『いちばんすきな花』(フジテレビ)公式ホームページより
例年、クリスマスなど年末イベントに向けて盛り上がっていく秋ドラマは、各局力の入った作品が目白押し。ドラマオタクのコラムニスト・小林久乃と元JJ編集長イマイズミが選ぶ、絶対見るべき秋ドラマを月曜日から順にピックアップしました。あなたの気になるドラマはありますか?
木曜日は群像劇、復讐劇、家族劇とバラエティー豊かなラインナップ
元JJ編集長イマイズミ(以下、イマ):前回に続いて木曜日ですが、個人的期待作ナンバーワンは『いちばんすきな花』(フジテレビ系)です。①『silent』(2022年/フジテレビ系)の村瀬プロデューサーと脚本家・生方美久さんコンビ ②多部未華子、松下洸平、神尾楓珠、今田美桜という旬の俳優4人が主演 ③テーマは“男女間に友情は成立するか?”という3つの要素で、絶対に面白くなるしかないドラマ。
小林久乃(以下、小林):あー、期待しすぎると危ないなー。物事って条件が整いすぎるとだいたいダメになること多くないですか? ファースト写真集が売れたから、もっと売れるよう万全の準備をしたセカンド写真集はイマイチだった的な。
イマ:たしかに、それは業界あるあるですね。それをふまえて初回を観た印象ですが、「あれ? なにこれ?」でした…。
小林:ほら見たことか!(笑)
イマ:偶然が都合よく起きるところ、状況や心情を会話で説明しすぎなところ、エピソードがありきたりなところ…。
小林:不満が出てくる出てくる(笑)。どこか坂元裕二(脚本家)の影響を感じますね、こういう会話劇のドラマって。
イマ:『silent』のように、もっと丁寧に時間をかけて4人の悩みを描いてほしかったなー。
小林:そもそもこのドラマは『silent2』じゃないですからね。私はそこまで期待してなかったけど、ああいう群像劇や恋愛のこじらせ話は好きだし、次回から面白くなりそうだと思っています。
イマ:では、心を平穏にして観ることにします…。木曜日は他にあります?
小林:『ブラックファミリア~新堂家の復讐~』(読売テレビ・日本テレビ系)は観る予定。『ブラックリベンジ』(2017年)、『ブラックスキャンダル』(2018年)に続くブラックシリーズ第3弾です。自殺した娘の真相に迫るために家族全員でなりすまして復讐計画を実行するというストーリー。
イマ:あー、目当ては森崎ウィンですよね?
小林;うっ、よくわかりましたね(笑)。たしかにそれが一番の理由ですけど、こういういかにも深夜ドラマっぽいのが好きなんですよ。若干、森崎くんの髪色が不安ですが…。
イマ:私は『ゆりあ先生の赤い糸』(テレビ朝日系)に期待しています。手塚治虫文化賞でマンガ大賞を受賞した原作漫画をちらっと読んだんですけど、昭和の小説っぽい雰囲気で面白かった。
小林:はあ…、また漫画原作ですか。これだけドラマが増えるとオリジナル脚本が間に合わないっていう事情もわかりますけど、ちょっと安易すぎませんか?
イマ:ゼロから作るドラマって、脚本はもちろん、俳優のキャスティングやスポンサー集めも大変ですからね。
小林:ドラマを観る楽しみってオリジナル脚本にあると思うんですよ。次回はどうなるんだろうというワクワク感。原作があると結末もわかっちゃうし、原作通りに進むかどうかが気になって没入できない。
イマ:そういう不満というか、危機感があるから、フジテレビのヤングシナリオ大賞みたいに、各局が新人脚本家のコンテストを始めているんでしょうね。
小林:ドラマファンとしてはその流れ、大大大賛成です!…ちょっと熱くなっていました。で、なんでしたっけ?
イマ:いや、もういいです(笑)。続いて金曜日にいきましょう。
金曜日の本命は映画化もされた大ヒットドラマの第2弾!
