『新宿野戦病院』(フジテレビ)公式ホームページより
『アンメット』や『アンチヒーロー』など話題の作品が多かった春ドラマ。7月から始まる夏ドラマは一体どれが面白い? コラムニスト小林久乃と元JJ編集長イマイズミのドラマオタクの2人が、長年ドラマを観てきた経験と当てずっぽうで、これぞ!という5本をそれぞれ選びました。
【コラムニスト小林久乃が選ぶ5本】
①新宿野戦病院
②マウンテンドクター
③笑うマトリョーシカ
④錦糸町パラダイス ~渋谷から一本~
⑤素晴らしき哉、先生!
【元JJ編集長イマイズミが選ぶ5本】
①海のはじまり
②新宿野戦病院
③スカイキャッスル
④錦糸町パラダイス ~渋谷から一本~
⑤GO HOME ~警視庁身元不明人相談室~
やっぱり宮藤官九郎脚本作品は外せない!
元JJ編集長イマイズミ(以下、イマ):それにしても、前クールの『アンメット ある脳外科医の日記』(2024年/関西テレビ・フジテレビ系)は盛り上がりましたねー。
小林久乃(以下、小林):毎週、ネットニュースで話題になってましたもんね。最終回が始まった時間は外出してたんですけど、Xのリアタイ実況がすごく盛り上がってて。
イマ:私はリアタイで観てましたけど、前週の週刊モーニング(講談社)でミヤビ(杉咲花)の手術シーンを掲載したばっかりで、結末がどうなるかわからなかったのも良かったです。
小林:ドラマが原作を追い越したんですね。
イマ:さて、今回も注目の夏ドラマを5本ずつ選びました。まず2人がかぶったのは『新宿野戦病院』(水曜22時/フジテレビ系)ですね。
久乃:クドカン(宮藤官九郎)についてはもう言うことないんですけど、彼の脚本で小池栄子(ヨウコ・ニシ・フリーマン役)と仲野太賀(高峰亨役)がダブル主演なんて、ドラマ好きで観ない人いないでしょ!
イマ:「新宿・歌舞伎町が舞台の笑って泣ける“救急医療”エンターテインメント」という内容です。小池栄子は軍医経験を持つ女医、そして仲野太賀は叔父の病院に勤務する美容皮膚科医という役どころ。他には、柄本明(高峰啓介役)、生瀬勝久(高峰啓三役)、余貴美子(リツコ・ニシ・フリーマン役)、高畑淳子(白木愛役)など脇を固めるベテラン勢も充実してます。
小林:それにしてもクドカンがフジテレビの連ドラで脚本書くの久しぶりじゃないかな?
イマ:えーと、織田裕二主演の『ロケット・ボーイ』(2001年/フジテレビ系)以来ですね。
小林:あ、たしか織田裕二が途中で椎間板ヘルニアになって7回で終わっちゃったやつだ…。
イマ:その時の演出が河毛俊作さん。このドラマの演出も河毛さんだから、23年ぶりにタッグを組んだってことですね。
小林:ちょうどTVerでクドカン脚本の『木更津キャッツアイ』(2002年/TBS系)をやってるんですけど、今だとコンプライアンス的にアウトなセリフやシーンが満載です!
