経済が下り坂だろうが、自分がどう生きるのか決めるのは自分自身。
気づけばキラキラした後輩に囲まれ、まだまだ社会のルーキーだという気持ちに、焦りにも似た感情が入り混じりはじめる25歳。ただでさえ考えたり、迷ったりすることの多いこの時期に、政治や経済に希望はおろか興味さえ持てないというのはある意味自然な流れだろう。
かくいう僕も、今年で25歳を迎えた若者のひとり。17歳のときに『LIKTEN』というカルチャー雑誌をつくってから、文章を書いたり雑誌をつくったりする仕事を続けて、大学4年のときに自分の会社をつくった。会社は今年の夏に創立1周年を迎えたばかりで、いまだ社員は自分ひとり。普段は中目黒にある外資系企業に間借りをさせてもらいながら仕事をしている。
これまでの話のとおり、25歳の将来に暗い影を落とす、日本の社会情勢……、なんて書き進めたりしたら、すっかり暗い話になってしまいがちだけど、僕が社会人ルーキーとして心がけていることは今ある環境のなかで、いかに楽しく、気分良く生活できるか?ということだ。こうして活字にしてみると、なんだかのんびり過ごしているようなイメージだけれど、言い換えればそれは、どんな時代やシステム、そしてどんな人間にも、自分が楽しいと思えること、心地よいと思える時間を奪わせはしない!という固い意思でもある。
カルヴィン・トムキンズの著作に『優雅な生活が最高の復讐である』というタイトルのエッセイ集がある。復讐というほど大げさなものではないけれど、なにか理不尽なことがあったとき僕は必ずこのタイトルを思い出すようにしている。「優雅な生活こそ最高の復讐である」。
経済が下り坂だろうが、自分がどう生きるか決めるのは自分自身。そして、どんな理不尽な出来事やメッセージに対しても、最も効果的な復讐は、なによりも自分自身が楽しく、心地よく、そして優雅に生活することであって、その理不尽に対処しようとしたり、抗うことではないのだ。
小田明志
おだあかし 1991年生まれ、25歳。東京都出身。編集者。高校在学中、17歳のときにカルチャー雑誌『LIKTEN』を創刊。一躍話題に。現在は、サッカー選手のでないサッカーマガジン、『OFF TH
E BALL』発行人兼編集長を務める。
Illustration/小田明志
JASRAC 出
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