小林:金曜日も期待してるのが多いんですが、一押しは『きのう何食べた2』(テレビ東京系)です。大河主演クラスの俳優二人がいちゃいちゃしてるのを観られるドラマ、貴重ですよ!
イマ:もう、二人の息の合い方が尋常じゃないですよね。このセリフ、アドリブじゃないかな?っていうシーンがいくつもあります。そして、オープニングテーマが大橋トリオ、エンディングがBialystocksと音楽もオシャレ。
小林:だんだん年を取ってきて、中高年ならではの悩みが出てくるのもリアルでいいですね。もう、ただの飯テロドラマではありません。
イマ:金曜日は『うちの弁護士は手がかかる』(フジテレビ系)に期待してたんですが、ちょっと不満が残る初回でした。リーガルドラマのわりには強引なストーリー運びがあったり、主演の平手友梨奈の演技が一本調子だったり…。
小林:ムロ(ツヨシ)さんはのびのびやってますね。腹膜炎で入院したのがちょっと心配ですが。
イマ:大河やりながら連ドラ主演はやっぱりきつかったんですかね…。
小林:あとは『フェルマーの料理』(TBS系)も外せない。
イマ:えっと、これも「月刊少年マガジン」に連載中の漫画が原作ですよ?
小林:いいの、いいの!(笑)。 数学×料理っていう組み合わせも面白いし、なんといっても主演が志尊淳と高橋文哉って、もう眼福すぎる!
イマ:ドラマ選びの基準がブレませんねー(笑)。高橋くんはフレンチのシェフになりたくて調理師免許取ったぐらいの料理好きだし、志尊くんは朝ドラ『らんまん』(NHK総合)に続いての出演で役者として乗りに乗ってる時期。というわけで主演二人のビジュアルだけじゃなく作品としても期待できますね。
小林:そして、もうひとついいですか?
イマ:え、金曜日まだあるんですか?
小林:相葉(雅紀)くん主演の『今日からヒットマン』(テレビ朝日系)は楽しみにしてますよ! 平凡なサラリーマンがある日突然殺し屋になるアクションコメディーです。
イマ:原作漫画は「漫画ゴラク」連載だし、めちゃめちゃB級感漂ってますけど…。
小林:相葉くんは『和田家の男たち』(2021年/テレビ朝日系)の和田優役がすごく良かったんですよ。初の当たり役じゃないかな?
イマ:まあまあキャリアあるのに「初」って(笑)。今回は、『和田家』に出てた佐々木蔵之介、段田安則、小池栄子っていう安心の脇役がいないけど、大丈夫ですかね。
小林:ここは踏ん張りどころですが、連ドラ初主演の『マイガール』(2009年/テレビ朝日系)から応援しているので頑張ってほしいです!
土曜日は不倫ドラマか飯テロドラマの二択
イマ:さて、土曜日は一転、あんま観たいドラマがないんですよねー。あえてあげるとしたら北村有起哉主演の『たそがれ優作』(BSテレビ東京系)です。50代のバツイチ脇役俳優が毎回マドンナたちに惑わされながら飲み歩くというストーリー。原作は『深夜食堂』の安倍夜郎です。
小林:テレ東の新しい飯ドラですね。『孤独のグルメ』(2012年/テレビ東京系)と同じく、実際のお店と料理が出てくるところも、のんべえにはたまらないポイント!
イマ:とにかく料理が美味しそうなんですよねー、さすがテレ東。坂井真紀(行きつけのバー『ともしび』のママ・茜役)とのやりとりもほっこりします。小林さんは土曜日なんかありました?
