
「JJnet」と「婦人公論.jp」の初コラボ企画が実現! 「婦人公論.jp」編集長 川口由貴さんと、元JJ編集長 イマイズミ、そして両メディアで連載を持つコラムニスト小林久乃さんの3人が集結し、2026年上半期のドラマベスト5を徹底議論します。『冬のなんかさ、春のなんかね』から『VIVANT』まで、無類のドラマ好きたちが本音で語り倒す白熱鼎談(ていだん)を前後編にわたってお届けします。
【元JJ編集長イマイズミのベスト5】
・『冬のなんかさ、春のなんかね』(日本テレビ系)
・『Tシャツが乾くまで』(TBS系)
・『テミスの不確かな法廷』(NHK総合)
・『刑事、ふりだしに戻る』(テレ東系)
・『VIVANT』(TBS系)
【「婦人公論.jp」編集長 川口由貴のベスト5】
・『テミスの不確かな法廷』
・『田鎖ブラザーズ』(TBS系)
・『リーガルビート』(テレ東系)
・『さよならノワール』(フジテレビ系)
・『告白-25年目の秘密-』(日本テレビ系)
【コラムニスト小林久乃のベスト5】
・『銀河の一票』(関西テレビ・フジテレビ系)
・『エラー』(ABCテレビ)
・『Tシャツが乾くまで』
・『冬のなんかさ、春のなんかね』
・『告白-25年目の秘密-』
2026夏ドラマの推しをおさらい!
ヤバい奴だらけ!? SNSを騒がせる『Tかわ』の絶妙なハズし展開
元JJ編集長イマイズミ(以下、イマ):今回は初のコラボ企画として、「婦人公論.jp」編集長の川口さんをゲストにお迎えし、2026年上半期のドラマベスト5を決める鼎談をお届けします。
コラムニスト小林久乃(以下、小林):私が「婦人公論.jp」と「JJnet」の両方で連載を担当しているご縁で、今回の企画が実現しました。大のドラマ好きであるお二人を引き合わせることができて嬉しいです。
「婦人公論.jp」編集長 川口由貴(以下、川口):今日はたっぷりドラマ愛を語りたいと思います。よろしくお願いいたします!
イマ:さて早速始めましょう。今SNSで一番盛り上がっているドラマといえば『Tシャツが乾くまで』ですよね。私と小林さんはベスト5に入れていますが…。
川口:私は夫が浮気しているかどうかって、ドラマとしてもあんまり興味が持てなくて(笑)。
小林:イマイズミさん、実は川口さんは離婚歴がありまして…(ボソッ)。
イマ:おっと、失礼いたしました! このドラマの面白さは、考察勢を絶妙にはぐらかしてくるストーリー展開だと思います。公式HPでは、脚本の生方美久さんは「共感や感動を目指した物語ではないので、人間観察の感覚でお楽しみください」とコメントしていますし、プロデューサーの千葉行利さんも「きれいごとは一切なしの毒入りのヒューマンドラマをお届けしたい」と書いています。そう考えると、制作陣の狙いは見事に成功していますよね。
小林:失踪して1年ぶりにふらっと帰ってきた充(松山ケンイチ)、行方をくらまそうとした充に勝手についてきたあずさ(夏帆)、そして実はバツ4だったことを隠していた咲子(蒼井優)。登場人物が全員どこか病んでいて、まともな人がいない!
川口:このドラマを観ていると、自分の倫理観や恋愛観を問われているような気がするんですよね。たとえば、咲子と充が出会った結婚式の日。二次会をすっぽかして飲みに行こうとするじゃないですか。私はよく幹事をしていたので、「会費どうするつもり?」って、そこが気になっちゃいました(笑)。
イマ:私はそもそも、花嫁から両親への手紙のときにタバコを吸いに行くのが許せない! あそこ、一番泣ける場面じゃないですか!
川口:えーと、私は自分のときも読まなかったし、別にいいかなって。
イマ:ええええ!
