vol.6 ジェルマン・ルーヴェさん & ポール・マルクさん
世界最高峰、3大バレエの一角といわれ、世界最古の国立バレエ団、それがパリ・オペラ座バレエ団です。たとえバレエに興味がなくても、その名前だけは知っている人も多いはず。今回は、そんなバレエの名門で活躍する、2人の若手ダンサーを紹介します。
Germain Louvet
©︎Mary Brown
PROFILE
1993年生まれ、フランス・ブルゴーニュ地方出身。身長184㎝。4歳でダンス、7歳でバレエを始め、パリ・オペラ座バレエ学校卒業後、2011年パリ・オペラ座バレエ団に入団。2016年、『白鳥の湖』に主演し、飛び級でバレエ団の最高地位”エトワール”に昇格(通常、バレエ団最高位はプリンシパルだが、パリ・オペラ座では星を意味するエトワールと呼ぶ)。9等身のバランスのよさで、キラキラした中世の衣装から、全身タイトなコンテポラリーの衣装までさらりと着こなし、観る者を非現実な夢の世界へ誘います。ロシアや日本など他国のバレエ団でゲストとして客演したことも。普段はどんなファッションもセンスよく着こなすおしゃれ男子。インスタグラムはこちら。
甲高で長くしなる脚、目を見張るほど長くしなやかな腕、モデル顔負けの超美形に続く細く長い首。パリ・オペラ座のまばゆい衣装を身に纏い、踊る姿は王子様そのもの。「ジェルマン様! 俳優やモデルではなく、バレエダンサーになってくれてありがとう」と、何度心の中で感謝をしたことか。恵まれた容姿と類まれなる努力で、パリ・オペラ座の若手中堅エトワールとして絶大な人気を誇るのがジェルマン・ルーヴェさん。
『ロミオとジュリエット』のロミオ役 ©︎Kiyonori Hasegawa
柔らかくしなやか、高くまっすぐ上がる脚に釘付け
パリ・オペラ座バレエ団に入団して12年目の今年は、身体能力的にも表現的にも最高潮と思われるジェルマンさん。舞台空間を掌握するような長い手脚で素晴らしいパフォーマンスを見せてくれます。彼の魅力のひとつは滑らかな踊り。柔らかくしなる上半身、高く上がる脚、ひとつひとつのステップや動作がエレガントで、激しく踊る中、どのシーンを切り取っても美しい稀有な存在です。当代バレエダンサー№1でパフスリーブが似合うかもしれない、その華やかなヴィジュアルは王子様そのものですが、類まれな身体性と柔軟性で、近年ではコンテポラリーバレエでも頭角を現し、去年の年末に出演したピナ・バウシュ振付の『コンタクトホーフ』では、今まで見たことがない新しく、生き生きとした存在感を見せ、批評家の間でも話題となりました。
麗しいヴィジュアルを生かしてモデルとしてショーや広告を飾る
バレエダンサーでありながらそのヴィジュアルに注目が集まってしまうのは、美しく生まれたことの宿命。パリコレが開催されるファッション大国・フランスのデザイナーたちが彼を放っておくはずもなく、ジャンポール・ゴルチエやバレンシアガ、エンポリオ・アルマーニ、AMI PARISなどのショーや広告に出演。麗しいヴィジュアルでも注目を集めています。
Paul Marque
©︎Mary Brown
PROFILE
1997年生まれ、フランス・ランド州出身。4歳からジャズダンスを始め7歳で通い始めたダンススクールにてバレエと出合う。10歳でパリ・オペラ座バレエ学校に入学、卒業後、狭き門であるパリ・オペラ座バレエ団に入団。順調に昇進を重ね、2016年にはヴァルナ国際バレエコンクールで金賞を受賞。2018年、バレエ団で2番目に高い“プルミエール・ダンスール”に昇格し、この時点でエトワールの役柄をこなす多才ぶりを発揮。23歳でついに“エトワール”に昇格。この時点ですでに豊かなキャリアを持ち、まれにみるスピード昇格! ずば抜けた才能を持ちバレエ団で頭角を見せる注目の若手ダンサーです。2匹の猫を可愛がる愛猫家でもある。インスタグラムはこちら。
驚くほどの跳躍力、強靭な体躯とテクニック。それでいて荒々しいわけではなく、ダンスノーブルな存在感で、近年注目を集めるポール・マルクさんは、2020年にエトワールになったばかりです。パリ・オペラ座バレエ団のダンサーの中では、色っぽくワイルドな魅力を持つダンサーで、どこまでも高く跳んでいけそうな力強く伸びやかなジャンプには、思わす感嘆の声を上げてしまう迫力があります。
『オネーギン』でのレンスキー役 ©︎Kiyonori Hasegawa
正統派フレンチスタイルで魅せる、色っぽく華やかな存在感
ポール・マルクさんの踊りの魅力は、ステップやテクニックを正確に見せ基礎を追求した、完璧なフレンチスタイル。そして毎回聞いて驚かされるのは、ベテランの風格さえある彼の年齢とダンスノーブルぶり。まだ26歳、王子役にすんなりとはまる高貴で美しいラインと動き。それでありながら、女性パートナーをしっかりサポートできるブレない体幹、高く伸びやかなジャンプと正確な回転技術。末恐ろしい存在です……。10代でヴァルナ国際バレエコンクール金賞を受賞するだけある高い技術力は、役へのシンクロ度も高く、2022年のパリ・オペラ座バレエ団来日公演『オネーギン』でレンスキー役を演じた時は、涙する観客が後を絶たなかったとか。180㎝とパリ・オペラ座バレエ団の中では決して高くない身長ですが、その存在感は圧倒的。ダンサーにとって常に隣合わせである怪我をしないのも彼の突出した才能で、舞台に穴を開けないどころか、代役までも踊り、弱冠26歳にしてバレエ団の中で欠かせない存在として輝いているのです。
©︎Mary Brown
ジェルマン&ポールの姿が見られるのは・・・・・・『オペラ座ガラ ―ヌレエフに捧ぐ―』(2023年7月29日~)
1961年にロシアから亡命し、英国ロイヤルバレエ団を経て、パリ・オペラ座バレエ団芸術監督を務めた伝説のバレエダンサー、ルドルフ・ヌレエフ。そのヌレエフが舞台への激しい情熱で演出&振付した、あまりにも難易度が高い数々のレパートリーは、多くのダンサーたちに多大な影響を与え、パリ・オペラ座バレエ団の象徴として今も脈々と受け継がれています。このガラ公演はパリ・オペラ座の精鋭によるヌレエフ没後30年を記念したもの。ジェルマン・ルーヴェ、ポール・マルクの他にも先日、日本人として初めてエトワールとなった八菜・オニール、長らく休んでいたスターダンサーのマチアス・エイマン、エレガントな踊りで魅了するパク・セウンなど、豪華なダンサーたちにより、ヌレエフゆかりの貴重なレパートリーが披露される贅沢な公演です。
【Aプロ】7月26日(水)、27日(木)、【Bプロ】7月29日(土)、30日(日)、いずれも東京文化会館にて。詳しい演目、時間などは公式ホームページをご確認ください。
取材・文/味澤彩子