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「戦うことはやめない方がいい」。その言葉に秘めたkemioの想い――

初の著書『ウチら棺桶まで永遠のランウェイ』が、15 万部の大ヒットとなったkemio さん。今回は、マイノリティについての考えや、夢についても語ってくれました。

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第一回 けみおが語る「ぼくがアメリカに行った理由」

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朝起きて5億円が置いてあることってないじゃないですか

著書『ウチら棺桶まで永遠のランウェイ』でも書かれていましたが、アメリカに行って選挙に対する見方は変わりましたか?

僕がちょうど引っ越したタイミングが2016年10月くらいで、大統領選挙の真っ只中だったんですね。僕は「なんか盛り上がってる〜」くらいの感覚だったんですけど、現地のコと遊んでいても、普通に政治とか選挙の話をするんですよ。

僕が日本にいたときに友達と話すのって、友達のゴシップとかセールがどうのとか、芸能人がどうとかそういうことばかりで政治の「せ」の字も出てこなかったんですね。

だからそこでまず「お〜」って思ったのと、僕がこの人に投票するのはどうしてだとか意見を持っているのは、同世代で今まで見たことがない光景だったので驚きました。

アメリカのそういう現状を目の当たりにして、日本でも若者の政治への意識を高めていこうっていう気持ちになりましたか?

それは変わりましたね。前回の参議院選挙のとき、僕はアメリカにいて投票できないって思ってたんです。でもそれは僕の勉強でもそれは僕の勉強不足で、アメリカにいてもきちんと手続きをすれば投票できるっていうのを当日知って。

で、前々から〝選挙のことをたくさんの人に発信してほしいです〞っていうメッセージをいただいていたんですけど、やっぱり矛盾があるじゃないですか。

「なんでテメェが行かねぇのに、行け行けって言うんだよ」って思われるから、ちょっとそれはできないなって思いつつ、言っちゃったんです。「皆さん選挙に行った方がいいんじゃないですか?」って。

その反響はどうでしたか?

「行ってきま〜す」って言ってた人が多いイメージはあります。やっぱり行った方がいいと思います、普通に。今選挙って言われても、なかなか想像つかないじゃないですか。ルールがどうとかつまんないですし、話の内容も全然可愛くないし。だけど自分たちがもう少し大人になって、子どもが生まれたり、自分の生活を持ち始めたときに手遅れにならないように、今のうちから選挙権を持っている人たちが意思表明することは大切なんじゃないかなって思います。

これも本にまつわるお話ですが、〝マイノリティ〞という言葉や存在は今後どうなっていくと思いますか?

え〜〜〜、マイノリティってどんな意味でしたっけ? 少数派? 少数派の人たちが今後どうなっていくか? え〜〜〜? なんだろうな? でも温かい方向には向かっていると思います。

まぁ僕が見ている側の光景でしかないので、悩んでいる方とか日々戦っている方もまだまだ多くいると思うんですけど、僕たちの世代だけで語ってしまうと、みんなそういうことに対して理解があるというか、もはや普通というか。そういう温度を感じますね。

〝マイノリティ〞に対して、日本とアメリカで「違うなぁ」と思うことはありま
すか?

アメリカの人はまず発言をしますよね。「これは違う」っていう問題に対して、物怖じせず声を上げる印象はあります、非常に。

日本でもそういう傾向になりつつあると思うけど、やっぱりアメリカっていろんな人種の人がいるし、だからこそあらゆる意見がぶつかり合える環境なのかなって思いますね。

 

JJは18〜24歳がターゲットで、「好きなことを仕事にしたい」と思っている人も多いです。そういう意味でkemioさんに憧れる人も多いと思うんですけど、ke
mioさん自身、好きなことを仕事にしてみてどうですか?

え〜、好きなことを仕事にしてみてですか? なんだろう…、ご飯は食べられてます(笑)。うーん、難しい質問ですね。

でも正直に言うと好きなことだけで仕事ができてる人っていないと思うんですね、僕。っていうのは、「あの人、好きなことを仕事にしてるな」って見える人でも、ときには自分の好きと違ったことにも向き合ってると思うから。

だからあまり「好きなことだけで仕事する」ことにこだわらない方がいいんじゃないかな。

夢や目標を追いかけていくと、壁にぶち当たることもあります。どうやって乗り越えたらいいと思いますか?