小林:……という2人のやりとりを見ても分かるように、毎週SNSが大騒ぎになるんですよね。こういうふうに、視聴者の価値観まで巻き込んで盛り上がるドラマって、久しぶりな気がします。
イマ:SNSといえば、松ケンがめちゃくちゃ面白いですよね。ドラマの展開に合わせて、アカウント名を「消山ケンイチ」→「帰宅山ケンイチ」→「ピッツァ山ケンイチ」→「しばかれ山パンイチ」→「ト吐露山ケンイチ」→「しょぼくれ山ピンイチ」→「ピンチ山ケンイチ」と次々と変えて、もうやりたい放題。
小林:中島歩と蒼井優が『FIGARO JAPON』の表紙になったときも、「僕も表紙やりたいんで作ってもらえますか?」と投稿して、フォロワーが参加する大喜利大会に。朝ドラ『虎に翼』の放送終了後に全130話を一気見実況したときから、松ケンはSNSの使い方がうまいなと思っていました。
川口:そして、充を演じる中島歩も、ここにきて大ブレイクですよね。朝ドラや大河ドラマ、『不適切にもほどがある!』などで話題にはなっていましたけど、今回で一気に知名度が上がった印象です。
イマ:TBSのいろんな番組に番宣で出演していますけど、毎回何か爪痕を残そうとする変人っぷりから目が離せません。
小林:バラエティでは、台本を読んでいないんじゃないかと思うくらい、空気を読まないマイペースな発言を連発していますよね。
川口:そういうクセの強い俳優たちが揃っている『Tかわ』の中でも……。
小林:やっぱり蒼井優の圧勝だと思います。演技力がとにかくすごい。いろんな感情がミックスされたような、あの絶妙な表情がとても印象に残ります。
イマ:喫茶「ひこうき」で、充と電話で話す一人芝居! 7~8分くらいあったと思いますけど、その間ずっと、寂しさや嬉しさ、怒りみたいな感情がぐちゃぐちゃになった表情を見せていて、グッと引き込まれました。
小林:あそこは名場面でしたね。それはそうと、咲子が働く結婚情報誌は月刊なのに「毎月第3金曜日が校了で忙しい」っていう設定は、ちょっとおかしくないですか?
イマ:分かります! 月刊誌の編集経験のある私たちからすると、そこはどうしても引っかかる。
川口:だいたい校了が1日で終わるわけないですからね(笑)。
怒涛の企業コラボからラジオ連動まで! TBSの『VIVANT』ビジネス戦略
イマ:世間的に2026年下半期の超話題作といえば『VIVANT』ですが、今回ランキングに入れたのは私だけでした。
小林:正直、ストーリーについていけなくて、毎回離脱しそうになってます……。
イマ:前作を予習して臨んだんですが、その努力がまったく意味をなさないくらい怒涛の展開。AIハヤトの解析、乃木憂助(堺雅人)の別人格Fの出現、そしてブルーウォーカー=太田梨歩(花岡すみれ)のハッキングとかが無敵すぎて、話が爆速で進むからだと思います。
小林:いま乃木たち別班って、一体何と戦ってるんですか?
イマ:うーん、一応は中国の秘密組織「シンシー」……ですかね。ただ、ここからまた大どんでん返しがありそうですが。
小林:『Tかわ』とはまた違う意味で、考察勢の裏をかいて振り回すようなストーリー展開ですよね。
イマ:2クール放送のうえに、12月頭には映画版『VIVANT』が公開されるなんて噂もありますし、そこで全貌が明らかになるんじゃないかと。なんせ半年間の長丁場なので、もう考察は諦めて「ただ流れに身をまかせて観る」のが正解な気がしています。
川口:そういえば、この前『VIVANT』コラボのベビースター買いましたよ! 「テント」のマークががっつり入ってるんです。
イマ:コラボといえば、ビールやおせち、饅頭、パンなどの食品から、航空会社、時計、アパレルまでありとあらゆる業界と組んでますね。
小林:大量の企業コラボと映画の興行収入で、巨額の製作費をしっかり回収しようというビジネス設計がすごい。TBSが社運を賭けてるのがひしひしと伝わってきます。
イマ:IP活用の最先端を見ているようで本当に勉強になりますね。あと本編以外だと、前作で乃木に消された「テント」のモニター・山本役の迫田孝也らが出演するラジオ『VIVANT 悪役会議室』がめちゃくちゃ面白いんですよ。私はぶっちゃけ、そっちを聴くために『VIVANT』を観てるまであります。
小林:完全に本末転倒じゃないですか!
