『西園寺さんは家事をしない』(TBS)公式ホームページより
2024年の夏ドラマは良作が多すぎてセレクトが難航! そして、予想記事とは全然違うランキングになりました。ドラマオタクのコラムニスト小林久乃と元JJ編集長イマイズミの2人が悩みながら選んだ「最後まで観たい2024夏ドラマBEST5」、皆さんの観ているドラマは入っていましたか?
【コラムニスト小林久乃が選ぶ5本】
①西園寺さんは家事をしない
②新宿野戦病院
③夫の家庭を壊すまで
④クラスメイトの女子、全員好きでした
⑤ビリオン×スクール
【元JJ編集長イマイズミが選ぶ5本】
①クラスメイトの女子、全員好きでした
②降り積もれ孤独な死よ
③海のはじまり
④西園寺さんは家事をしない
⑤錦糸町パラダイス ~渋谷から一本~
第1位はともに全く予想していなかった作品がランキング!
元JJ編集長イマイズミ(以下、イマ):さて、夏ドラマもいよいよ大詰めを迎えていますが、今回、BEST5を決めるの難しくなかったですか?
コラムニスト小林久乃(以下、小林):そうなんですよ。選んだ5本以外でも継続して観ているドラマがたくさんあります。
イマ:普通、夏ドラマって枯れる時期なんですが、今年はなぜか大充実。まずは小林さんが1位に選んだ『西園寺さんは家事をしない』(火曜22時/TBS系)ですが、私も4位に入れました。回を追うごとに西園寺さんを好きになっている自分がいます。
小林:私の周りのドラマ好きの間でも評判がいいんですけど、やっぱり主演の松本若菜(西園寺一妃役)の魅力に尽きます。芸歴18年でつかんだゴールデン・プライム帯の連ドラ初主演ですよ!
イマ:超絶美形なのに表情を思いっきり崩したり、コミカルな演技をしても嫌味がない。
小林:振り切ってますよねー。そして、西園寺さんのキャラもいい。お節介でおっちょこちょいで…私は令和のサザエさんだと思ってます。
イマ:え? サザエさんは専業主婦で24歳ですよ?
小林:だから、「令和の」って言ってるじゃないですか(笑)。きちんとキャリアを積みながら38歳独身で家持ちなんて、とても今っぽい。なにより、みんなに愛される性格。
イマ:あの家、世田谷区瀬田6丁目という設定なんですけど(実際は5丁目までしかない)、庭付きであの間取りだと確実に億超えですよ。しかも平屋って…なんて贅沢!
小林:そこらへんはドラマならではのファンタジーってことで(笑)。
イマ:松村北斗くん(楠見俊直役)のシングルファーザーぶりもいいですよね。本当に子供がいるんじゃないかってくらいリアリティーがあります。
小林:さすがの演技力ですよね。あと、話題になってるのは西園寺さんのファッション。
イマ:マルニとかマディソンブルーとか、センスのいいブランドを着回してます。つか、億超えの家に住んでマルニを買えるって、どんだけ年収あるんだろう…。
小林:はいはい、そこもファンタジーってことで(笑)。このドラマ、観ていて心地いいのは、独身アラフォー女性やシングルファーザーなど、いろいろな立場の人たちがいるのに、それを否定してくる人がいないところ。
イマ:ルカ(倉田瑛茉)の保育園の保護者たちもさまざまです。
小林:「仮夫婦」とか「仮家族」とか、使い古された設定なのにこれだけ面白くできるなんて、「ドラマのTBS」の面目躍如ですね。
イマ:原作漫画は読んでないんですけど、最終的に楠見くんと西園寺さんはくっつくんですかね?
小林:どっちでもいいと思いますよ。結末がどうなろうと、私的にはもう満点のドラマですから。
イマ:お、満点いただきましたー!
小林:そして、イマイズミさんの1位は『クラスメイトの女子、全員好きでした』(木曜23時59分/読売テレビ・日本テレビ系)。たしかにこのドラマ面白いですよね。私も4位に入れましたよ。
イマ:同名の原作エッセーも抜群に面白いんですけど、小説の真の作者を探すというミステリーを横軸にした構成が素晴らしい!
小林:木村昴(枝松脛男役)がまさに「令和の寅さん」ですね。
イマ:出た!「令和のほにゃらら」シリーズ(笑)。毎回クラスメイトを好きになるけど、なんだかうまくいかない脛男…。切なくてキュンとします!
