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【JJドラマ部】ドラマオタクが本気で選んだ2024冬ドラマBEST⑤

『不適切にもほどがある!』(TBS)公式ホームページより

中盤戦に入ってきた2024年冬ドラマ。予想通り面白かったり、逆に期待外れだったりと、視聴継続する作品が決まる頃。ドラマオタクのコラムニスト小林久乃と元JJ編集長イマイズミが全ドラマをチェックして選んだ5本をそれぞれ発表します。あなたの推しドラマはランクインしてますか?

【コラムニスト小林久乃のBEST5】
①不適切にもほどがある!
②おっさんずラブ -リターンズ-
③厨房のありす
④春になったら
⑤Eye love you

【元JJ編集長イマイズミのBEST5】
①不適切にもほどがある!
②おっさんずラブ -リターンズ-
③闇バイト家族
④春になったら
⑤先生さようなら

宮藤官九郎脚本『不適切にもほどがある!』が文句なしの1位!

元JJ編集長イマイズミ(以下、イマ):正直、今クールは私的に不作でした…。つか、『不適切にもほどがある!』(金曜22時/TBS系)と『おっさんずラブ -リターンズ-』(金曜23時15分/テレビ朝日系)が強すぎるでしょ!

小林久乃(以下、小林):『不適切』は開始10分で腹抱えて笑いしましたねー、さすがクドカンです。

イマ:喫煙シーンやカセットテープ、セーラーズ(劇中ではセイヤーズ)など、昭和の習慣や小道具がこれでもかってくらい出てきました。

小林:クドカンと阿部サダヲが1970年生まれ、演出の金子文紀さんが1971年生まれだから、すべてのディテールにリアリティーがありますよね。

イマ:私は1972年生まれなんで、もう全部わかります。

小林:私もです(笑)。でも、1986年に「写ルンです」ってありましたっけ?

イマ:調べたら1986年7月発売なので、あったんですよ。でも、バスの中での喫煙は当時でもなかったような…。

小林:観光バスに灰皿がついてたのは覚えてますけど。それにしても、電車や飛行機で普通にタバコが吸えるって、今から考えるとスゴい時代ですよね。

イマ:私も喫煙者だったのですが、2000年アタマくらいまで、編集部のほぼ全員が吸ってましたよ。夜遅くなるにつれて部屋がどんどん白く曇ってくる(笑)。

小林:そうそう! なんか日常の風景でしたよね。 だから、校長室で小川市郎(阿部サダヲ)たちが一斉にタバコに火をつけるシーン(第1話)は全然違和感がなかった。

イマ:あと、市郎がコンビニでタバコ買うシーンも爆笑しました。「なんでこんなに種類あるんだよ!」って怒ってた(笑)。

小林:たしかに、昔って普通のかマイルドしかなかったですもんね。1ミリ、3ミリ、5ミリ、8ミリってどんだけ刻むんだと(笑)。

イマ:私が吸ってた頃は、ひと箱220円だったんですよ。今買いに行ったら市郎みたいに「え? 520円!?」ってなるかも。

小林:喫煙は日常だったし、やっぱり憧れで吸うってこともありましたよね。私、『踊る大捜査線』(1997年/フジテレビ系)で青島俊作(織田裕二)が吸ってたという理由で、キャスターマイルドからアメリカンスピリッツに変えましたもん。

イマ:キムタクは『若者のすべて』(1994年)でハイライト、『ロングバケーション』(1996年)でウィンストン、『HERO』(2001年/すべてフジテレビ系)でマルボロ、と役によって銘柄を変えていました。

小林:やっぱり影響されました?

