お礼と言えば「ありがとうございます」という表現をイメージする方も多いのではないでしょうか?
もちろん間違いではないのですが、便利なだけに気付けば「ありがとうございます」ばかり言ってしまいがち……。
会話やメールの中で使いすぎてしまうのは、避けたいところですよね。
そこで今回は、お礼を伝えるフレーズを5つご紹介。この機会に、言葉のバリエーションを増やしましょう。
(1)「心より御礼申し上げます」
丁寧に感謝を伝えている印象を与えたいなら、真心をこめて、次のように伝えてみましょう。
「心より御礼申し上げます」
「心より」「心から」の他にも「厚く」「誠に」「衷心より」という言葉で、より感謝を伝えることができます。
「本当に」を連発するとどうしても安っぽく聞こえてしまうので、気を付けましょう。
(2)「おかげで」「おかげさまで」
仕事で先輩に助けてもらうなどして、“相手のおかげで助かった”“うまくいった”と伝えたいときには、
「〇〇さんのおかげで」と、相手を立てる言い方で、感謝と敬意を伝えるようにしてみましょう。
「〇〇さんのお力添えのおかげで」「〇〇さんのご尽力のおかげで」など、より具体的にお礼を述べることもできます。
また、何か具体的な作業を手伝ってもらったわけでなくても、いつもお世話になっている人や見守ってくれる人に対しては、以下の表現がおすすめです。
「おかげさまで、成功いたしました」
“周囲の理解や協力に感謝していて、謙虚な態度の人だな”と印象付けることができますよ。
(3)「ひとかたならぬ〇〇を賜り」
言葉の格を上げると、心から感謝し、誠実にお礼を伝えようとする姿勢が相手にも伝わります。
「とても」「本当に」のような強調表現の中でも格式の高い言い回し以外にも覚えておいてほしいのが、
「ひとかたならぬ」
という表現です。謝辞などのあらたまったスピーチ用に覚えておくと、便利ですよ。
「一方ならぬ」と書いて、並一通りでない、並外れた様子をいいます。
例えば、相手からの助けが大変ありがたかったことを伝える際には「ひとかたならぬご協力を賜り」「ひとかたらならぬご支援を頂戴し」などのように用います。
プロジェクトが成功したときなど、大きな節目の“ここぞ!”というときのお礼で使ってみたい表現です。
(4)「お言葉に甘えさせていただきます」
取引先との会食や忘年会、新年会などの宴会で、ご馳走していただく機会もありますよね。
そんなときに「おごってもらえるんですか!?」とはしゃいでしまうと、恥ずかしいもの。
恐縮し、遠慮がちな態度で、「お言葉に甘えさせていただきます」と伝えるのがオトナのたしなみ。
相手の器の大きさを立てる言い方です。
「お言葉に甘えます」と言うより、相手の許可を得ておこなう「させていただきます」を用いることで、控えめな印象に。
合コンやデートのお会計のときにも使える言い方かもしれません。
また、もう少し近しい関係の相手なら「ご馳走様でした」でもいいでしょう。
取引先や近々会いそうな相手なら、「次回はこちらで持たせてください」と申し出るのも好印象です。
(5)「平素より格別のご厚誼を賜り、厚く御礼を申し上げます」
年末年始の休業のお知らせなど、取引先のご担当者やお客様に書面やメールで通知を送ることもありますよね。
そうした書状の冒頭部分によく使われるお礼の表現が、
「平素より格別のご厚誼を賜り、厚く御礼を申し上げます」です。
「平素」は「ふだん」という意味。「厚誼」は情愛のこもった、親しい付き合いのことです。
この語の代わりに「ご厚情」「ご高配」を使う場合もあります。
いかがでしたか? 「ありがとうございます」の一辺倒から卒業して、今回ご紹介したよう言い回しを使いこなしてみてくださいね!
きっと周囲からも、一目置かれる存在になることでしょう。
文/吉田裕子
国語講師。塾やカルチャースクールなどで講師を務める他、『テストの花道 ニューベンゼミ』(NHK Eテレ)に国語の専門家として出演するなど、メディアでも活躍中。東京大学教養学部卒。
画像/PIXTA(ピクスタ)(プラナ、kikuo、xiangtao、kou、batch_saki)、Shutterstock(Selenophile) 参考文献/吉田裕子『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)