Netflixシリーズ「D.P. -脱走兵追跡官-」シーズン1~2独占配信中
地上波ドラマをくまなくチェックしているドラマオタクのコラムニスト小林久乃と元JJ編集長イマイズミの二人は、もちろんNetflixのドラマもチェックしています。年末年始でたっぷりと時間がある時にまとめて一気見したい作品を、それぞれ5本ずつピックアップしました。
ドラマオタクが選んだ10本を発表!
【コラムニスト小林久乃が推すNetflixドラマ5選】
①『舞妓さんちのまかないさん』
②『御手洗家、炎上する』
③『離婚しようよ』
④『マスクガール』
⑤『サンクチュアリ-聖域-』
【元JJ編集長イマイズミが推すNetflixドラマ5選】
①『D.P. -脱走兵追跡官-シーズン1&2』
②『ザ・グローリー ~輝かしき復讐~』
③『無人島のディーバ』
④『いつかの君に』
⑤『マスクガール』
元JJ編集長イマイズミが推すのは超ヘビーな韓国ドラマ
Netflixシリーズ「D.P. -脱走兵追跡官-」シーズン1~2独占配信中
小林久乃(以下、小林):イマイズミさんがあげたの、これ全部韓国ドラマですか?
元JJ編集長イマイズミ(以下、イマ):小林さんが日本のドラマを推してくると思ったので、あえてかぶらないように韓国ドラマにしぼりましたけど、どれも死ぬほど面白いですよ!
小林:私、あんまり韓国ドラマは観ないんですけど、どういうところが魅力なんですか?
イマ:日本のドラマと一番違うところは「話の長さ」ですね。日本だと、1話45分で全10話が基本だと思うんですが、韓国は1話1時間ちょいで全16話が多いかな。なかには200話超えの作品もありますよ。
小林:トータルでいうと、日本が7時間半で韓国が16時間だから、ほぼ倍ですね。
イマ:それだけ時間がかけられるので、ストーリーを緻密に描けるんですよ。それが逆に韓国ドラマは「最初の数話分は我慢して観る」ってことになるんですけど、なかなかストーリーが動かなかったり、人物相関図を把握するのに時間がかかったりするのも事実です。
小林:最初の方は後半に向かっての伏線を張っている状態なんですね。
イマ:あとは…、下手な俳優がほとんど出ない(笑)。日本だとちょっと人気が出たり、事務所の力が強いとすぐに主役をやったりしますが、韓国ではそういうことが皆無です。アイドルが俳優をやるケースもありますけど、その場合、演技のスキルが相当高い。
小林:新人アイドルの初々しい演技を見たいって欲求は満たせないんですね(笑)。
イマ:「初々しい」くらいならありますけど、「え、棒読み?」みたいなのはないです。あと、暴力描写がとにかくエグいですね。刑事ものやヤクザものは、包丁と鉄パイプと斧を武器に暴れまくって全員信じられないほど血まみれになりますが、なかなか死にません。
小林:ゾンビか(笑)。私もたまに韓国ドラマを観るんですけど、ここが違うなと思うのは俳優のスタイルの良さ。あと肌がキレイすぎる!
イマ:男はほぼ180cm超えですからね。あとは整形することに抵抗がない国ですから、いじってる人はいじってます。そんな中で私が勧めるのは、イケメンがほぼ出てこない『D.P. -脱走兵追跡官-シーズン1&2』です(笑)。
小林:これは軍隊の話ですか?
イマ:韓国のウェブトゥーン『D.P. 犬の日』が原作なんですが、「D.P.」はDeserter Pursuitの略で、「脱走兵追跡」の意味。韓国軍から脱走した兵士をとっつかまえに行くアン・ジュノ(チョン・へイン)とハン・ホユル(ク・ギョファン)の二人が主人公なんですが、その追っかけてく過程で兵士のいじめや自殺、パワハラの実態がどんどん明らかになってくる。これ、よく映像化できたなってくらい軍隊の暗部に切り込んでいます。
小林:のっけからハードな作品を推してきますね…。
イマ:シーズン1は2021年に配信されていて、今年続編が出たんですが、あわせて一気見してほしい! 全体的に救いのない話なので観終わるとどんよりした気分になりますが、追いつ追われつの緊迫感があって続きが気になるし、間違いなくヒューマンドラマの最高峰だと思います。もし日本に徴兵制があったら、私は絶対に脱走すると思いますが、たぶんすぐ捕まりますね(笑)。
コラムニスト小林久乃のお勧めは京都が舞台のほっこり系ドラマ
Netflixシリーズ「舞妓さんちのまかないさん」独占配信中 ©小山愛子・小学館/ STORY inc.
