今回は、通算2500本もの韓国ドラマを観てきたというAll About韓国ドラマガイドの安部裕子さんが、韓ドラファンならではの目線でオススメの韓国映画を紹介してくれました。世界で話題になった大ヒットコメディや、凶悪事件の背景に迫るドキュメンタリー、韓国人気俳優のパク・ソジュンも出演する一風変わったラブストーリーなどエンタメ性が高くバラエティに富んだ６作品がラインナップ。
韓国人気俳優のパク・ソジュン
①ビューティー・インサイド
“寝るたびに姿が変わる”という主人公を、総勢123人の俳優が演じる一風変わった作品。主人公と恋するヒロインとの恋愛を描く。互いを好きになり、関係が深まる過程の中で愛の根元を問うラブストーリー。
「主人公は寝て起きるたびに、性別や年齢も問わず姿が変わってしまう奇病を持つという、他の映画にはない新鮮な設定です。姿が変わりゆく主人公を前にして、相手のことを好きになるのは外見か、それとも内面からなのか…といった難問を突き付けながら、愛はどこからくるのかを追求する興味深いテーマでした。主人公役には『梨泰院クラス』(2020)で主演を務めたパク・ソジュンやイ・ドンウクなど豪華俳優陣が勢揃い。日本からは上野樹里さんも出演しています」（安部さん・以下同）
②神と共に
冥界の法律では、死後49日以内に7回の裁判を受けなければならず、すべてを通過したものだけが転生できるという。死後の世界や地獄の様子を描きながら、亡くなった主人公が7つの地獄で裁判を受けて生まれ変わりを目指す過程で、次第に彼の過去も明らかになる。
「ウェブ漫画を原作に、『第一章：罪と罰』『第二章：因と縁』までが公開されていて、現在制作中だという第三章の公開を待ち望むファンも非常に多い話題作です。主演で消防士役のチャ・テヒョンが亡くなったところから話は始まり、死後の世界で彼が転生を目指していくというストーリーです。スピード感があり先が読めない展開に加え、壮大なCGやアクションシーンも見どころです。母親とのシーンも感動的。国内で興行収入3位を記録したことがあることにも納得ですね」
③エクストリーム・ジョブ
日々事件に奔走しながらも、実績はどん底で解散の危機が迫った麻薬捜査班が、張り込み捜査のため犯罪組織のアジト近くにあるフライドチキン店を買収して営業。しかし、絶対味覚を持った刑事が作るチキンが次第に評判になり、店は捜査に手が回らないほど盛況。韓国で歴代興行収入1位を記録した傑作コメディ。
「登場人物一人一人のキャラクターが面白く、出演する５人のチームワークも抜群。『二十歳』(2015)などを手掛けたイ・ビョンホン監督が、コメディ映画の名手として知られるきっかけにもなった作品です。コントを思わせる台詞の掛け合いや、伏線が張り巡らされた脚本が見事であっという間に見終わってしまいます。ハリウッドでもリメイクされることが決まっているなど海外でも評価の高い、抱腹絶倒のコメディ映画です」
④The Witch／魔女
酪農を経営する夫妻は、ある日血だらけで倒れている少女を発見。記憶を無くした彼女をジャユンと名づけ、娘として育てることに。10年の月日が経過し、家庭の経済状態を心配したジャユンは、大金を得られるチャンスのためにテレビ出演。それがきっかけで謎の組織に追われることとなるーー。世界を揺さぶる大ヒットバイオレンス・サイキックアクション。
「『梨泰院クラス』(2020)に出演し、話題になったキム・ダミの主演映画です。血みどろの殺戮シーンが多く、少し変わった作品ではありますが、人間離れした圧巻のスピードで繰り出される大迫力のアクションシーンが見どころです。。引き込まれるようにして夢中で観てしまいました。ぜひ、5月26日に日本公開された続編映画『THE WITCH／魔女 ―増殖―』も観てみてください。続きが気になる壮大なシリーズです」
⑤サイバー地獄: n番部屋 ネット犯罪を暴く
韓国で実際に発生したデジタル性犯罪「n番部屋」を追ったドキュメンタリー。被害者たちは自身のわいせつ画像などをチャットルームにアップロードさせられ、首謀者は数多くのユーザーから仮想通貨で入場料を徴収。政治家や芸能人までもが身元を隠蔽しながら視聴していたという事件の背景に迫る。解決を目指し奔走した警察官らに密着し、逮捕の瞬間までが明らかに。
「当時、韓国を震撼させた衝撃的なデジタル犯罪をテーマにしたドキュメンタリー作品です。個人情報を元に脅迫された未成年の女性たちは、犯人の言いなりにされ、終いには自殺へと追い込まれる被害者もいた残忍な事件。犯人が、普段から感じていたコンプレックスやミソジニー(女性嫌悪)がこのような事件を引き起こしたということもあり、韓国が抱えるジェンダー問題への理解も進み、非常に興味深かったです」
⑥すべては神のために: 裏切られた信仰
韓国のカルト宗教団体を題材にした8部作のNetflixオリジナルドキュメンタリー。元信者らが過去に受けた性暴力や洗脳、脅迫などの被害を含む内情を暴露していく。約２年かけて制作され、一般の放送では扱われることのなかったカルト宗教の実態を暴いた作品。韓国国内でも大きな反響を呼んでいる。
「『サイバー地獄〜』に続いてこちらもおすすめです。かつて韓国で流行していた複数のカルト宗教の内部切り込んだものです。このドキュメンタリーを通じて、韓国で有名なアルバム流通会社「シンナラレコード」が、実はカルト宗教団体教主が会長を務める会社であることが発覚。不買運動に発展するなど社会を大きく揺るがした作品です。ドラマの題材にもなる実際の事件を扱っているため、それらが制作される背景までをも想像することができて、韓国ドラマファン目線で観ても十分見応えを感じられるシリーズです」
取材／丸田美亜 構成／齋藤菜月 写真／アフロ
