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ミレニアル世代のharu.さんが、紙で雑誌を作り続ける理由

Around20 を中心に支持を拡大している、『HIGH(er) magazine』。編集長のharu. さんが雑誌を創刊したのは、なんと大学1年生の時。デジタルネイティブと言われる世代の彼女が、紙の雑誌にこだわり続けるワケとは…。

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haru.さんが語る「自分を表現する」ということ

1995年生まれ、24歳。小学校時代と高校時代をドイツで過ごした後、2015年に東京藝術大学に入学。同年HIGH(er)magazineを創刊し、「同世代の人と一緒に考える場を作る」をコンセプトに企画・制作・編集に携わる。大学を卒業後は、アーティストマネジメントとコンテンツプロデュースを行う株式会社HUGを設立し、取締役に就任。

リンクはシェアできるけど、なんか実体がない…

今24歳のharu. さんが、ハイアーをデジタルではなく紙で出版することにこだわる理由も聞きたいなと思ったんです。

最新号でいうと、1200部刷っているんですが、物理的に1200人以上には届かないんです。だけど想像以上に多くの反響をいただいていて。

1200部っていう限られたものが誰かの手から手に渡って広がった結果だとしたらすごくうれしいし、例えば家のトイレに置いてあって、それを家族みんなが読んで世代を超えて広がってくれたらそれもうれしい。

それってやっぱりモノが持つ強さかなって思います。リンクはシェアできるけどなんか実体がないし、シェアしたフィードは会話でどんどん塗り替えられちゃったりして。でもモノを渡される経験ってすごく残るじゃないですか。そういう思いもあって紙で作ってますね。

今はハイアーのほかに会社も経営されているんですよね。

はい。アーティストのマネジメントやプロデュース、それとクライアントワークで実際に制作にも携わっていて、ディレクションやデザイン、文章を書いたりもしつつ、営業にも行っています。

ハイアーと会社での仕事、なにが一番違いますか?

そうですね…。ハイアーって今では元々いたメンバーも誰もいなくて、完全に自分のために作っているっていう意識が強くて。

逆に会社で受けている仕事は、「受取り手は誰なのか」「クライアントはどう思うかな」っていうことをすごく考えますね。それが一番の違いかな。

でも商業的な部分とは一線を画していたハイアーがあるのに、なぜ会社を設立しようと思ったんですか?

自分の思想とか「こんな世界になっていったらいいな」っていうのは、自分一人じゃ何も実現できないことに気が付いたんです。

いろんな人とひとつのものを作り上げていくことでそれが大きなアウトプットとなって、伝わる人の輪も広がっていくと思っているので。

さっきハイアーにはそんなにメッセージを込めていないと話したのですが、そういうメッセージを伝えたり「こんな世界になっていくといいね」っていう部分は、会社のクライアントワークで大人たちと一緒に話しながら作っていくっていう感覚です。

haru. さんの考える「こんな世界になっていくといいね」って、どんな世界ですか?

私みたいなコが、私のように世界と繋がれるものを探求したり、そういう時間と自由が保証されるようになればいいなと思います。

みんなが平等で生きやすい社会って言うのは簡単なんですけど、実際それを実現できるのはいつになるんだろうって感じですよね。だから、集団に馴染めなくても自分で居場所を作っている姿を私が見せていくことで、「そういう生き方もいいんじゃない?」って言える立場になりたいなって。

王道からは外れてるけど、居心地良さそうだなって人になりたいと思っていて。「自分にとって、生きやすいことはなんだろう」っていうのを考える自由があることに気が付いてもらうことが、自分の役割だと思ってます。

新たに立ち上げた会社とハイアーを軸に活躍していくharu. さんの今後の展望を教えてください。

会社でいうと、今所属しているアーティストたちの「やりたい」っていう気持ちを具体的な形にして、それを持続可能な形にするのが私の仕事であり目標ですね。

どこからともなく現れた突拍子もないコたちが何かを実現していく姿って、「こんな生き方もあっていいんだ」ってこれからの世代の人たちに思わせる勇気になると思うんです。だから「突拍子がなくていいじゃないですか!」っていうのをもっと言いたいですね。

これだけ変化が早くて不確実な世の中で、“これだけが正しい”みたいな王道のルートに沿って生きる必要はないと思うんです。

突拍子もなく生きていけることを保証するというか、言うのは簡単だけど、実際に突拍子もなく生きている例をたくさん作っていきたいです。ハイアーはそういうことを一切意識せずに、自分のためのモノ作りの場として残していきたいなと思っています。

最後に、haru. さんなりの「自分の居場所」の見つけ方を教えてください。

思い立ったら、何かしてみるっていうのはいいことだと思います。私は最近「飛びたい」と思ったので、パラグライダーを予約して一人で行ってきました。なんか飛びたいと思えば、結構すぐ飛べるんだなって(笑)。

やってみたいと思ったら、取りあえずやる、それでいいと思う。

70万円くらいで機材は揃うし、4日間くらい合宿に行けば一人で飛べるようにもなるらしくて。それってお手頃じゃない?って(笑)。少しずつコミュニティーとか世界が広がって、見えてくるものがあればいいと思います。

みんなすぐに答えを出さなきゃいけないと思いがちなんですけど、私もめちゃくちゃ時間かかったし…。事実、会社を作りたいってぼんやり考えていたのは4年前で、それが実現したのは数カ月前。だから、ロングスパンでいいんですよ。

今は居場所がなくても2〜3年後にやりたいことが見つかってるかもしれないってくらい気楽に考えて、構えなくてもいいと思います。

撮影/花盛友里 取材/大塚悠貴 編集/岩谷 大
※掲載の情報はJJ12月号を再構成したものです。


 

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