小林:徴兵制がドラマになるのは韓国ならではですね。私はもっと平和なものを推していますが、『舞妓さんちのまかないさん』です。これ観ましたか?
イマ:いや、ノーチェックですね。
小林:京都・祇園が舞台で、舞妓になることを目指して青森から上京してきたキヨ(森七菜)とすみれ(出口夏希)の二人が主人公。総合演出・監督・脚本は是枝裕和が務めています。
イマ:どういう内容なんですか?
小林:キヨとすみれは舞妓を目指すんですけど、すみれは「百年に一人の逸材」といわれるのに、キヨはその才能がないので舞妓さんたちのまかないを作ることになる。その出てくるご飯がとにかく美味しそうなんです! なぜなら日本を代表するフードスタイリスト・飯島奈美さん〈映画『かもめ食堂』(2006年)、連続テレビ小説『ごちそうさん』(2013年/NHK総合)など〉が担当しているからです。
イマ:『D.P.』と違って年末年始にふさわしいドラマですね(笑)。
小林:そして、もう一つの見どころは京都の美しさ! コロナ禍で撮影しているせいか、今だとあんな抜けのいいロケはできないだろうなー。お正月にお酒飲みながら美味しい料理と京都の町並みを堪能できます。
韓国の壮絶なドロドロ復讐劇がランクイン!
Netflixシリーズ「ザ・グローリー ~輝かしき復讐~」独占配信中
イマ:うーん、次のも正月っぽくないかも…。『ザ・グローリー ~輝かしき復讐~』なんですけど、高校の時に壮絶ないじめを受けたムン・ドンウン(ソン・ヘギョ)が18年の時を経て、いじめっ子たちに復讐していくサスペンススリラーです。
小林:また、いじめがテーマなんですね。
イマ:某劇団で問題になってるヘアアイロンですが、これをドンウンが全身に押しつけられるんですよ…。他にも目を覆うばかりのいじめを受けるんですけど、それが酷ければひどいほど、復讐を遂げるたびに「ザマーミロ!」と快哉を叫びたくなります。
小林:あ、私このドラマのマッチング率が98%だ。『D.P.』は80%くらいだったのに(笑)。なんかイマイズミさんの話を聞いてると、昭和の大映ドラマみたいですね。
イマ:懐かしい! 『少女に何が起こったか』、『ポニーテールは振り向かない』、『ヤヌスの鏡』と80年代は大映ドラマの全盛期でしたね。ほとんど観ていました! ありえない設定、過剰な演出、ドロドロした世界観など、共通する点は多いかも。
小林:大映ドラマ好きは韓国ドラマにハマりやすいかもしれませんね(笑)。
なりすまし家政婦が復讐を企てるサスペンスドラマ
Netflixシリーズ「御手洗家、炎上する」独占配信中
イマ:小林さんは『御手洗家、炎上する』を推してますね。これは私も観ましたが面白かったですねー。
小林:このドラマはもう鈴木京香さんがすべてです! 13年前に起きた火事の真相を探るために、村田杏子(永野芽郁)が偽名を使って御手洗家に潜入して復讐を企てるというストーリーなんですけど、火事の後、御手洗治(及川光博)の後妻に首尾よくおさまったのが真希子(鈴木京香)。その真希子のあざとさ、強欲さ、そして妖艶さを見事に表現していました。
イマ:裕福な夫をもった専業主婦が読者モデルとして成り上がっていく感じが、光文社女性誌の世界観を彷彿とさせますね…。
小林:御社独特ですよね(笑)。作中での京香さんの着こなしもオシャレでした。そして、このドラマ、海外でもよく観られてるらしいですよ。アメリカ在住の脚本家・青柳由美子さんと仕事したときに、「私の周りがみんな観てるけど知ってる?」って聞かれましたもん。
イマ:いわゆるハリウッド的な作品とは全然違うから新鮮なんですかね。
とにかく歌声に聞きほれること間違いなしの音楽ドラマ
Netflixシリーズ「無人島のディーバ」 独占配信中
小林:続いてイマイズミさんが勧めるのは『無人島のディーバ』。ディーバっていうからには歌姫が出てくるんですか?