イマ:それは不適切ですね(笑)。このドラマは歌舞伎町が舞台なので、コンプラ的に逸脱するシーンはあるでしょう。
小林:初回から、銃で撃たれた外国人難民が病院に運ばれるという展開。歌舞伎町だけに、トー横キッズやホームレスなどワケありな人物が次々と出てきそう。
イマ:コメディードラマに今どきの社会問題を入れてくるところはさすがクドカン。
小林:名前で客が呼べる脚本家という意味で、クドカン一強時代は続きそうですね。
歌舞伎町 vs. 錦糸町⁉ 若手俳優プロデュースドラマが新しい
イマ:そして、もうひとつかぶったのが『錦糸町パラダイス~渋谷から一本~』(金曜24時12分/テレビ東京系)です。錦糸町を舞台に、掃除屋『整理整頓』の3人とルポライターが様々な人々と出会い、自らの過去と向き合う群像劇だそう。
小林:掃除屋の3人が賀来賢人(大助役)、柄本時生(裕ちゃん役)、落合モトキ(一平役)、そしてルポライターが岡田将生(蒼役)。この4人はコロナ禍で「劇団年一」を結成しているくらいの仲良しなので、その空気感を楽しみたいです。
イマ:このドラマは柄本時生と今井隆文がプロデュースしています。賀来賢人は『忍びの家 House of Ninjas』(2024年/Netflix)で主演とエグゼクティブ・プロデューサーを務めていますが、俳優が積極的に制作に関わるのは最近の流れなんですかね。
小林:『アンメット』の若葉竜也や『シティハンター』(2024年/Netflix)の鈴木亮平も脚本の制作段階から関わってますもんね。しかもどちらもドラマとして面白い。
イマ:面白くなるならどんどんやって欲しいですよね。そして、このドラマ、あらすじを読んでもどんなドラマになるのかわからないところにワクワクします。
小林:歌舞伎町 vs. 錦糸町の対決、楽しみですね(笑)。
大ヒットドラマ『silent』のスタッフが月9で再結成
イマ:そして、あれ? 小林さん、『海のはじまり』(月曜21時/フジテレビ系)は入れてないんですね。
小林:このドラマのスタッフ、いまフジテレビが月9に投入できる最高の布陣ですよね。
イマ:主演・目黒蓮、脚本・生方美久、演出・風間太樹、音楽・得田真裕、プロデュース・村瀬健という、大ヒットドラマ『silent』(2023年/フジテレビ系)のスタッフ再結集です。おまけに主題歌はback numberと抜かりない。
小林:いやー、肩に力が入りすぎてる時って危険なんですよね…。
イマ:どんだけ悲観的なんですか(笑)。たしかに、ここ最近の月9は話題になってないですけど…。主人公・月岡夏(目黒蓮)は大学時代に付き合っていた南雲水季(古川琴音)と突然別れ、その7年後に彼女との間にできた娘・海(泉谷星奈)と出会うというストーリーです。
小林:今クールのドラマ、やたらシングルファーザーの設定が多いんですよ。他には『西園寺さんは家事をしない』(水曜22時/TBS系)の松村北斗(楠見俊直役)や『マウンテンドクター』(月曜22時/フジテレビ系)の向井康二(小松真吾役)がシングルファーザー。古くは相葉雅紀主演の『マイガール』(2009年/テレビ朝日系)、香取慎吾主演の『薔薇のない花屋』(2008年/フジテレビ系)とか。
イマ:奇しくも全員starto entertainment(元ジャニーズ)勢ですね。あ、香取くんは「元」だけど。シングルファーザーって、母親と違って、だんだん父親らしくなっていくプロセスを描きやすいんでしょうかね。私も子供が生まれたときはなんか実感湧かなかったもんなー。
小林:夏の今カノ・百瀬弥生を有村架純が演じますが、彼女が海とどう接するのかも気になるところ。
イマ:元カノの子供が急に現れたらどうします?
小林:うーん、今の年齢だったら許容できるかもしれないけど、若い頃だったら無理かなー。
イマ:水季の元同僚・津野晴明役には池松壮亮がキャスティングされています。去年配信された『季節のない街』(2023年/ディズニープラス スター)が素晴らしかったけど、あまり地上波の連ドラに出ない俳優なので楽しみです。
小林:私は断然、木戸大聖くん(月岡大和役)推しです! このドラマを観る最大の理由と言っても過言ではありません。
イマ:なんだかんだ言って、結局観るんですね(笑)。
山岳医の成長ストーリーがまぶしい医療ドラマ
小林:さっき名前が上がりましたけど、杉野遙亮主演の『マウンテンドクター』は推してます。山岳医療の現場に放り込まれた若い医師が、様々な想いを抱えた山岳医や患者と出会いながら一人前に成長していくという医療ドラマ。『ばらかもん』(2023年/フジテレビ系)での杉野くんが良かったのと、月曜22時のカンテレ制作枠はここ最近クオリティーが高いので期待してます。
イマ:まあ、絶対に入れると思ってたけど、杉野くん推し、続きますねー(笑)。
小林:杉野くんだけじゃなく、大森南朋(江森岳人役)、八嶋智人(小宮山太役)、宮澤エマ(鮎川玲役)という共演陣も完璧じゃないですか?
