANT』。製作費が1話1億円っていわれてますが、とにかくお金がかかってる感がスゴイ!
小林:私は良さがよくわからなかったな…。
イマ:昨今、物価高が続いて、テレビ局も制作費が削られまくっているなかで、このスケールの大きさと俳優陣の豪華さはあっぱれですよ。「ああ、娯楽大作を観たな~」って気持ちになります。
小林:最近は、アマプラやNetflix、ディズニープラスの方が予算あるし、面白いドラマが増えてきたところに、地上波でもここまでできるんだぞ!っていう、意地を見せるきっかけにはなりましたよね。
イマ:しかし、この後の日曜劇場どうするんですかね?
小林:そこは『渡る世間は鬼ばかり』(TBS系列/1990年)でしょ(笑)。あ、そもそも放送枠が違うか。
イマ:観たいですね、モンゴルロケの渡鬼(笑)。
小林:そろそろストーリーも中盤に入ってきた夏ドラマ。さらに盛り上がっていくか、それとも失速していくか…? 楽しみは続きますね!
小林久乃(こばやし・ひさの)コラムニスト、編集者。正々堂々の独身。中学生から地上波ドラマを愛して30年以上、筋金入りのオタク。好きが高じてついには『ベスト・オブ・平成ドラマ!』(青春出版社刊)を上梓した。ラブストーリーが好きで、特に禁断の恋がテーマとなると視聴熱が俄然、盛り上がる。公式HPはhttps://hisano-kobayashi.themedia.jp
元JJ編集長イマイズミ 女性誌『CLASSY.』『JJ』の編集長を歴任。1クールの地上波ドラマを全録画するようになったのは、編集長になった13年ほど前から。「仕事で新しい俳優、タレントさんを覚えるため」というのが理由だったけど、見事に大ハマり。ホームドラマとラブコメ好き。韓国ドラマもやや中毒。
イラスト/lala nitta