イマ:15年間の無人島生活を経て、歌手になるために奮闘するソ・モクハ(パク・ウンビン)が主人公なんですけど、もう、とんでもなく歌が上手いんですよ。
小林:無人島生活? ロビンソン・クルーソー的な?
イマ:あ、そこらへんはストーリーの肝じゃないのでスルーして大丈夫です(笑)。女優が歌を歌うといえば、最近だと『パリピ孔明』(2023年/フジテレビ系)の上白石萌歌が思い出されますが、パク・ウンビンはまさにディーバというのにふさわしい! 透明感があるのにエモーショナルな彼女の歌声に毎回涙があふれてきます。
小林:そもそも、なんで無人島で生活するはめになったんですか?
イマ:モクハと同級生のチョン・ギホ(ムン・ウジン)は二人とも父親に虐待されていて、それから逃れて歌手デビューするために、船でソウルに行こうとするんですけど、結果逃げ切れなくて、モクハは海に落ちて無人島に流れ着くんです。
小林:児童虐待…、また暗い設定ですね。韓国に普通の明るいドラマはないのかと!
イマ:いやいや、もちろんありますよ(笑)。ただ、その悲しい境遇があるからこそ、モクハの歌が沁みるんですよ。私、観終わってからずっと『無人島のディーバ』のサントラ聴いてますから。
日本を代表する脚本家2人の合作による離婚コメディー
Netflix シリーズ「離婚しようよ」独占配信中
小林:そんなに歌がいいんですねー。そして、私がお勧めするのは宮藤官九郎と大石静が共同脚本の『離婚しようよ』です。冷めきった夫婦の新人議員・東海林大志(松坂桃李)と女優・黒澤ゆい(仲里依紗)が選挙という試練を乗り越えて離婚に向かっていくホームコメディ。
イマ:私も観ましたが、その共同脚本のせいでちぐはぐな印象を受けました。シーンごとに往復書簡のような書き方をしたからかな…。
小林:共同とはいえ、どちらかというとクドカン色が強かった気がします。俳優もクドカンドラマの常連が出ていたし。
イマ:愛媛県が舞台でしたね。
小林:『木更津キャッツアイ』や『池袋ウエストゲートパーク』など、クドカンってドラマの場所選びが絶妙というか、誰も行ったことないようなところをピックアップしますよね。
イマ:それ、愛媛県民が怒りますよ(笑)。二人の離婚に加えて選挙の行方がどうなるかもハラハラしました。
小林:選挙って大変だし、受からなかったらただの人じゃないですか。でも、なんで人は選挙にハマるのか、その中毒性がわかるドラマでした。クドカンの手にかかると選挙もエンタメになるんだなと。あと、見どころは錦戸亮くん(加納恭二役)ですね。
イマ:出た、パチアート(笑)。色気だだ漏れのクズ男がぴったりでした。
小林:以前の所属事務所を辞めてからもう4年、大人の男としていい感じに仕上がってきましたね。もう一人のクズ男を演じた松坂桃李よりインパクトがあった。
時を超えた愛が胸を打つ台湾ドラマのリメイク作品
Netflixシリーズ「いつかの君に」独占配信中
イマ:続いて、私がお勧めするのは『いつかの君に』ですが、これ台湾ドラマの『時をかける愛』を韓国でリメイクした作品なんです。
小林:これはドロドロ系じゃなさそうですね。パッケージ写真も優しい感じだし。
イマ:2023年、1年前に飛行機事故で恋人ク・ヨンジュン(アン・ヒョソプ)を亡くして立ち直れずにいるハン・ジュニ(チョン・ヨビン)が、ひょんなことから1998年にタイプスリップ。すると自分にそっくりな18歳女子高生クォン・ミンジュとして目覚め、死んだ恋人ヨンジュンにそっくりな同級生ナム・シホンに出会うというタイムリープラブストーリーです。
小林:えーと、何言ってるのかよくわかりませんが。
イマ:そうなんですよ…。私も観たのに、ストーリーを完全に理解したかどうか自信がないです。人物相関図と年表を自作しながら観ないと、いちいち「あれ?これどうなってたんだっけ?」ってなるぐらいややこしいです。
小林:えー、面倒くさいな(笑)。
イマ:ただ、それを乗り越えさえすれば、伏線の回収は見事だし、18歳から36歳まで演じ分けるチョン・ヨビンの演技力、ストーリーの鍵となる音楽など見どころはたくさんありますよ。
小林:長い休みにじっくり腰をすえて観るにはいいのかもしれませんね。
現代のルッキズムをテーマにした韓国ノワール
Netflixシリーズ「マスクガール」独占配信中
イマ:お、小林さん、珍しく韓国ドラマが入ってますね。『マスクガール』は私もお勧めの作品です。どこらへんが良かったですか?