イマ:いや、私はマイルドセブン一筋だったので…って、いつまでタバコの話するんですか?(笑)。

小林:話を戻すと、このドラマ、クドカンはよくやるんですけど、自身の作品のオマージュをちりばめてるんですよ。阿部サダヲの野球部監督は『木更津キャッツアイ』(2002年)、ミュージカル演出は『吾輩は主婦である』(2006年/ともにTBS系)、80年代アイドルは『あまちゃん』(2013年/NHK総合)とか。

イマ:『あまちゃん』で夫婦だった尾美としのりと小泉今日子の名前もセリフで出ていましたね。

小林:あと、全く違う二つの要素を対比してテーマをはっきりさせていくのもクドカン作品の特徴。『タイガー&ドラゴン』(2005年)では落語とヤクザ、『ごめんね青春』(2014年)では仏教系男子校とカトリック系女子校、『俺の家の話』(2021年/すべてTBS系)で能とプロレス。

イマ:で、今回は「昭和」と「令和」ですね。

小林:いきすぎた令和のコンプライアンスに対して、昭和のダメおやじをぶつけて「果たして、ホントにそれが正しいの?」って、コメディー仕立てで問題提起しているのはさすがだなと。

イマ言いにくいことは全部歌にするという荒業(笑)。そして、そのミュージカルパートも元宝塚の咲妃みゆ、ミュージカル俳優の木下晴香や柿澤勇人など、本気のキャスティングですね。そのうち山崎育三郎も出る予感がします。

小林:第2話で名前が出ていたから可能性高いですね。

イマ:今クールでは、同じようにコンプライアンスをテーマにした原田泰造主演の『おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか』(土曜23時40分/東海テレビ・フジテレビ系)は全然違うアプローチなのが面白いですよね。

小林:『おっパン』は昭和感がっつりの沖田誠(原田泰造)が令和の常識に合わせてアップデートしていくというストーリー。誠の周りは、メイク男子の息子に腐女子の娘、ゲイの友達、ブラジャーを着ける男性部下など、いきなり令和てんこもりです(笑)。

イマ:『不適切』のもう一つの見どころは、クドカン常連に加えてフレッシュな俳優が参加しているところですね。『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』(2023年/NHK総合)で主演した河合優実ちゃん(小川純子役)と、このドラマで初めて見た坂元愛登くん(向坂キヨシ役)に注目しています。特に坂元くんは『ブギウギ』(2023年/NHK総合)で六郎役を演じた黒崎煌代くん以来の衝撃の若手です!

小林:すでに売れるオーラ出てますよね。とにかく、このドラマは昭和世代も令和世代も楽しめるザ・クドカン作品。おそらく5~6話くらいで昭和 vs.令和のクドカンなりの落としどころが見えてくると思うんで、毎週金曜22時を楽しみにしたいです。

吉田鋼太郎オンステージのドラマがさらにパワーアップ

イマ:続いて、2位もかぶりましたね、『おっさんずラブ -リターンズ-』(金曜23時15分/テレビ朝日系)。

小林:予想通り、吉田鋼太郎劇場が回を追うごとに加速していますね(笑)。

イマ:旅館の大広間で大暴れするシーン(第5話)は、ほとんどアドリブじゃないかと。

小林:黒川部長(吉田鋼太郎)が出てくるだけで期待しちゃう私がいます。やっぱり舞台の人だからでしょうか、声はよく通るし、オーバーリアクションは画面で映えるし。

イマ:ノリに乗ってますよねー。4月には彼が主演のドラマ『おいハンサム‼ 2』(東海テレビ・フジテレビ系)、6月には映画『おいハンサム‼』が全国ロードショー公開ですから。

小林:それにしても、はるたん(田中圭)が若く見えるのなんでだろう…。あんな真っ赤なマフラーが似合う40代います?(笑)。

イマ:牧くん(林遣都)、黒川部長に加えて、ついに和泉さん(井浦新)もはるたんに…。

小林:カオスですね。ホント魔性の男ですよ、はるたん。

イマ:黒川部長の影に隠れて、密かに暴走してるのが武川部長(眞島秀和)です。

小林「おむつパートナー」がトレンドワード入りしてました(笑)。

イマ:前作以上に生き生きと動くキャラを楽しむのもありですが、根底には「家族って何だろう」「人を好きになるってどういうことだろう」というテーマがあるから、ただの悪ふざけで終わらない、しっかりと見応えがあるドラマになっていますよね。