小林:現代パートだけだと木村昴の濃いめの演技でお腹いっぱいになりそうなところ、半分は中学生時代に場面転換するから観ていて飽きがこない。子役の及川桃利くん(枝松スネオ役)もいいし、クラスメイトもみんなキャラが立ってる。
イマ:「こういう子、ホントにいそう」っていうリアリティーがありますよね。よくある学園ものみたいに、みんながみんな美男美女すぎなくて。
小林:あと、野呂佳代は『西園寺さん』に続いてこれにも出てます。
イマ:『ブラッシュアップライフ』(2023年/日本テレビ系)や『アンメット ある脳外科医の日記』(2024年/カンテレ・フジテレビ系)など、彼女が出てるドラマはクオリティー高いですよね。
小林:野呂佳代が出てるドラマにハズレなし説は継続中です。
イマ:今後のゲストに、長井短、笛木優子、剛力彩芽となかなかクセの強い俳優がラインナップされているのも楽しみのひとつです。
2位はクドカン作品とジェットコースターミステリー
イマ:小林さんの2位は『新宿野戦病院』(水曜22時/フジテレビ系)かー。このドラマ、なんか乗り切れないんですよね…。
小林:クドカン好きの私としてはやっぱり外せないし、初回からいろいろ言われてた小池栄子(ヨウコ・ニシ・フリーマン役)の英語も全然気にならない。そもそも発音がどうのって気にしてるの日本人だけだし、小池栄子ほどの役者だったらネイティブ並みの発音くらいできるはずだから、あれは演出ですよ。
イマ:たしかにそこは回を追うごとに気にならなくなったんですけど、クドカンドラマにしてはなんか食い足りない感じがするんですけど。
小林:トー横キッズとか児童虐待とか、結構きわどいところまで踏み込んでるし、登場人物のキャラクターも多彩で目が離せない。特に、しのぶさん(塚地武雅)!
イマ:無性にペヤング食べたくなりますよね(笑)。
小林:TBSのクドカン×磯山晶(元TBSプロデューサー)作品に慣れちゃうと違和感があるかもしれませんが、私はこのドラマ、好きですよ。
イマ:私が2位に選んだのは『降り積もれ孤独な死よ』(日曜22時30分/読売テレビ・日本テレビ系)です。毎回終わりぐらいに「ええ!?」っていう新事実が出てきて、ストーリーにぐいぐい引き込まれます。
小林:原作漫画は読んでました?
イマ:一応、無料公開してるところまで読みましたけど、原作が持つ不穏なトーンも美しい映像で表現されているし、ドラマならではの劇伴が効果的に盛り上げてくれます。
小林:私が注目したのは、成田凌(冴木仁役)のスタイルの良さ!
イマ:さすがメンズノンノモデル出身です。パンツにシャツをインしただけであんなに決まる人、なかなかいないですよ。そして、黒木メイサ(五味明日香役)が7年ぶりの地上波ドラマ復帰も話題になりました。
小林:全然ブランクを感じさせないですよねー。原作だと五味警部補は男性なんですよね?
イマ:ええ、地味めのおじさんです(笑)。でも、これはいい改変。最終話に向けて、少女失踪事件がどう絡んでくるのか、行方不明のままの生き残り・神代健流(杢代和人)は見つかるのかなど、今後の展開が気になりすぎます。
3位はドロドロ不倫ドラマとフジの社運をかけた月9ドラマ
イマ:小林さんが3位にあげたのは『夫の家庭を壊すまで』(月曜23時06分/テレビ東京系)ですね。これ、怖すぎて笑っちゃうんですけど!
小林:不倫相手のサロンにカットしにいったり、その息子を誘惑したり、タイトルの名に恥じないクラッシャーぶりを発揮する松本まりか(如月みのり役)の演技が秀逸です。
イマ:やっぱり不倫ドラマはこれぐらい振り切らないと面白くないですよね。
小林:キャストも竹歳輝之助(如月雄大役)や麻生祐未(如月裕美役)と、私が思う不倫ドラマ最強の布陣(笑)。
イマ:麻生祐未がただの面倒見のいい義母をやるわけないと思ってましたが、やはり…。
小林:みのりの復讐劇から、如月親子 vs. みのりの対決になってきて俄然面白くなってきました。
イマ:今クール、『どうか私より不幸でいて下さい』(火曜24時24分/日本テレビ系)をはじめ、ドロドロの不倫ドラマがたくさんありますが、『夫の家庭を壊すまで』の圧勝ですね。
小林:イマイズミさんの3位は『海のはじまり』(月曜21時/フジテレビ系)。フジテレビが社運をかけた月9ドラマ!