小林:これは以前取材した女優さんに勧められて観たんですけど、自分のルックスにコンプレックスのある主人公キム・モミが、ふとしたきっかけで殺人、整形、逃亡、収監とものすごいスピードで転落していく展開に目が離せませんでした。
イマ:そのキム・モミを、オーディションで選ばれた新人イ・ハンビョルとアイドルグループAFTERSCHOOLのメンバーでもあるナナ、そして韓国の国民的女優コ・ヒョンジョンの3人が演じるという試みも新しかったです。
小林:最初はルッキズムがテーマのちょっとしたブラックコメディーかと思って観てたら、どんどん人が死んでいくし、最終的に誰もいなくなるという(笑)。
イマ:いわゆる王道の韓国ノワールになっていきましたね。
小林:昔のドラマなんですが、広末涼子と内田有紀が主演の『ナオミとカナコ』(2016年/フジテレビ系)を思い出しました。
イマ:まあ、あのドラマは一人しか死んでませんけど(笑)。『マスクガール』は韓国ドラマでは珍しく7話完結なので、パッと観られるのもいいですよね。
世界中で人気を博した話題の相撲ドラマ
Netflixシリーズ「サンクチュアリ -聖域-」独占配信中
小林:そして、私が最後にお勧めしたいのが『サンクチュアリ-聖域-』。これは貧困家庭で育った小瀬清(一ノ瀬ワタル)が傍若無人に振舞いながら伝統と格式を重んじる角界でのし上がっていくストーリーですけど、配信されると日本だけでなく世界でもTOP10入りするほどの人気になりました。
イマ:破天荒な主人公が土俵で大暴れする話といえば『ああ播磨灘』(さだやす圭/講談社)や『バチバチ』(佐藤タカヒロ/秋田書店)など漫画では結構ありますが、まさか実写で観られるなんて思ってなかったです。
小林:『シコふんじゃった。』(1992年)はコメディーですしね(笑)。私、あんまり相撲って見たことないんですけど、とにかく力士役の俳優の体が凄いから、取組のシーンも大迫力でした。
イマ:一ノ瀬ワタルは格闘家、猿谷役の澤田賢澄と静内役の住洋樹は元力士、龍貴役の佳久創は元ラグビー選手と、そもそもガタイがいい人たちがしっかりと相撲のトレーニングを積んでいるので本物感が出ますよね。
小林:『VIVANT』(2023年/TBS系)のドラム(富栄ドラム)も龍貴の付き人役で出演していました。
イマ:えー、気づかなかったー!
小林:相撲のシーンもさることながら、兄弟子のいじめ、親方たちの権力争い、やっかいなタニマチなど、「これ、どこまでフィクション?」っていうくらい攻めた脚本も面白かったです。
イマ:たしかに、この内容じゃ国技館貸してくれないですよね(※作品ではCGで再現)。『D.P.』もそうですけど、配信ドラマは地上波ではできない内容の作品が観られるのも魅力です。
小林:そうそう。1月期のドラマが始まるまで時間があるので、年末年始はNetflix漬けで過ごしてください!
小林久乃(こばやし・ひさの)コラムニスト、編集者。正々堂々の独身。中学生から地上波ドラマを愛して30年以上、筋金入りのオタク。好きが高じてついには『ベスト・オブ・平成ドラマ!』(青春出版社刊)を上梓した。ラブストーリーが好きで、特に禁断の恋がテーマとなると視聴熱が俄然、盛り上がる。公式HPはhttps://hisano-kobayashi.themedia.jp
元JJ編集長イマイズミ 女性誌『CLASSY.』『JJ』の編集長を歴任。1クールの地上波ドラマを全録画するようになったのは、編集長になった13年ほど前から。「仕事で新しい俳優、タレントさんを覚えるため」というのが理由だったけど、見事に大ハマり。ホームドラマとラブコメ好き。韓国ドラマもやや中毒。
イラスト/lala nitta