イマ:ほかにもミュージシャンやお笑い芸人、オリンピック選手なんかをゲスト出演させて、毎回SNSでトレンド入りさせる仕掛けもうまい。
川口:今のところ黒須役の松坂桃李はずっと顔を腫らしたまま捕まってますけど、後半ちゃんと出番あるんですよね……?
小林:あまり出番のないキャストがまだいるのに、これからも豪華な追加キャストが発表されそう。というか、ノゴーン・ベキ(役所広司)って絶対生きてますよね?
イマ:大いにありえますね! でも、もし死んでたら、ぜひ『悪役会議室』にゲストで出てほしいです(笑)。
『テミス』と『リーガルビート』――多様な主人公が織りなす法廷ドラマの魅力
小林:川口さんとイマイズミさんが選んだのは『テミスの不確かな法廷』ですが、どこがよかったですか?
川口:なんといっても、発達障害の特性を持つ裁判官・安藤清春を演じた松山ケンイチの演技に引き込まれました。
イマ:私が特に印象に残ったのは最終回。安藤が「分からないことが分かっていないと、分からないことは分かりません」という名セリフを織り交ぜながら法廷で語るシーンは圧巻でした。
川口:顔を変えたり(『リブート』)、寿司職人になったり(『時すでにおスシ!?』)、2026年は松ケン大活躍の年でしたね。追いかけすぎて「松ケン疲れ」してます(笑)。
小林:役者は厄年にはいろんな役を演じることが厄落としにつながるらしいですよ。今年はまさに、それを実践しているかのような働きぶりです。
川口:安藤が所属する前橋地方裁判所第一支部のメンバーもよかった。チームとしてのまとまりもあったし、安藤の上司・門倉を演じた遠藤憲一もカッコよかった!
イマ:ゲスト俳優も、第1回は小林虎之介(江沢卓郎役)、第2回は山時聡真(栗田奈央役)、第3回は伊藤蒼(四宮絵里役)と、若手の注目株が次々と登場して、しっかりと爪痕を残していきました。
小林: NHK『あさイチ』のプレミアムトークに松山ケンイチが出演した時、安藤を演じるためにASDとADHDの特性を持つ方と話をしたと語っていました。
イマ:実際に発達障害の特性を持つ人も出演していたんですよね。リーガルドラマの定石どおり、毎回ひとつの事件を解決していく一方で、安藤の父である検察官の結城(小木茂光)との確執と、再審請求を巡る物語が縦軸として描かれていて、ドラマとしてとても見ごたえがありました。
川口:続いて、私が『リーガルビート』を推した理由は、主人公・泰地空を演じた鈴鹿央士さんが好きだからです!
イマ:シンプルな理由で最高です!
川口:『テミスの不確かな法廷』もそうですけど、私、法学部出身なのでそもそもリーガルドラマが好きなんですよ。基本的に1話完結が多くて見やすいですし。
イマ:あ、実は私も法学部卒なんです。
小林:ちょっと待ってください、2人とも法曹界じゃなくて出版社に入ってるじゃないですか(笑)。
イマ:いざ本格的に勉強してみたら、「あ、自分には合わないな」って気づいたクチです。でも相続問題とか、実生活で役立っている知識はかなりありますよ。
川口:話を戻すと、泰地空は吃音を持つ弁護士なんですが、ラップのリズムに乗せると症状が出ずにスラスラ話せるという特技の持ち主。その特技で事件を解決していくという、かなりアクロバティックな人物設定です。
イマ:ラップの設定がなかったとしても十分面白いドラマだと思いました。『テミス』の主人公も発達障害の特性を持つ裁判官でしたけど、あえてハンディキャップのある人を主人公にする意図って何なんでしょうね?