『厨房のありす』と『闇バイト家族』が3位にランクイン

小林:3位は分かれましたね。私は『厨房のありす』(日曜22時30分/日本テレビ系)が良かったです。自閉スペクトラム症の料理人という難役を門脇麦(八重森ありす役)が見事に演じています。

イマ:ものすごいセリフ量ですよね。

小林:このドラマの番宣に出てた大森南朋(八重森心護役)が、台本を見て「これは俺にはできない」って言っていたぐらいですから。

イマ:覚えるのも大変ですけど、あのスピードで噛まずに喋るのは至難の業!

小林:セリフの量だけではなく、内容も自閉スペクトラム症の人の視点や、その境界線など勉強になることが多い。そして相手役の永瀬廉くん(酒江倖生役)のクールというか、ローギアな感じが役と合ってるし、何かを抱えてそうな人物なので、今後の展開に注目です。

イマ:私の3位は『闇バイト家族』(金曜24時12分/テレ東系)です。

小林:「闇バイト」っていうテーマが深夜のテレ東っぽいですよね(笑)。どこらへんが良かったですか?

イマ:とにかく演者たちのマッチングがいい! おどおどした鈴鹿央士(田中颯斗役)、ヤンキーの山本舞香(久保美咲役)、北九州弁バリバリの光石研(小川健三役)、のんきな麻生祐未(原香苗役)、すっとぼけた綾田俊樹(栗林徹役)と、ナイスキャスティングです。そして、観ていてやりとりの間が心地いいんですよ。やっぱりコメディーは間が大事なんだなーと。

小林:これは闇バイトで集められた偽装家族がやがてホントの家族みたいになる的な?

イマ:そうなっていく流れでしょうね。テレ東なんで、裏切る可能性大ですけど(笑)。

小林:家族もの、コメディー、非合法系とイマイズミさんの好きな要素がつまったドラマってことですね。

じんわり感動する木梨憲武主演ドラマに注目

イマ:そして、私の4位は小林さんも同じ『春になったら』(月曜22時/フジテレビ系)。

小林:ノリさん(木梨憲武/椎名雅彦役)、久しぶりの連ドラ主演ということですが、とにかく映像が美しいですよね。ノスタルジックな雰囲気もあって。

イマ:第4話のクレジット見てびっくりしたんですけど、監督の穐山茉由さんって昔ファッションブランドのPRをやっていて、よく仕事で会ってたんですよ。会社員をやりながら映画の学校に通って、その後『月極オトコトモダチ』(2018年)でMOOSIC LAB2018の長編部門グランプリほか4冠を受賞、『シノノメ色の週末』(2021年)で第31回日本映画批評家大賞の新人監督賞を受賞という、いまや注目の映画監督に。

小林:会社員から映画監督って珍しい経歴ですね!

イマ:穏やかな彼女の人柄がにじみ出るような、温かみのある回でした。

小林:ノリさんの演技もいいですよね。60代でああいうぶっきらぼうな喋り方するおじさんいますよね。人の話を聞かない感じ(笑)。

イマ:わかります。でも、ワーワー言いながらも、微妙な表情の変化も素晴らしくて、ノリさんって実は凄い俳優なんだなって思いました。

小林:ちなみにイマイズミさんだったら、延命治療します?

