コラム

苦労は売ってでもするな 小田明志コラム#3

「JJ圏外から一言」#3

12月中旬頃までに仕事を片付け、この連載は旅行先のローマで書く!はずだったにもかかわらず、そんな夢のプランはあっさりと崩れ、年末年始は東京で過ごすことに。会社設立から2回目の決算期を迎えた2016年は、社会人が言うところの「忙しい年末」を初体験。この忙しさが全くの予想外で、泣く泣く航空券をキャンセルする羽目になってしまった……。

航空券といえば、日本の若者は海外へ出たがらず「内向き」の傾向にあるという話を聞くようになって久しい。実際に20代の出国率や海外留学者数は減少しているので、そういう傾向にあることは事実なのだろうと思うし、若者がリスクを恐れ、保守的で臆病になってしまったことの表れとして、なにかとネガティブに語られがちなのも理解できる。ただ、裏を返せばそれは、日本という国が経済の下り坂にあっても未だ世界3位の経済大国で、国内にも活躍の場が(今のところは)十分に用意されていることの証明でもある。だから、若者の「内向き」傾向に関しては、それを当然のこととして捉えるほかない、というのが僕の考えだ。

その一方で、僕はそんな時代はさっさとトドメを刺されて、終わってしまえばいいのに!とも、ひそかに思っている(笑)。なぜなら、現在中高年の会社員ならいざ知らず、25歳の僕たちにとっては、そちらの方が今よりずっと良い思いができる可能性が高いからだ。

「若い時の苦労は買ってでもしろ」という言葉があるが、これはまさに内向き時代における日本企業の文化を象徴する言葉だと思う。日本の会社員は、会社から一方的にクビにされることはほとんどない代わりに、仕事の成果を明確なルールのもとに評価されたり、給料に反映されることもないという特徴がある。そのため、日本の会社員が社内競争で勝つためには、仕事を頑張るよりも、会社や上司、同僚と良好な関係を築くことの方が重要で、そのためには残業・飲み会はもちろんのこと、理不尽な転勤や出向も断らない。なぜなら、ある程度の理不尽に耐えて苦労するだけで、あとは年齢を重ねるにつれ待遇が良くなり、若い時の苦労が報われる、というのが日本企業の伝統的な雇用スタイルだったからだ。

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