小林:単にエリート同士が法廷でバチバチ戦うのを見るより、ハンデを抱えている方が視聴者も感情移入して応援しやすいからじゃないでしょうか。
川口:それに、主人公自体が特殊で尖ったキャラクターだからこそ、事件に巻き込まれる「普通の人々」の立場に寄り添える構成になっているんだと思います。あと、同僚弁護士・星秀幸を演じた稲垣吾郎さんがとにかく魅力的でした! 『僕達はまだその星の校則を知らない』の時のように、一見クセモノだけど実はいい人……みたいな役がハマりますよね。
イマ:今回はかなり早い段階で「いい人」だって分かっちゃいましたけど(笑)。
リアルな人間関係と話題のスタイリング!『冬のなんかさ』が心をつかむワケ
小林:私とイマイズミさんがともにベスト5に選んだのは『冬のなんかさ、春のなんかね』でした。
イマ:このドラマが画期的だったのは、これだけ作家性の高い、単館映画みたいなテイストの作品を地上波のゴールデンプライム帯で堂々とやったことですね。とにかく演者が声を張らないので、セリフが全然聞き取れない。音を大きくすると家族に怒られるので、ずっと字幕を出して観ていましたよ。
小林:演出も独特で、場面もほとんど変わらないうえに、ごはんを食べているシーンがすごく多かった。
川口:基本的に会話劇が中心だから、俳優の力量がなかったら見てられないですよね。
イマ:しかもラブストーリーなのに「土砂降りの中で愛を告白する」みたいなドラマチックなシーンは一切なくて、スルッと付き合ってスルッと別れていく。
川口:登場人物はみんな平熱35℃くらいって感じでしたね。
小林:文菜(杉咲花)が彼氏持ちなのに、他の男と2人で会うことにネットでは嫌悪感を示す声もありましたが、私たち世代からしたら「若い時なんてそんなもんでしょ?」とか思っちゃいました。
イマ:文菜ってモテるんでしょうけど、別れる時は彼氏に結構酷いこと言われるんですよね。創作の邪魔だとか、君と別れたら他の子と付き合うかもとか。そんな傷つきながらもフラフラする文菜を近くで支える小太郎(岡山天音)にいつも癒されていました。
小林:小太郎がいるからこそ、文菜も好き勝手できるんですよ。あと、私がこのドラマで推したいのはスタイリスト杉本学子さんが手がけたファッションです。古着を上手にきかせた、体のラインが一切出ない、ゆったりとしたシルエット。昔だったら、「ボーイッシュ」で片づけられるところですが、どこか都会的で可愛らしい。
川口:でも、あれは杉咲花ちゃんの顔の小ささとスタイルがあって初めて可愛く見えるやつですよ!
小林:私たち世代が着ると、服の中で体が泳ぐどころか、ただのジャストサイズになりそう……。それはさておき、このドラマが面白かったのは、特別な出来事が起こるわけではなく、日常の延長線上にあるラブストーリーだったからだと思います。だからこそ、登場人物それぞれの人間関係をじっくり見ることができました。
イマ:誰かに共感したり、逆に「それはないでしょ」と嫌悪感を抱いたり、観終わったあとに「あれどう思った?」って話したくなる。そこも大きな魅力でしたね。
〈後編に続く〉
婦人公論.jpでの記事はこちらからチェックできます↓↓↓
https://fujinkoron.jp/articles/-/23888
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川口由貴:「婦人公論.jp」編集長。雑誌や数々の書籍を手掛けてきたベテラン編集者。約10年に渡って、地上波放送の連続ドラマをほぼ視聴している。法学部卒のため、新たな知識を得ながら観られるリーガルドラマが特に好き。小林久乃とは「婦人公論.jp」連載の「映えのたからない生活」の初代担当で、飲むとほぼドラマの話ばかりしている。

小林久乃(こばやし・ひさの)コラムニスト、編集者。正々堂々の独身。中学生から地上波ドラマを愛して30年以上、筋金入りのオタク。好きが高じてついには『ベスト・オブ・平成ドラマ!』(青春出版社刊)を上梓した。ラブストーリーが好きで、特に禁断の恋がテーマとなると視聴熱が俄然、盛り上がる。公式HPはhttps://hisano-kobayashi.themedia.jp
元JJ編集長イマイズミ 女性誌『CLASSY.』『JJ』の編集長を歴任。1クールの地上波ドラマを全録画するようになったのは、編集長になった13年ほど前から。「仕事で新しい俳優、タレントさんを覚えるため」というのが理由だったけど、見事に大ハマり。ホームドラマとラブコメ好き。韓国ドラマもやや中毒。