イマ:いやー、しないと思います。とにかく痛いのが苦手なんで、抗がん剤の副作用とかで苦しみたくないです。今すぐモルヒネ打ってくれ!ってなると思う(笑)。

小林:私も100パーセント、残り3カ月を駆け抜けるタイプです。どうやって貯金を使い切ってやろうか考えますよ。

イマ:そういう人に限って寿命が延びがちですよね。あれ、貯金足りなくなってきたぞって(笑)。

小林:あと、瞳(奈緒)がカズくん(濱田岳)を結婚相手に選んだのは本当に正解だと思う。スペックで相手選びをしたら、スペックを失った時点で何も残らないですからね。

イマ:全港区女子に伝えたい言葉(笑)。今後も、タイトル通り『春になったら』彼らがどうなるのか見守りたいですね。

韓国のライジングスターと日本のアイドルが主演のドラマが5位

小林:そして、5位は私的最大のダークホース『Eye Love You』(火曜22時/TBS系)です! ヤバいです、このドラマ…。いよいよ韓ドラデビューしちゃいそうです。

イマ:あれ、始まる前はあんまり乗り気じゃなかったですよね?(笑)。

小林:そうなんですよ。ドラマのキービジュアルを見てもピンとこなかったんですけど、動いてるヒョプくん(チェ・ジョンヒョプ/ユン・テオ役)を見たら、なんて可愛いんだろうと!

イマ:だから言ったじゃないですか、大型犬型俳優だって。

小林:「ちょ待てよ」的なキムタクのドS攻撃に慣らされた世代には、あのたどたどしい「キミがいっちばんかわいいデス」っていう甘~いセリフがやたら刺さるんですよ…。もう糖度90ぐらいあるんじゃないかと。

イマ:それもう砂糖そのものですよ(笑)。いきなり落ち葉の掃除手伝わせたり、デリバリーのバイトをやってたと思ったら侑里(二階堂ふみ)の会社にインターンとして来たり、展開が都合良すぎませんか?

小林:いいの、いいの。そういう細かいところは!

イマ:えええー。小林さん、たまにそのモードになりますよね…。

小林:このドラマ、終わる頃には『不適切』を超えてるかもしれません(笑)。

イマ:そ、そうですか。じゃあ、一応私の5位も発表しておきますけど、『先生さようなら』(月曜24時59分/日本テレビ系)が意外に良かったです。これ、過去の高校生・田邑拓郎(渡辺翔太)と国語教師・内藤由美子(北香那)の恋と、現在の美術教師になった田邑と美術部員の城嶋弥生(林芽亜里)の恋が交錯する話なんですが、原作漫画とはちょっと雰囲気が違う、しっとり落ち着いたラブストーリーなんですよ。

小林:私も第1話は観ましたけど、林芽亜里ちゃんのみずみずしいこと!

イマ:初々しくていいですよねー。渡辺くんの高校生役は若干脳内補正が必要ですけど(笑)、美術教師役はハマってるし、なにより北香那がいい! 『バイプレイヤーズ』シリーズ(2017年/テレ東系)のジャスミン役で注目されてから、いろんなドラマに引っ張りだこの俳優さんですが、今回はちょっと気が弱いけど芯がありそうな国語教師を好演しています。ああ、朝ドラの主役やらないかなー。

小林:『不適切』と『おっさんずラブ』しかないって言ってたわりには、他のドラマも気に入ってるじゃないですか(笑)。私も『Eye Love You』にどこまでハマるか楽しみです!

小林久乃(こばやし・ひさの)コラムニスト、編集者。正々堂々の独身。中学生から地上波ドラマを愛して30年以上、筋金入りのオタク。好きが高じてついには『ベスト・オブ・平成ドラマ!』(青春出版社刊)を上梓した。ラブストーリーが好きで、特に禁断の恋がテーマとなると視聴熱が俄然、盛り上がる。公式HPはhttps://hisano-kobayashi.themedia.jp

元JJ編集長イマイズミ 女性誌『CLASSY.』『JJ』の編集長を歴任。1クールの地上波ドラマを全録画するようになったのは、編集長になった13年ほど前から。「仕事で新しい俳優、タレントさんを覚えるため」というのが理由だったけど、見事に大ハマり。ホームドラマとラブコメ好き。韓国ドラマもやや中毒。

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