イマ:このドラマ、賛否両論ですよねー。私はもちろん「賛」ですが。
小林:SNSを見ていると、若い層に支持されているようです。
イマ:月岡家は連れ子がいる同士の再婚だったり、百瀬弥生(有村架純)は子供をおろした経験があったり、南雲朱音(大竹しのぶ)があの年代で不妊治療をしていたとか、登場人物の設定が渋滞しているという批判もありますが、後半にいくに従ってそれにも意味があったんだなと思えてきます。
小林:あと、セリフやシーンがわりと細切れだから、根気よく観ていかないとこのドラマの良さが分からないのかも…。ただ、私は大竹しのぶの演技に釘付けです。
イマ:大竹しのぶもそうですが、有村架純、池松壮亮(津野晴明役)など演技お化けの中で、南雲海役の泉谷星奈ちゃんが素晴らしい。100人を超えるオーディションで選ばれただけあります。
小林:このクールは『西園寺さん』や『クラスメイトの女子』など、子役がキーになってるドラマが多いですね。それにしても、毎回「可哀そう」の連発で、観ているのがしんどい部分も…。
イマ:わかります。なんでこんなこと言っちゃうんだろ?っていうシーンも多くて。でも、人って余裕がないと、言わなくていいこともつい言っちゃう時あるじゃないですか。このドラマはそういう人間の複雑な感情を繊細に描いていると思いますよ。
令和のヤンクミ⁉と予測不能のドラマに注目
小林:そして、私が5位に選んだのは『ビリオン×スクール』(金曜21時/フジテレビ系)です。
イマ:小林さん、今回はわりと明るいドラマを選んでますね。
小林:山田くん(加賀美零役)と木南晴夏(芹沢一花役)の息もぴったりだし、職員室での先生たちのコミカルなやりとりが最高!
イマ:たしかにあのコントはクセになる(笑)。
小林:毎回、水戸黄門的にトラブルを解決していく加賀美の成長していく姿もいい。
イマ:「令和の水戸黄門」ですか?
小林:いや、「令和のごくせん」です(笑)。
イマ:それにしても紺野直斗役の松田元太くん、演技が上手くてびっくりしました。
小林:『東京タワー』(2024年/テレビ朝日系)でも目立ってましたよね。あと、ラスボス生徒を演じる奥野壮くん(城島佑役)にも注目しています。
イマ:クセモノ校長の東堂真紀子(水野美紀)が登場して、加賀美の過去も明らかになりそうな後半の展開に期待ですね。そして、私の5位は『錦糸町パラダイス ~渋谷から一本~』(金曜24時12分/テレビ東京系)ですが、このドラマ、いまだに全体像が把握できないんですよ。登場人物も多いし。
小林:視聴者にはとても不親切ですよね(笑)。
イマ:それがまた妙な魅力になってる。あんまり見たことないタイプのドラマだなーって。ドラマの冒頭でMOROHAのアフロが主題歌を歌い始める演出も斬新だし。
小林:このドラマ、もはや伏線回収とかしなそうですね。
イマ:たしかに、錦糸町を描いたドキュメンタリーって感じだし。生きて~♪って「サンサーラ」が流れそうな。
小林:ああ、『ザ・ノンフィクション』(日曜14時/フジテレビ系)ね(笑)。
イマ:そんなわけで、それぞれのBEST5を発表しましたが、他にチェックしてるドラマあります?
小林:あります、あります。『マウンテンドクター』(月曜22時/カンテレ・フジテレビ系)でしょ、『笑うマトリョーシカ』(金曜22時/TBS系)でしょ、『青島くんはいじわる』(土曜23時/テレビ朝日系)でしょ…。
イマ:私も『スカイキャッスル』(木曜21時/テレビ朝日系)、『ひだまりが聴こえる』(水曜23時30分/テレビ東京系)、『ブラックペアン2』(日曜21TBS系)とか。
小林:そして、8月18日スタートの生田絵梨花主演『素晴らしき哉、先生!』(日曜22時/ABCテレビ・テレビ朝日系)も気になってるし。
イマ:そういえば、この前、小林さんに勧められた『地面師たち』(2024年/Netflix)観ましたけど、めちゃくちゃ面白かったです!
小林:ね? 一気見したでしょ?
(ドラマ談義は永遠に続く…)
小林久乃(こばやし・ひさの)コラムニスト、編集者。正々堂々の独身。中学生から地上波ドラマを愛して30年以上、筋金入りのオタク。好きが高じてついには『ベスト・オブ・平成ドラマ!』(青春出版社刊)を上梓した。ラブストーリーが好きで、特に禁断の恋がテーマとなると視聴熱が俄然、盛り上がる。公式HPはhttps://hisano-kobayashi.themedia.jp
元JJ編集長イマイズミ 女性誌『CLASSY.』『JJ』の編集長を歴任。1クールの地上波ドラマを全録画するようになったのは、編集長になった13年ほど前から。「仕事で新しい俳優、タレントさんを覚えるため」というのが理由だったけど、見事に大ハマり。ホームドラマとラブコメ好き。韓国ドラマもやや中毒。
イラスト/lala nitta