Around20 を中心に支持を拡大している、『HIGH(er) magazine』。編集長のharu. さんが雑誌を創刊したのは、なんと大学1年生の時。そんなharu.さんの、自分の枠を決めない生き方についてお話を伺いました。
1995年生まれ、24歳。小学校時代と高校時代をドイツで過ごした後、2015年に東京藝術大学に入学。同年HIGH(er)magazineを創刊し、「同世代の人と一緒に考える場を作る」をコンセプトに企画・制作・編集に携わる。大学を卒業後は、アーティストマネジメントとコンテンツプロデュースを行う株式会社HUGを設立し、取締役に就任。
どこかで感じたことのある感情が、誰かのストーリーと繋がればいいなって
いろんな取材で聞かれていると思うのですが、簡単に自己紹介をしていただけますか?
1995年生まれで、今24歳です。大学に入学するまでは、ドイツと日本のカルチャーを行き来しながら、ティーン時代を過ごしました。
大学に入ったと同時にHIGH(er) magazine(以下ハイアー)を創刊して、今年の春に大学を卒業し、今までやってきた制作やプロデュースの仕事を会社化しようと思って会社を立ち上げて今に至る、という感じです。
haru. さんはハイアーで一躍有名になったと思うのですが、初めて雑誌を作ったのは高校時代なんですよね?
そうです。通っていたドイツの高校に「1年間かけてなにしてもいいから、その成果を発表する」っていうプロジェクトがあったんです。
ずっと柔道をしているコがいたり、ペットボトルのキャップを集めまくって寄付しているコがいたり…。そこで私は自分を紹介できるものが作りたくて、ZINE(※個人で制作した冊子のこと)を作ったのがはじまりです。
家にプリンタがあって、ペンとホチキスもあったので、これならできるかもって。
そもそもどうやってZINEの存在を知ったんですか?
たしかどこかで読んだことがあって、「ZINE ってなに?」みたいな本を日本から取り寄せた気がします。「へぇ、こういうのがあるんだ」って。
その時はとにかく必死で…。言葉の壁もあるし、高校生って多感な時期でもあるじゃないですか。自分の殻に閉じこもって「自分ってなんなんだろう」ってずっと考えていて、なにか捌け口が欲しかったんです。
だからZINEと出会って「なにかよくわからないけど作る!」って感じで。近所の文房具屋さんに紙の断裁機を買いに行ったりして、ZINEが完成したときに、やっと自分の中から脱皮できた感覚でしたね。
はじめて作ったZINE はどんな内容だったんですか?
当時の悩みをイラストと本当に少ない文章で表現したって感じでした。
当時自分がどれだけ言葉を学んでも自分の言葉として機能しないというか、言葉への不信感みたいなものがあって。だからできるだけ文章を書きたくなくて、ほとんど絵で一冊を作りました。
その言葉への不信感みたいなものって、日本とドイツを行き来する生活だから生まれたものだったり?
そうですね。子供の時から日本語もドイツ語もちゃんとできない自分がいたっていうか…。日本語はだんだん習得していったんですけど、小学校の時はドイツにいたから漢字もまったく書けなくて。
だから言葉っていうものが、コミュニケーションを取る道具として弱かったんです。そんな思いもあって、そうじゃないところで自分を表現したいって思ったのかな。
その感覚って今ではどうですか?
今は言葉、大好きですね。大人になるにつれて、その伝わらなさも含めての道具なんだなって思えたし、今は自分なりに結構操れるようになったというか、ある時から楽しいと思えるようになったので。今はすごく好きですね。
それはドイツと日本の両方を経験したことで、haru. さん自身が変わったってことですよね?
日本とドイツを行き来したことで、国単位や性別では自分を縛れないってある時気付いたんです。
言葉が通じない国で生活をしたり、自分を表現するためにZINE を作ったりする中で、自分と違うなにかを排除したり、「みんなと同じじゃなきゃいけない」みたいな考えがなくなっていったので、それはすごく良かったなって思っています。
大学に入学してすぐにハイアーを創刊したのは、そういう経験からくるメッセージや伝えたいことがあったからなんですか?
実はハイアーって誰かに届けたいとか、強いメッセージが先にあったわけではないんです。高校生の時にZINE を作ったことで外の世界と繋がれた感覚があって。
それを失いたくない気持ちで自分のためにハイアーを作っただけだと思うんですよ。埋められない孤独みたいなものがあって、だけどモノ作りをしている時だけはその孤独が埋められる。
だから自分の作った作品が評価されることよりも、「ハイアーを読んで私もZINE 作ってみました」みたいな声が届く方がうれしくて。自分と向き合って孤独から脱却する方法を私と同じような心境や境遇のコとシェアできたことのほうが私にとっては価値があるというか。
そんな自分のために作っているハイアーを制作するうえで、これだけは譲れないっていうものはなんですか?
似たような答えになってしまうかもしれないけど、自分が欲しているモノを作るっていうことかな。
もちろん何かを作って外に出す時点で、自然と受け取り手のことはどこかで考えているんですけど、考えすぎないようにもしているんです。
私が他の人と違うっていう感覚はなくて、むしろ「私が抱えている感情と同じような気持ちを、どこかで他人も感じているはずだ」って思いながら作っているんです。
全く同じ経験はしていなくても、どこかで感じたことのある感情が、ハイアーを通じて自分のストーリーと繋がればいいなって。自分のために作ってるからものすごくパーソナルなことを書くこともあるんですけど、題材が自分と密着しているからこそ誰かに届くものになるのかなって思っていて。
なので、自分のために自分の欲しているモノを作ることで、共感してくれる人がいたら良いなって感じなんですよね。
撮影/花盛友里 取材/大塚悠貴 編集/岩谷 大
※掲載の情報はJJ12月号を再構成したものです。
明日配信の第2回では、haru.さんが「自分の居場所の見つけ方」もお話ししてくれます!