イマ:長野県の北アルプスが舞台ということで山岳地帯でのロケもあるみたいです。
小林:大変そうだけど、スケールの大きなシーンが撮れそう。
イマ:そして、主題歌がOfficial髭男dismとこちらもスキなしですね。
韓国で大ヒットしたドラマをリメイク
小林:イマイズミさんの3位は『スカイキャッスル』(木曜21時/テレビ朝日系)ですね。
イマ:これは韓国ドラマ『SKYキャッスル~上流階級の妻たち~』の日本版なんですが、韓国では初回視聴率が1.7%だったのに、最終回には23.8%までいった大ヒットドラマ。私も続きが気になって、睡眠時間を削って一気見しましたよ。
小林:高校受験の話なんですか?
イマ:韓国版のタイトルになってる「SKYキャッスル」は舞台となる高級住宅地の名前なんですけど、ソウル大学のS、高麗(コリョ)大学のK、延世(ヨンセ)大学のYという超難関大学のイニシャルの意味もあるんですよ。韓国では大学受験が熾烈なんですけど、日本版では高校受験に設定を変えたようです。子供の受験バトルに加えて、夫の出世バトルが絡み合う、セレブ妻たちの見栄と意地の張り合いがこのドラマの見どころです。
小林:韓国ドラマファンはいちいち比べるでしょうね。
イマ:各キャストのビジュアルは韓国版とかなり近いんですけど、特に受験コーディネーター役の小雪(九条彩香役)は「おお!」ってなりました。あとは、衣装、ジュエリー、インテリア、車などでセレブ感をどう演出するかがカギですね。韓国版は噓みたいな豪邸だらけで、衣装も嘘みたいに豪華でした(笑)。
小林:これ、テレ朝、映画化狙ってません?
イマ:ドラマでどこまでやるかによりますけど、『七人の秘書 THE MOVIE』(2022年)のパターンはあるかもしれませんね。
政治家役の櫻井翔はハマりすぎ⁉
小林:そして、私の3位は『笑うマトリョーシカ』(金曜22時/TBS系)です。
イマ:早見和真の同名小説が原作ですね。
小林:若き政治家・清家一郎(櫻井翔)と有能な秘書・鈴木俊哉(玉山鉄二)の奇妙な関係を暴こうとする新聞記者・道上香苗(水川あさみ)が巻き込まれる政治サスペンスドラマ。いやー、櫻井くんの政治家役、ハマりすぎじゃないですか?
イマ:『〇〇占拠』シリーズに比べたら圧倒的に似合ってますね(笑)。ニュースキャスターやってるし、お父さんは元総務事務次官だし、そのうち本当に出馬するんじゃないか的な。
小林:このドラマのキービジュアルで、櫻井くんだけ仮面の下も同じ顔なのも不穏です。あと気になるのは、玉鉄が急に見た目を仕上げてきた(笑)。
イマ:『さよならマエストロ~父と私のアパッシオナート~』(2024年/TBS系)では相当もっさりしてたけど、あれは役作りだったんですね。初回から死んじゃう渡辺いっけい(道上兼髙役)をはじめ、加藤雅也(和田島芳孝役)、国広富之(藤田則永役)などこの手のドラマに欠かせない圧の強いバイプレーヤーたちもいいですね。
小林:渋谷駅で週刊誌の中吊りみたいなでっかいポスターを出してたし、主役の3人は番宣バンバン出てるし、TBSも力を入れてる枠なので期待してます。ところで、マトリョーシカ人形って家にありました?