小林:そろそろ不倫ドラマが観たいなーと思ってチェックしてたのが『単身花日』(テレビ朝日系)です。単身赴任先で初恋の人に会ってドロドロの四角関係になるというストーリー。
イマ:主演の重岡大毅くん、最近はドラマに映画に活躍中ですよね。
小林:不倫ドラマはリアリティーがあるかどうかで没入具合も変わってくるので、そこはじっくりと見極めたいです。
社会現象にもなった『VIVANT』の後の日曜劇場は果たして…
イマ:久しぶりに日本中が沸いたドラマ『VIVANT』(2023年/TBS系)の後の日曜劇場は『下剋上球児』(TBS系)。鈴木亮平演じる、野球一筋だった社会科教師が弱小野球部を立て直すという、これぞ日曜劇場という内容です。
小林:出た、役者バカ・鈴木亮平! この人が座長ならもう安心ですよ。日曜劇場は『TOKYO MER ~走る緊急救命室~』(2021年/TBS系)以来、2年ぶりの主演。
イマ:脚本は『最愛』(2021年/TBS系)の奥寺佐渡子さんというところも期待大です。あと、球児役の俳優たちは半年かけてオーディションしたらしいのでリアルなプレーシーンも楽しみ。
小林:本気度が高いですよね。『ROOKIES』(2008年/TBS系)を超える野球ドラマになる可能性があります。
イマ:スケール感は全然違うけど、『セクシー田中さん』(日本テレビ系)も面白そうじゃないですか?
小林:木南晴夏、連ドラ初主演ですよね。
イマ:『勇者ヨシヒコと魔王の城』(2011年/テレビ東京系)の時から思ってたんですけど、彼女はコメディーがすごく上手。今回も、地味なアラフォーOLと妖艶なベリーダンサーのギャップで笑わせてくれそう。
小林:共演のめるる(生見愛瑠)もいいですよね。可愛いし、演技も上手だし。女優やりながら、ちゃんとバラエティー番組に出ているのも好感が持てます。
イマ:女優一本でやるのでバラエティーは卒業しますって人、ダサいですよね。バラエティーをバカにしてんのかって。
小林:誰のこと言ってるんですか(笑)。あと、日曜日は『たとえあなたを忘れても』(テレビ朝日系)も観ますよ。
イマ:こちらも堀田真由が連ドラ初主演ですね。『大奥』(2023年/NHK総合)の徳川家光役でカッコよく啖呵を切る姿を見て、一瞬で惚れました。
小林:夢を失い貧困に陥っているピアノ講師と記憶障害を抱える青年のラブストーリーですが、相手役は萩原利久くん。萩原くんは『真夏のシンデレラ』(2023年/フジテレビ系)に続いての連ドラ出演です。
イマ:この二人は4回目の共演らしいですよ。
小林:息の合った演技が見られると思います。あと、浅野妙子さんのオリジナル脚本というところも楽しみ。
イマ:浅野さん脚本の『恋なんて、本気でやってどうするの?』(2022年/関西テレビ・フジテレビ系)は、正直「?」って感じだったので、私はあんまり期待してないです。
小林:オリジナル脚本というところに価値があるんですよ!
イマ:この対談であげたドラマ19本のうち半分以上は漫画原作ですからね。
小林:そういう意味でも頑張ってほしいですけど、まあ、面白いドラマが観られればなんでもいいんです(笑)。
イマ:それは同意です!
小林久乃(こばやし・ひさの)コラムニスト、編集者。正々堂々の独身。中学生から地上波ドラマを愛して30年以上、筋金入りのオタク。好きが高じてついには『ベスト・オブ・平成ドラマ!』(青春出版社刊)を上梓した。ラブストーリーが好きで、特に禁断の恋がテーマとなると視聴熱が俄然、盛り上がる。公式HPはhttps://hisano-kobayashi.themedia.jp
元JJ編集長イマイズミ 女性誌『CLASSY.』『JJ』の編集長を歴任。1クールの地上波ドラマを全録画するようになったのは、編集長になった13年ほど前から。「仕事で新しい俳優、タレントさんを覚えるため」というのが理由だったけど、見事に大ハマり。ホームドラマとラブコメ好き。韓国ドラマもやや中毒。
イラスト/lala nitta