まぁ戦うことはやめない方がいいなと思います。どんな状況においても。朝起きて、左に5億円が置いてあることって絶対にないじゃないですか。

ごめんなさい、たとえがぶっ飛んでるというか、意味わかんなすぎかも。

たとえ今、自分が求めているような環境じゃなかったとしても、希望というか自分がやりたいことは絶対に持ち続けて、どんな状況も乗り越えるって言ったらハードルが高くなるので、今は通過点なだけ、ただ道を歩いてるだけっていう感じでがんばったらいいんじゃないかな。僕はいつもそう思うようにしています。

逆に夢がないことが悩みっていう人もいるじゃないですか。そういうのを見つける方法ってありますか?

僕も具体的な夢はないですね、今も「何になるんだろう」って思う瞬間がたまにあって。でも、元々人を笑わせるのが好きとか、エンターテインメントのお仕事が好きっていうのはずっと軸にある。

それが最終的に歌手になるのか、俳優になるのか、タレントになるのかっていうのは自分でも分からない。アメリカに引っ越すなんて思ってもなかったけど引っ越しちゃったし。

ぶっちゃけ、1カ月後のことだってなにがあるかわかんないじゃないですか。その中で自分がやめちゃいけないなって思っているのが、気になってることや好きなこと、ちょっとでもやってみたいなって思ったことは手をつけること。その作業はやっておいた方がいいと思っています。

 

これからの時代、kemioさんが考える「自分らしさ」って何だと思いますか?

自分らしさって言葉、難しいですよね。僕も撮影とかで「kemioくんらしくお願い」って言われたときに自分でもわかんないなって。それで監督の方に「こういうことやってみて」って言われると、こういうのが僕らしいんだって気付くことが多いんですね。だからなんというか、自分を大切にしてくれる方が増えていけば、自分らしさも見つけやすくなるのかな。

割と客観的なことが「自分らしい」に繋がったりするということですか?

はい、多分。

本の中で「何者かにならなくていい」という言葉が印象的でした。JJ世代のコたちって何者かになりたくてSNSで発信しているコも多いと思うんですけど、kemioさんもそう思ったことはありますか?

僕は中学生のときに、Lady Gagaに出会ったんですね。大好きで学校でも真似っこしてたりして。ある日友達に「え、Lady Gagaになりたいの?」って言われたんです。

僕の中でそういう認識ってなくて、あくまでもインスピレーションを万引きしてるって感じだったんです。完全にその人になるっていうよりは、「こういうのいいじゃん、よこしなよ」って感覚。

そのときにぶっちゃけ、僕がLady Gagaになったらシンプルに僕の位置情報が消えるって思ったんです。誰かに憧れて何者かになろうとしたら、自分が消えるってそこで気付きましたね。

あとLady Gagaがやってることは、もちろん僕にはできないですけど、僕がやってることはLady Gagaにはできないって考えるようになりました。

基本的に「誰々になりたい」っていう憧れを持つのって、超いいことだと思うんです。インスピレーションを受けて、自分でそれをカスタマイズして、どんどん輝いていけばいいから。

でも100パーその人になるのは自分の位置情報が消えるから、あんまりよくないんじゃないかなって思います。

これから年を重ねるに連れて楽しみなことってありますか?

30歳になるのがすごく楽しみですね。「24歳のクソガキが」って思われるかもしれないけど、そちらはちょっと置いといて。

僕、自分より年上の方とおしゃべりするのがすごく楽しかったり、惹かれることが多いんです。自分の知らないことを知っていたりすると、教えて教えてって思っちゃう瞬間があって。

30歳って、「ばばあじゃん、じじいじゃん」って馬鹿にしてる人も多いと思うんですけど、20歳で成人して、そこからの10年で経験したことを武器にして戦える年齢でもあると思うら、30歳になって一通り打ち倒すのが楽しみです。

30歳までに、どんなことを武器として身に付けたいですか?

僕、恋愛経験がなさすぎるので、30歳で敗北するのかなってことは言えます。恋愛については武器がなさすぎて、1試合目でアウトかもしれないですね、はい。

では最後に、kemioさんと同世代のJJ世代にメッセージを!

タピオカを飲みすぎるのはいけないと思います。胃にタイヤみたいのが溜まる気がします。だから、タピオカはやめたほうがいいかもですね。あとは体を労って30歳、40歳までがんばりましょう!

こんなんでいいですか?(笑)

撮影/川﨑一貴<MOUSTACHE> ヘアメーク/高山ジュン<nude.> スタイリスト/西村哲也 取材/坂本結香 編集/岩谷 大
※掲載の情報はJJ12月号を再構成したものです。


 

1995年10月16日生まれ。東京都出身。193cm。高校時代にVineの投稿で注目を集める。2016年末からは生活拠点をアメリカ・ロサンゼルスに。モデル、歌手、YouTube、Instagram、Twitterなどで発信を行うクリエーター。著書に『ウチら棺桶まで永遠のランウェイ』(KADOKAWA)がある。

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