イマ:え? うちにはなかったですよ。
小林:実家に2つくらいあったから、どこの家でもあるもんだと思ってました(笑)。
イマ:それ普通じゃないですよ(笑)。
女性バディものとZ世代教師のドラマに注目
小林:そして、最後5位! 私は『素晴らしき哉、先生!』(日曜22時/ABCテレビ・テレビ朝日系)で、イマイズミさんは『GO HOME~警視庁身元不明人相談室~』(土曜21時/日本テレビ系)です。
イマ:『GO HOME』は珍しい女性バディもの。身元のわからない遺体を、わずかな手がかりから死の真相を明らかにして、家族や恋人の元に返すために三田桜(小芝風花)と月本真(大島優子)が奔走するというストーリーです。身元不明相談室っていう部署は本当に実在するんですって。
小林:小芝風花のまっすぐで元気な感じがいまいちピンとこないんですよね…。
イマ:そこがいいんじゃないですか! だてにランチパックのCMを3年もやってませんよ(笑)。明るくコミュ力が高い三田桜とクールで冷静沈着な月本真の役柄は、それぞれ小芝風花と大島優子に合ってると思います。
小林:1話ごとに完結するストーリーだから気楽に観られそう。
イマ:あとSnow Manの阿部亮平くん(手嶋淳之介役)が刑事役で出るんですけど、あんまり連ドラのイメージがないんでこちらも楽しみです。
小林:『素晴らしき哉、先生!』は生田絵梨花推しで観ます。最近だと『こっち向いてよ向井くん』(2023年/日本テレビ系)や『アンメット』が良かったし、ディズニーのコンサートで歌ってる彼女を見たら、ホントに歌が凄くて。
イマ:ピアノも上手だし、もう何でもできちゃう人ですよね。生徒や保護者、同僚などあらゆる人間関係の板挟みになりながら、生徒のために奮闘していく2年目の高校教師・笹岡りおを演じます。りおは「毎日の愚痴をSNSの裏アカに吐き出す」らしいので、良い教師というよりは今どきの若者って感じの役ですね。
小林:彼女の飄々とした雰囲気もその役に合ってるかも。
イマ:生徒役には『95』(2024年/テレビ東京系)の鈴木仁(南田健吾役)、『下剋上球児』(2023年/TBS系)の橘優輝(小村悠馬役)、『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』(2023年/日本テレビ系)の茅島みずき(沢井谷玲奈役)などフレッシュな顔ぶれが揃ってます。
小林:若手俳優もいいけど、私は柳沢慎吾に注目してます(笑)。
イマ:そこ⁉ 『だが、情熱はある』(2023年/日本テレビ系)では警官役やってましたけど、連ドラで見るのは1年に1回くらいなので貴重っちゃ、貴重ですが。
小林:そういえば、今クールは記憶喪失ものやタイムリープものが見当たりません。『スカイキャッスル』もそうだけど、『夫の家庭を壊すまで』(月曜23時06分/テレビ東京系)や『どうか私より不幸でいて下さい』(火曜24時24分/日本テレビ系)、『嗤う淑女』(土曜23時40分/東海テレビ・フジテレビ系)などのドロドロ復讐劇が多いですね。
イマ:それにしても『どうか私より不幸でいて下さい』って最高のタイトル(笑)。
小林:今年の夏も暑そうだから、クーラーの効いた部屋で震えながら観るのにピッタリですね。
小林久乃(こばやし・ひさの)コラムニスト、編集者。正々堂々の独身。中学生から地上波ドラマを愛して30年以上、筋金入りのオタク。好きが高じてついには『ベスト・オブ・平成ドラマ!』(青春出版社刊)を上梓した。ラブストーリーが好きで、特に禁断の恋がテーマとなると視聴熱が俄然、盛り上がる。公式HPはhttps://hisano-kobayashi.themedia.jp
元JJ編集長イマイズミ 女性誌『CLASSY.』『JJ』の編集長を歴任。1クールの地上波ドラマを全録画するようになったのは、編集長になった13年ほど前から。「仕事で新しい俳優、タレントさんを覚えるため」というのが理由だったけど、見事に大ハマり。ホームドラマとラブコメ好き。韓国ドラマもやや中毒。